床暖房は、寒い冬場でも足元からぽかぽかと部屋を暖めます。エアコンのような掃除が不要で、こたつやヒーターといった暖房器具のように、季節ごとに出し入れしなくていいところが床暖房の魅力です。しかし、「床暖房の電気代がすごく高いのでは?」と思う方もいるでしょう。
ここでは、床暖房の特徴やエアコンの電気代との比較に加え、床暖房の電気代を抑えるコツを紹介します。
床暖房の電気代はどのくらい?
床暖房の電気代はどのくらいなのでしょうか。まずは、床暖房の特徴とともに、電気代を見ていきましょう。
床暖房の特徴
床暖房は、電気ヒーター式と温水循環式の2つの種類があります。
電気ヒーター式は、床下の発熱体に電気を通して放熱するタイプの床暖房です。温水循環式は、床下のパイプ内に電気、ガス、灯油といった熱源で作った温水を循環させて放熱するタイプの床暖房で、熱源が電気の場合は電気代がかかります。
床暖房はいずれの方式でも、床からの熱と部屋全体に広がる熱の組み合わせで部屋を暖める特徴があります。
床暖房の電気代
床暖房の1か月の電気代を目安に、電気ヒーター式床暖房と温水循環式床暖房とではどのくらい電気代に違いがあるのでしょうか。
パナソニックのウェブカタログ「インテリア建材 暮らし&リフォーム」(2020年)(※1)をもとに見ていきましょう。
電気ヒーター式床暖房の電気代
電気ヒーター式床暖房「フリーほっと」(100Vタイプ)を1日8時間連続で使用し、ひかえめ床温約25℃~あたたかめ床温約30℃を想定した場合、1か月の電気代は、8畳で約2,800~6,100円、10畳で約3,300~7,300円、12畳で約3,900~8,500円、16畳で約5,500~1万1,500円でした。
電気ヒーター式床暖房は温度が一定でないため、電気代に幅がある表示になっています。
温水循環式床暖房の電気代
温水循環式床暖房「フリーほっと温すいW」を1日8時間連続で使用し、床温約30℃を想定した場合の1か月の電気代は、熱源に電気を使用したヒートポンプ式だと、8畳で約2,800円、10畳で約3,900円、12畳で約4,900円、16畳で約6,500円でした。
以上のことから、電気ヒーター式床暖房よりも温水式床暖房のほうが、ランニングコストを抑えられるといえます。
床暖房とエアコンの電気代はどっちが高い?
冬場の暖房といえば、スピーディーに部屋を暖められるエアコンを利用する方が多いのではないでしょうか。ここでは、床暖房とエアコンの違いや電気代の比較を見ていきましょう。
床暖房とエアコンの温かさの違い
エアコンは暖かい空気を送り出すため、部屋が温まるのは早いですが、空気が乾燥するというデメリットがあります。
一方の床暖房は、床から出る遠赤外線が徐々に壁や天井に伝わり部屋全体をゆっくりと温めますので湿度が変わらず、空気の乾燥を防げます。
床暖房とエアコンの電気代の違い
エアコンと床暖房は、製品の性能や使用する部屋の広さによって電気代が変動します。ここでは、12畳のリビングで、エアコンを1日8時間使用した場合のそれぞれの電気代の目安を見ていきましょう。
例えばダイキンの2021年モデルのエアコン「うるさらX」の場合(※2)、暖房時の消費電力は825Wで1kWhあたりの電気代単価を27円として計算すると、1か月の電気代は約5,000円です。
一方、床暖房の電気代は前述のとおり、1か月の電気代は、電気ヒーター式床暖房が約3,900~8,500円、ヒートポンプ式温水式床暖房が約4,900円です。
以上のことから、電気ヒーター式床暖房の電気代が最も高くなる傾向があり、エアコンとヒートポンプ式温水床暖房はほぼ変わらないと言えます。ただし、温度設定やスイッチのオンオフの回数などでも電気代は変化しますので、あくまで参考値となります。
また、参考までに、こたつの電気代は1時間約3~5円で、1日8時間使用した1か月の電気代は約720~1,200円です。そう考えると、床暖房もエアコンも、電気代は比較的高めの暖房器具ということがわかります
床暖房のメリット
エアコンと同じか少し高いぐらいの電気代がかかる床暖房ですが、さまざまなメリットがあります。ここでは、床暖房のメリットについて見ていきましょう。
足元から温かい
冬は特に足元が冷えますが、床暖房なら床面から熱を放射するので冷えた足を温めてくれ、裸足でも快適に過ごせます。
火を使わないのでやけどの心配がない
床暖房は、ヒーターやストーブのように、うっかりさわってやけどをする心配がありません。小さな子供や高齢の方も安心して使えます。
ただし、電気ヒーター式床暖房の場合、高熱で床を温めるため床面が高温になりやすく、長時間床にじかに座ったり、床の上で寝落ちしたりしてしまうと低温やけどをする可能性がありますので、注意しましょう
暖房を使わないオフシーズンに片づける必要がない
こたつやヒーター、ストーブといった暖房器具は、オフシーズンになると片づけるのが一般的です。しかし、床暖房はオフシーズンでも片づけは不要です。なお、暖房器具自体の掃除が必要なく、床掃除をするだけという点もうれしいポイントと言えるでしょう。
