「饒舌」という言葉を見聞きしたことがある人は多いかもしれません。ですが、相手に対して褒め言葉として使えるのかなど、正しい意味をご存じでしょうか? この記事では「饒舌」の詳しい意味や類語、反対語などを紹介します。例文も豊富なので、ぜひ参考にして「饒舌」の使い方をマスターしましょう。

  • 「饒舌」の意味について解説します

    「饒舌」の意味について解説します

「饒舌」とは

「饒舌」の基本的な意味を見ていきましょう。

「饒舌」の読み方

「饒舌」は、「じょうぜつ」と読みます。日常会話などでもよく使用する言葉ですので、しっかりと覚えておきましょう。「にょうぜつ」という読みもありますが、こちらはあまり一般的ではありません。

「饒舌」の意味

「饒舌」には、「やたらにしゃべることやその様子。おしゃべり」という意味があります。「彼は饒舌なことで有名だ」などの形で使用します。

「饒」には、「豊か」や「多い」、「余る」などの意味があります。「舌」には「言葉」という意味があり、この2つを合わせて「饒舌」となります。

「饒舌」はいい意味では使われない

注意したいのは、この言葉は基本的にいい意味では使われないという点です。「饒舌」には、「しゃべり過ぎてうるさい」などの悪いニュアンスがあります。弁舌さわやか、つまり話しぶりがすらすらと気持ちいい人に対して、褒めたつもりで「饒舌ですね」などと言うと、思わぬ不興を買うことにもなりかねません。特にビジネスシーンにおいては、慎重に使いたい言葉の一つです。

また、「饒舌に話せるように、スピーチの練習をする」など、「上手に話す」という意味で使うこともできませんので注意しましょう。

「饒舌」と「冗舌」の違い

「饒舌」には、同じ読みで「冗舌」という表記もあります。この2つの言葉は同じ意味ですが、使い方に違いはあるのでしょうか。

まず、「饒舌」と「冗舌」の歴史的な経緯から見てみましょう。もともと「じょうぜつ」の漢字表記は「饒舌」でした。しかし「饒」は当用漢字表(のちに廃止、常用漢字表へ吸収された)から外されたため、同音で似た意味を持つ常用漢字の「冗」の字に置き換えられるようになりました。

このことにより、現在でも公文書や公用文などの公的な書類では、常用漢字である「冗」を用いた「冗舌」を使うのが基本となっています。また、新聞やテレビなどの報道関係でも「冗舌」を使用する例が見られます。

しかし、それ以外の場面では今なお「饒舌」と表記する方が多いようです。ですので、私たちがビジネスや日常の文章で表記する際にも「饒舌」を使用するのが一般的であると考えていいでしょう。

「饒舌」の使い方と例文

次に「饒舌」の例文を参考に、正しい使い方を学びましょう。

・私はお酒を飲むと、ついつい饒舌になってしまう
・部長は饒舌なので、会議が長引くのが難点だ
・彼女の饒舌さには誰もが辟易(へきえき)していた
・小学生の甥は、アニメの話になるととても饒舌だ
・日頃は控えめな義兄だが、その日の宴席ではむしろ饒舌だった
・話好きなのはいいけれど、饒舌までいくとマイナスの印象を与えてしまうよ

「饒舌」の類語

言葉の意味をより深く理解するためには、類語や言い換えを確認することも大切です。「饒舌」にも似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。

多弁(たべん)

「言葉数が多く、よくしゃべることやその様子」を表し、「饒舌」と置き換え可能です。例文は「新しい営業担当は多弁な男だった」などとなります。

「多弁」は「饒舌」と合わさって「饒舌多弁(じょうぜつたべん)」という四字熟語になります。「必要以上に口数が多いこと」という意味をより強調した表現です。

おしゃべり

「人と雑談すること」の他、「口数が多いこと、口が軽いこと」を意味します。

口軽(くちがる)

