鞄や革小物の老舗、土屋鞄製造所が、キノコ由来のレザー代替素材を用いて新たな挑戦を始めたという。「上質な革製品」のイメージが強い老舗の日本製鞄メーカーが、なぜキノコ? なぜ代替レザー? 新製品のプロトタイプが期間限定で展示されている、土屋鞄製造所 渋谷店をのぞいてきた。
このほど土屋鞄から発表されたのが、キノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「Mylo(マイロ)」を用いた、ランドセル、鞄、小物など6つの新素材モデル。
米国のバイオテック企業、Bolt Threads(ボルト・スレッズ)社が開発したこの新素材は、やわらかな手触りと上質感のある風合いを実現し「マッシュルームレザー」ブームの火付け役ともなった、いわゆるヴィーガンレザーだ。土屋鞄は同社に出資を行い、Mylo(マイロ)の素材開発及び製品開発を共同で行う業務提携を結んでいる。
キノコの菌糸体(菌が構成する、根のような糸状の組織体)から生まれたこの素材は、従来の革素材のような上質な風合いと質感を持ち合わせているという。
さらに「革新的な技術が生み出す素晴らしい手触りに驚き、また使い手の価値観が多様化する現代において、新たな選択肢となりうる素材だと感じました」と土屋成範社長がコメントするように、Mylo(マイロ)は100%再生可能なエネルギーで稼働する最先端の垂直農法施設で生育され、生育に必要なものは、水と空気とマルチング材(菌糸体の生育時に培地の表面を覆うもの)のみ。2週間足らずの短い周期で生育できるため、安定した供給が見込まれているそう。
工房で一つひとつ手作りされるランドセルを始め、厳選した革で作られる鞄や小物など、風合いや時間による経年変化も楽しむようなロングセラーアイテムが支持されてきた土屋鞄。いっぽう「スイカを運ぶ鞄」「水切り石専用バッグ」など、職人たちの手によるユニークな鞄(*非売品)は、SNSで注目を集めることも。
今回お披露目された6アイテムのうちのひとつ、財布型の「Mylo ハンディLファスナー」は、年内の発売を目指して開発中とのこと。それまで待てないという人はぜひ渋谷店に足を運んで、Mylo(マイロ)を用いた新素材モデルの質感や風合いを、実際に手に取って確かめてみてはいかがだろうか。(6月30日まで期間限定展示)