空気が乾燥しない
床暖房は、エアコンのように風を送らないため、部屋の空気が乾燥することがありません。また、使用中に部屋のほこりが舞い上がらないこともメリットです。
床暖房のデメリット
たくさんのメリットがある床暖房ですが、いくつかのデメリットもあります。続いては、床暖房のデメリットを見ていきましょう。
設置工事の費用が高い
12畳のリビングダイニングを想定した場合、電気ヒーター式床暖房の初期費用は、部材費のほか、床暖房工事、200W電線工事、リモコン設置工事などの費用を含めて、約60万~80万円が目安です。温水循環式床暖房の初期費用は、部材費のほか、床暖房工事、熱源気設置工事、リモコン設置工事の費用などを含め、約80万~100万円が目安です。
エアコンの初期費用相場である10万~15万円に比べると、床暖房のほうが初期の設備投資額は高くなります。
部屋が温まるまで時間がかかる
床暖房の床自体は比較的すぐに温かくなりますが、床から出る遠赤外線が壁や天井に伝わって部屋全体が温かくなるには、1時間程かかります。快適な室温になるまでは、どうしても時間がかかってしまいます。
定期的なメンテナンスが必要なことがある
床暖房のメンテナンスは一般的に不要といわれていますが、温水循環式床暖房は床下のパイプを循環する水が減った場合、水の補充が必要です。通常の水を使用している場合は、水道水を補充します。寒い地方では、水の代わりに凍らない不凍液が使用されている場合があります。不凍液の場合は、補充または交換が必要です。
メーカーによりますが、不凍液の補充は3~4年が目安で、交換は10年ごとに行うことが推奨されています。交換の場合の費用は、広さや個数にもよりますが、約3万~6万円が目安です。不凍液は配管の腐食や凍結防止の役割があるため、定期的なメンテナンスを行わないと、配管やボイラー故障の原因となってしまいます。
修理代が高い
床暖房の寿命は約30年で、故障しにくいといわれていますが、経年劣化で故障が起こらないとは限りません。床暖房全体的に交換が必要な場合の修理代の目安は、電気ヒーター式床暖房で約30万~40万円、温水循環式床暖房で約60万~80万円です。
ボイラーのみの交換など部分的な取り替えの場合だと、約20万~30万円が目安ですが、電気ヒーター式床暖房に比べると温水循環式床暖房のほうが、修理代は高くなる傾向があります。
床暖房の電気代を節約するコツ
ランニングコストが高い床暖房ですが、使い方に気をつけるだけでグッと節約できることがあります。最後に、床暖房のランニングコストを抑えるコツをご紹介しましょう。
電力会社の契約プランを見直す
床暖房の電気代が高いと感じたら、契約プランを見直してみましょう。従量電灯といった段階的に料金が上がるプランを使っている場合、床暖房をつけたままにすることが多いと電気代が高くなります。
契約容量によらず電気の基本料金が変わらない一律料金プランがお得な場合もありますので、床暖房の使い方に合わせて、電力会社の契約プランを見直しましょう。
床暖房の必要な面だけ温める
リビングダイニングの床暖房は、リビング部分やダイニング部分に分けて温められるタイプがあります。使用面積を減らすと節電効果は大きくなりますので、部分ごとに分けて床暖房をつけるようにすると電気代が節約できます。
短時間でつけたり消したりしない
床暖房を立ち上げるときの電気代は、温度が安定した後の電気代よりも高くなるため、頻繁につけたり消したりを繰り返すと電気代が上がります。温度設定は低めで、つけたままにしたほうが節電効果はあるので、意識しておきましょう。
また、床暖房は消してからも30分程度は余熱を感じられるため、就寝30分前に消すようにすることも節電につながります。
ほかの暖房器具と併用する
床暖房は温まるまでに少し時間がかかるため、スピーディーに部屋を暖めたい場合は、ほかの暖房器具と併用しましょう。エアコンと併用すれば、スピーディーに効率良く部屋全体を温められます。
窓の断熱をする
床暖房で暖めた空気を部屋から外へ逃さないために、窓ガラスに保温シートや発熱シートを貼っておくと断熱効果が期待できます。
また、カーテンを断熱素材の物にしたり、レースとの二重掛けにしたりすると、冷気の入り込みを防ぐことができるでしょう。
床暖房で足元から温かく、寒い冬場も快適な部屋で過ごそう
床暖房は、電気ヒーター式と温水循環式の2種類があります。それぞれ特徴やランニングコストが異なりますので、自分の生活に合ったタイプを選ぶことをおすすめします。
空気を乾燥させずに、足元からぽかぽか暖かい床暖房は、寒い冬場でも快適に過ごせるアイテムです。電気代を抑えるコツを活かして、上手に使いましょう。
参照 :
(※1)Panasonic「インテリア建材 暮らし&リフォーム(2020年)」
(※2)DAIKIN「うるさらX」