実際に、フェーズドアレイ無線機用ICを65nm CMOSプロセスを用いて製作。水平偏波用に4系統分、垂直偏波用に4系統分のトランシーバが、5.0mm×4.5mmのチップがWLCSPに収められ、動作確認の結果、39GHz帯での動作が確認されたほか、偏波MIMOにも対応することが確認されたとする。

  • 39GHz CMOSミリ波帯フェーズドアレイ無線機IC

    (左)39GHz CMOSミリ波帯フェーズドアレイ無線機IC。(右)64素子フェーズドアレイモジュール (出所:東工大プレスリリースPDF)

また、このIC16個をアンテナ基板に実装し、64素子フェーズドアレイ無線機としてのOver-the-Air(OTA)性能評価を行ったところ、無線機の実際の使用状況を想定し、16個あるICの一部の温度を変化させ、意図的に特性のばらつきを起こした状態であっても、提案された内蔵セルフテスト回路を用いたばらつき補正を施すことで、補正なしの従来に比べて信号品質が向上し、優れた線形性と高エネルギー効率を実現できていることが確認されたという。また、64素子フェーズドアレイモジュールとして、飽和EIRP 55.2dBm、64-QAM変調による21Gb/sの伝送速度などの性能も確認できたとする。

なお、研究チームでは、今回の研究で開発された回路について、Beyond 5G向け技術というだけでなく、現在の5G基地局にも搭載可能であるとしている。また、低消費電力化による低コスト大容量通信、39GHz帯での大規模MIMO、高速での到来方向推定、安定したビームトラッキングなどを可能とする技術であり、大容量ミリ波帯5Gの普及を加速させる成果ともしている。