「口数が多く、余計なことまで軽々しくしゃべること。隠していたことなどをすぐ人に漏らすこと」や「すらすらと軽快にものを言うこと」を表します。前者の意味が、「饒舌」と重なるでしょう。どちらの意味の場合も、対義語は「口重(くちおも)」です。

口忠実(くちまめ)

「くちまめ」と読み、意味は「口数が多い様子、口の軽い様子やその人」です。「口忠実によくしゃべる人だなあ」といった使い方をします。

「おしゃべり」「口軽」「口忠実」に関しては、「口が軽い」という意味も持っているため、そこが「饒舌」とは少し異なります。

喋喋しい(ちょうちょうしい)

「おおげさである」の他に、「口数が多く、いい加減で調子がいい」という意味があります。「その喋喋しいあいさつに不信感を持った」などのように使用します。

口喧しい(くちやかましい)

「細かいところまでいちいち文句や小言を言う様子」や「しきりにしゃべってうるさい」などの意味があります。

口上手(くちじょうず)

「巧みな言葉で、相手を納得させたり喜ばせたりするのが上手なことやそういう人、その様子」という意味を持ちます。「口巧者(くちごうしゃ)」や「口達者(くちだっしゃ)」、「口八丁(くちはっちょう)」も同様の意味です。

雄弁(ゆうべん)

「説得力を持って力強く話すことやその様子」という意味です。「饒舌」とは異なり、プラスの意味を持った言葉です。「その政治家は極めて雄弁だった」といった形で使用します。

能弁(のうべん)

「弁舌に巧みであることやその様子」を意味します。「達弁(たつべん)」も同様の意味があります。こちらもポジティブな意味を持った表現となります。

  • 「饒舌」の類語は、ニュアンスがそれぞれ少しずつ異なります

    「饒舌」の類語は、ニュアンスがそれぞれ少しずつ異なります

「饒舌」の対義語

次に、「饒舌」の対義語を見てみましょう。「饒舌」には「やたらにしゃべることやその様子。おしゃべり」といった意味がありますが、その反対の意味を持つ言葉です。

無口(むくち)

文字通り「口数が少ないこと。だまりがちでおしゃべりでないことやその様子」という意味です。「旅先で出会ったその青年は、とても無口だった」などの形で使用します。

寡黙(かもく)

「無口」とほぼ同じ意味の言葉です。例文は、「その俳優は、寡黙なことで知られていた」などとなります。

朴訥(ぼくとつ)

「木訥」とも書き、意味は「話し方がなめらかでないこと。飾り気がなく、口数が少ないことやその様子。口下手」です。「朴訥な人柄」など、性質や性格を指して使うことが多い表現です。「素朴な、純朴な」といった意味合いもあるので、いい意味で使われることが多い言葉です。

緘黙(かんもく)

「かんもく」と読みます。意味は、「口を閉じて押し黙ること」です。その人の性質を表しているというよりも、「押し黙る」という行為について指す言葉です。

「饒舌」の英語表現と例文

「饒舌」は、「やたらにしゃべることやその様子。おしゃべり」などを表す言葉です。

該当する英語表現は「garrulity」「talkativeness」などが挙げられます。

garrulity

「garrulity」は、「饒舌、おしゃべり」という意味の名詞です。

He is always garrulity.
(彼はいつもおしゃべりだ)

talkativeness

「talkativeness」は、「饒舌、軽口」などの意味を持つ名詞です。

The old man's talkativeness was a pain in the neck.
(その老人の饒舌さは悩みの種だった)

「饒舌」の意味を知って正しく使おう

「饒舌」は、「やたらにしゃべることやその様子。おしゃべり」を表す言葉です。

否定的な意味合いで使われる言葉ですので、使用する際には注意が必要です。特にビジネスシーンにおいては、説得力をもって力強く話す「雄弁」や、巧みな弁舌を表す「能弁」「達弁」などとの違いをはっきりと認識しておく必要があります。商談相手の説得力のあるトークを褒めるつもりで「饒舌ですね」などと言うと、相手は不快な思いをすることになります。

皆さんもこの記事を参考に、「饒舌」という表現を正しく使いこなしてみてください。