アイロボットジャパンは6月8日、小中学生を対象としたプログラミングカリキュラム「ルンバ エンジニアリングコース」をアイロボット公式ページ内に公開しました。メディア向けのオンラインセミナーからお届けします。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されたことに伴い、さまざまな企業がプログラミング教育の分野に参入しています。アイロボットのCEO、コリン・アングル氏は「子どもたちがロボット開発の原動力」と考え、2009年からSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)プログラムに注力。アイロボットで働く人たちは、教育機関などでボランティアのプログラミング教室を実施しています。こうした活動をサポートするため、年間2日の「STEM休暇」も用意しているんだとか。

この取り組みはアメリカだけに留まらず、2018年から日本でも実施。ボランティアのアイロボット社員が、プログラミング教室やワークショップを行ってきました。コロナ禍の影響で2020年から中断していましたが、今年(2022年)の7月24日、2年半ぶりに再開します。

アイロボットのプログラミング用ロボット「Root」を使ったカリキュラムを公開

アイロボットは、プログラミング教育用のロボット「Root(ルート)」を開発しています。白と黒を基調とした六角形デザインのRootは、手のひらサイズのボディ。フロントバンパー、タッチセンサー、音センサー、光センサー、プログラミング可能なLEDライトを備えている高性能なロボットです。専用アプリでプログラミングすることで、多彩な動きをさせられます。2021年に「Root rt1」「Root rt0」の2機種を発売し、現在は38都道府県の教育機関でプログラミング教材として導入されているそうです。

  • 六角形のデザインが特徴的な「Root(ルート)」

  • アイロボットは以前からSTEM教育に力を入れています

  • 全国38都道府県の教育機関がRootを導入。2022年中には47都道府県の導入を目指します

「Rootを導入した教育現場からは、かたちがかわいいい、組み立て不要で扱いやすい、多機能といった声をいただいています。成長にあわせてレベルを変えられる柔軟性も評価いただいています。プログラミングとロボット技術という、アイロボットにしかできないことを体現し、将来エンジニアになるという夢をお子様に想像していただきたいという思いから活動しています」(アイロボットジャパン 山田毅氏)。

これまでは、Root本体やプログラミングアプリを提供するだけでしたが、プログラミングの意義や目的、学ぶ楽しさを伝えるため、新たな取り組みとしてオリジナルの学習カリキュラムを開発。それが「ルンバ エンジニアリングコース」です。日本法人(アイロボットジャパン)の呼びかけによって、アメリカ本社のiRobotと共同開発されたカリキュラムで、6月8日(ルンバの日)から公開されました。

  • アイロボットジャパン 新規事業開発室 執行役員 山田毅氏

  • プログラミングとロボットをあわせた教育はアイロボットならでは

「プログラミング教育で課題となるのは、プログラミングが実生活とどのように結びついているかがイメージしにくいところ。身近にあるロボット掃除機『ルンバ』の動きを思い浮かべながら、その動きをRootで再現することで、プログラミングの仕組みを学んでいただきたい」(アイロボットジャパン 新規事業開発室 ビジネスデベロップメントマネージャー 竹迫大佑氏)

今回のセミナーでは、実際に「ルンバ エンジニアリングコース」をベースに授業を行った大阪府摂津市別府小学校の事例が紹介されました。

  • 大阪府摂津市別府小学校での授業風景

いきなりプログラミングの授業を始めるのではなく、まずはルンバの動きを観察。アイロボットのコリン・アングル氏から児童たちへのメッセージビデオも流します。

「プロスポーツ選手などと違って、プログラミングの第一線で活躍している人はイメージしにくいため、メッセージビデオは児童たちの心に刺さったようでした」(竹迫氏)

  • アイロボットジャパン 新規事業開発室 ビジネスデベロップメントマネージャー 竹迫大佑氏

そしてプログラミング授業でのミッション。ルンバはフロント部分に「パンバーセンサー」を備えており、バンパーセンサーが障害物に触れるとルンバ本体が少し後ろに下がって方向を変え、移動(掃除)を続けます。この動きをRootで再現することが今回の課題です。少人数のグループに分かれ、児童たちが相談しながら取り組みます。

授業を行った石田亮太先生は「考えないと楽しめないところがいい。実物を動かすと、想像と違う動きをすることもありますが、それも含めて学びになっています」と話します。

また、摂津市教育委員会 事務局 宗木俊憲指導主事は「プログラマーという職業にも触れることになるので、プログラミング思考とキャリア教育を兼ね備えたような形で、プログラミング教育を進めていきたい」とコメント。

