ビジネスシーンでもよく登場する「退社」は、全く異なる2つの意味を持ちます。そのため誤解を招きやすい言葉です。

本記事では「退社」のそれぞれの意味に対する例文、言い換え表現や対義語、英語を紹介します。退職や帰社など混同しやすい言葉についてもまとめました。

  • 「退社」の意味について解説します

    「退社」の意味について解説します

退社とは

まずは「退社」の基本的な意味や読み方を見ていきましょう。「退社」には大きく2つの意味があります。

1つ目の退社の意味は「会社を辞めること」

1つ目は「会社の従業員が、勤務している会社を辞めること」という意味です。「一身上の都合で退社いたします」「定年退社」などの形で使います。

2つ目の退社の意味は「その日の勤務を終えて、会社から退出し帰宅すること」

そして2つ目は「その日の勤めを終えて、会社から退出すること」です。「本日は18時に退社予定です」などの形で使います。

この2つは全く異なる意味であり、しかもどちらもビジネスシーンで頻繁に使用されるだけに、使い方には注意が必要です。

退社の読み方

「退社」は、「たいしゃ」と読みます。特に難しい漢字ではありませんので、問題なく読めるのではないでしょうか。

「退」という漢字には、「やめる、去る」「しりぞく」「衰える」などの意味があります。

退社の使い方と例文

「退社」のそれぞれの意味について、例文を参考に使い方のイメージをとらえましょう。

「会社を辞めること」としての退社の例文

・残念ながら、彼は一身上の都合で退社した
・部長は来月、定年前にもかかわらず退社する
・彼は50歳で退社して、悠悠自適の生活に入った
・専務にとっては、遺恨の残る退社となった
・私事で恐縮ですが、このたび一身上の都合により3月末で退社することになりました

「その日の勤務を終えて会社を出ること」としての退社の例文

・係長は昨日、18時前には退社した
・私は毎日19時に退社することをルーティンにしている
・課長は通常、何時ごろに退社されますか?

退社と退職の違い

「退職(たいしょく)」は、「勤めている職を辞める、しりぞくこと」を意味します。「部長は来月、定年で退職する」といった形で使います。

「退職」にはこの一つの意味しかないので、「退社」では「今日は帰った」と勘違いされてしまいそうな場合は、「退職」に言い換えるといいでしょう。

退社と帰社の違い

「その日の勤務を終えて会社から退出すること」という意味での「退社」と間違えやすい言葉として、「帰社」があります。

「帰社」は、「出先から自分の会社に帰ること」を意味します。会社から退出すて帰宅する「退社」とは意味が大きく異なりますので、混同しないようにしましょう。

退社の類語・言い換え表現(1)

前項でも記したように、「退社」には「会社を辞めること」と「その日の勤務を終えて会社から退出すること」という、2つの異なった意味があります。紛らわしい言葉なので、特に電話やメールなどによる外部からの問い合わせに対しては、誤解を与えるような対応をしてしまうとトラブルにもなりかねません。

そこで、それぞれの「退社」の意味に対応する言い換え表現を見ていきましょう。まずは、「会社を辞めること」としての「退社」に近い意味を持つ言葉です。前述の「退職」以外にも、以下の言葉があります。

離職(りしょく)

「退職や失業などにより職務から離れること」を指します。「家庭の事情で離職することにしました」「当社の課題は、中堅層の離職率の高さである」などの形で使われます。

辞職(じしょく)

意味は「今まで勤めていた職を自分から辞めること」です。使用例は「彼はトラブルの責任を取って辞職した」などとなります。

「辞職」は自らの意思で職を辞めるのに対して、「退社」「退職」「離職」は単に職場から去ることを表す点で、意味が少し異なっています。

なお、「辞職」に似た言葉に「辞任」がありますが、「辞任」は任務や役職などを自ら辞退することで、職場を去るとは限りません。

退社の類語・言い換え表現(2)

次に、「その日の勤務を終えて会社から退出すること」という意味での「退社」の言い換え表現を見てみましょう。

退勤(たいきん)

「その日の勤務が終わり、勤め先から退出すること」という意味です。使用例は「彼女は毎週金曜日は、17時に退勤する」などとなります。

「退社」が「会社を退出すること」に重点があるのに対して、「退勤」は「勤務を終えること」にポイントがあります。昨今、すっかり一般化した自宅などで行うリモートワークでも、出社をせずに勤務を行う以上「退社」はありませんが、業務を終了した時点で「退勤」は完了する、ということになります。

  • 「退社」は2つの意味を持ちます。特に電話対応の際などは誤解を避けるために、言い換え表現を使うのもいいでしょう

    「退社」は2つの意味を持ちます。特に電話対応の際などは誤解を避けるために、言い換え表現を使うのもいいでしょう

退社の対義語(1)

続いて、「退社」の対義語を見てみましょう。

こちらも、「退社」の2つの意味それぞれについての対義語をご紹介します。まずは、「会社を辞めること」の反対の意味を持つ言葉です。

入社(にゅうしゃ)

文字通り、「会社に入って、その社員となること」を意味します。「彼は憧れの企業への入社を果たした」などの形で使用します。

退社の対義語(2)

次に、「その日の勤務を終えて会社から退出すること」という意味での「退社」の対義語を紹介します。

出社(しゅっしゃ)

「会社に出勤すること」を意味します。「父は毎朝9時に出社していた」などとなります。

出勤(しゅっきん)

意味は「勤めに出ること、勤務先へ出掛けること」です。「私は遅くとも10時までに出勤する」などとなります。

なお「出社」には、「自分が勤めている会社に出向く」という意味合いがあるのに対して、「出勤」には場所の制約はありません。「退社」と「退勤」の関係と同様に、リモートワークでは「出社」はせずとも「出勤」はしている、ということになります。

退社の英語表現と例文

これまで見てきたように、「退社」には「会社を辞めること」と「その日の勤務を終えて会社から退出すること」の、2つの意味があります。

前者の意味を表す英語としては「retirement」「resignation」や、カジュアルな言い方で「quit one's job」などがあります。

後者には「clock out」や「leave work」などがあります。文脈やシチュエーションなど考慮しつつ、適切なものを選びましょう。

He took early retirement.
(彼は定年前に早期退社した)
I'm going to clock out a little early tomorrow.
(明日は少し早めに退社する予定だ)

転職活動時、履歴書の職歴には「退社」と書いていい?

転職活動の際、履歴書の職歴欄には過去に勤めた会社を記載します。この際、「退社」と「退職」はどちらも使用することができます。

しかし、前述のように「退社」には2つの意味が存在して紛らわしいため、履歴書には「退職」を使用するのがおすすめです。

また、公務員や法人勤務など、「会社」に勤めているわけではない場合は、「退社」は使わず「退職」と書きます。

「退社」は紛らわしい言葉なので、ビジネスの場では適宜言い換えよう

ここまでご紹介してきたように「退社」は2つの異なる意味を持つ言葉ですので、特にビジネスシーンでは使い方に注意が必要です。

「退職」や「退勤」など近い意味を持つ言葉に置き換えたり、意味をはっきり伝えるために、「先月末付で退社しました」や「本日は既に退社しております」といった言葉を添えたりなどの工夫をして、誤解されないように努めましょう。

ビジネスシーンにおいて「退社」は頻繁に使われるだけに、その意味を正確に伝えたいもの。皆さんもこの記事を参考に、「退社」という表現を正しく使いこなしてみてください。