通学路整備のモデルケースを目指して
3Mはそういった反射材の研究・開発による交通安全への貢献のほかにも、さまざまな角度から交通安全に関する取り組みを行ってきた。
例えば、2006年から全国道路標識・標示業協会が実施している「子どもを守ろうプロジェクト」に参画し、路面に貼るステッカーといった製品を提供している。
また、道路標識の清掃といった標識やガードレールに使用されている反射材のメンテナンスの活動も行っているという。
3Mはなぜこのような活動をしているのだろうか。
それは、トランスポーテーションセーフティ事業部が「人々を安全に家に帰す」というミッションを掲げているからだという。反射材を開発するのも、交通安全に関する取り組みを行うのも、このミッションを実現するための1つの方法なのだ。
そして、2022年3月から、2024年までに世界23か国100か所の通学路で歩行者の視認性と道路の安全性の向上を目指す「スクールゾーン・プロジェクト」を開始した。
同プロジェクトが目指すのは「“安全な通学路”を実現するために、各国の人々の関心を集めて、将来的に通学路整備のモデルを確立すること。また、同プロジェクトをきっかけにステークホルダーや自治体などさまざまな人の意識が高まり、こういった活動が波及していくこと」だとスリーエム ジャパンの常務執行役員 トランスポーテーション&エレクトロニクスビジネスの伊藤 誠氏はいう。
この安全な通学路の実現には、「世界のすべての子どもたちが教育の機会を得る権利があり、通学路の安全性への懸念が教育へのアクセスの妨げになってはならない」という3Mの信念があるという。
というのも世界では、年間約130万人が交通事故により死亡しており、毎年5~14歳の8万人の子どもが交通事故で死亡し、その多くが通学中という悲しい現実がある。
日本でも、児童の交通事故死亡・重傷者は全体の3分の1が登下校中となっており、特に薄暗くなる夕方の時間帯が多くなっている。
このような現実を受け3Mは、安全な通学路の実現のためにプロジェクトを開始したというわけだ。
スクールゾーン・プロジェクトは、世界100か所のうち6か所が日本で実施される予定で、第1弾として、4月から山形県東根市立東根中部小学校の通学路で施工が開始された。
具体的には、注意喚起のための路面標示貼付、蛍光色の警戒標識設や立て看板の設置 、ガードレールへの反射材の追加取付、全天候型路面標示の施工、反射ステッカー1200枚を全校児童へ配布、代表児童とのneo-CAPS(路面標示材)の施工を行う予定だという。
伊藤氏は「今回は、子どもに注目してプロジェクトを行うこととなったが、我々のミッションは“人々を安全に家に帰す”というもの。そういった大きな目標の中のアクションの1つと考えていただけたら」という。
そのうえで「世の中のニーズは変わっていくと思うが、我々は反射の技術をニーズに合うように応用していく。世の中が変わっても、“人々を安全に家に帰す”というミッションは変わらない。そのために我々の技術を磨いていく」と述べた。
今後、自動運転の普及など、交通の当たり前が変わっていくかもしれない。そんな変化の中でも3Mは人々を安全に家に帰すため、技術の開発を進めていくだろう。
そのようなミッションから始まった3Mのスクールゾーン・プロジェクト。
子どもが安心して学校に通える、親が安心して子どもを送り出せる世の中にするため、このような動きが多方面で波及することを願ってやまない。