授業を見学したアイロボットの竹迫さんは「Rootの授業をきっかけに不登校だった児童が再び教室に足を運ぶようになったというお話が印象的でした」とのこと。プログラミング知識の習得だけでなく、児童たちに広い意味でポジティブな影響を与えていることに感動したそうです。

初学者から上級者まで学べるコンテンツを用意

「ルンバ エンジニアリングコース」の特徴は3点。

1点目は「ルンバの動きをRootで学ぶ」こと。ルンバの動きを再現するためには、どのような条件のときにどのような動きが必要なのか、どのようなプログラミングを組む必要があるのか――。こうした流れでプログラミング思考を学びます。

2点目は「45個のアクティビティ」。ルンバが備える「バンパーセンサー」の役割や進入禁止エリアの仕組みを学ぶもの、ホームベース(充電スタンド)へ誘導するもの、オリジナルのクリーンマップを設計して掃除を行うものといった、プログラミングを学ぶアクティビティが用意されています。リリース時点では初心者向けカリキュラムのみですが、今後は上級者向けのカリキュラムも準備するとのこと。ステップアップしながら深く学べますね。

3点目は、アイロボット社員が動画でアクティビティを説明するコンテンツ。操作方法の解説などを動画で確認できるため、ひとりでも学べます。また、教育現場でプログラミング指導の経験者がいない場合でも、授業を進められそうです。

  • ルンバが掃除するときの動きを再現

  • 豊富なアクティビティを用意。学びが深まります

  • アイロボットの社員がアクティビティの解説をする動画を用意

ブラウザとアプリでプログラミング体験

今回のセミナーでは、参加者がアプリ(またはWebブラウザ)でプログラミングを体験。Rootの本体は手元にありませんが、画面のシミュレーターを使って、プログラミングと動きを確認します。Webブラウザなら事前にダウンロードがいらないため、授業を準備する負担が減りそうだと思いました。

「ルンバ エンジニアリングコース」のプログラミングはレベルが3つ。レベル1のブロックプログラミングは、アイコンが描かれているブロックを組み合わせるだけで、ルンバの動きを再現できます。

レベル2では、角度や時間など細かい設定ができるようになります。小学校の授業で用いられている「Scratch」というビジュアルプログラミングツールによく似ています。レベル3は、コードを使った本格的なプログラミングが可能です。

実際に使ってみると、直感的でとても簡単。操作画面のデザインは優しい雰囲気で、使い始めからなじみやすいでしょう。対象は小中学生とのことですが、レベル1からレベル3まで、習熟度にあわせてプログラミングを学べるところに魅力を感じます。

  • 「ルンバ エンジニアリングコース」は、アプリだけでなくWebブラウザからでも体験可能

  • レベル1ではブロックを使ったプログラミング

【動画】実際にプログラミングを体験。シミュレーターですぐに動きをチェックして、いろいろと動き(プログラム)を変えていくのは楽しいものです

さらに高度なプログラミングで動かせる「Creat 3」

アイロボットでは、もっと高度なプログラミングが学べる教育用ロボットも開発しています。その「Creat 3」は、見た目がルンバそっくりの教育用ロボット。ジャイロセンサーをはじめとする多彩なセンサーを備え、ホームベースも用意。PythonやRO2でプログラミング可能な本格派です。

  • 見た目はルンバそっくり!

「未来のエンジニアを育てるため、将来なりたい姿やゴールをイメージすることが大事」(竹迫氏)

Rootをきっかけにプログラミングを学んで理解を深め、「Creat 3」で本格的なプログラミング体験ができる仕組みづくりを、アイロボットは今後も開発し続ける考えです。「ルンバ エンジニアリングコース」でロボットやものづくりに興味をもった子どもたちが将来、アイロボットのエンジニアとして開発を担うということもあるかもしれませんね。

教育機関を対象に、RootとCreat 3を無料貸与

「Creat 3」は日本国内でまだ販売されていないロボットですが、アイロボットが教育機関を対象に貸し出します。「Creat 3」×1台、「Root」×6台のセットで、レンタル費用や送料は無料。教育機関であれば誰でも申し込めるとのこと。詳細はアイロボットのWebサイトで確認してください。

  • 教育機関向けにプログラミングロボットを無償で貸し出し

そのほか一般を対象に、アイロボットジャパン東京オフィスで「第14回 STEMワークショッププログラム」を開催します(2022年7月24日予定)。こちらもアイロボットのWebサイトをチェックしてみてくださいね。

ロボット掃除機は、私たちの生活で身近なロボットのひとつ。その動きを観察しながらプログラミングで再現することで、プログラミングも身近なものと実感するきっかけになりますよね。しかもRootは手のひらサイズでかわいらしく、音や光を含めたさまざまな動きを再現でき、楽しみながらプログラミングを学べるでしょう。