日本のみならず海外ファンにも愛される日本酒ブランド「黒龍」などを手掛ける黒龍酒造。その親会社である「石田屋二左衛門」は、地元福井・永平寺の3万坪の敷地に巨大な食・酒の観光施設「ESHIKOTO」(えしこと)を6月17日にオープンする。20歳以上しか入れないという本施設の開業に先立ち、メディア向けの内覧会を開催するとのことで、日本酒好きの筆者も早速福井へと向かった。

  • 「石田屋二左衛門」は、地元福井に巨大な酒蔵観光施設「ESHIKOTO」(えしこと)を6月17日にオープンする

■「ESHIKOTO」誕生背景

福井駅から車で約30分の場所に位置する「ESHIKOTO」(えしこと)は、日本酒「黒龍」「九頭龍」というブランド名の由来ともなっている九頭竜川(旧名:黒龍川)を見渡せる自然豊かな場所に建つ。広大な敷地はなんと3万坪! 現在その1/3が開発されており、レストランやショップ、貯蔵セラーが今回オープンする。

  • 福井の自然豊かな場所に建つ「臥龍棟(がりゅうとう)」

「ESHIKOTO」(えしこと)は、食を通して福井の魅力を発信すると同時に、人々の交流を生み出すことを目的として誕生。石田屋仁左衛門の代表取締役である水野氏は、本施設の建設にあたりフランス・アメリカのワイン醸造地の観光スタイルに感銘を受けたと話す。

田舎町でブドウ畑しかない場所にも関わらず、世界中から人々が訪れ、その土地の風土・食・人との出会いを楽しんでいる様子が印象的だったという。そんな実体験から、地元福井で同じようなことができないかと考え、始まったのがESHIKOTOプロジェクトだ。

本施設では、日本酒を製造・販売するだけではなく、酒や食を起点としたさまざまな体験ができるのが魅力。では実際にどんなことができるのか、施設の特徴と併せて見ていこう。

■大スケール空間「臥龍棟(がりゅうとう)」

イギリスの建築家サイモン・コンドル氏が手掛けた「臥龍棟(がりゅうとう)」は、内部に瓶内2次発酵のスパークリング日本酒「awa酒」を約8000本貯蔵しているセラーがある。通常、棟内は非公開だというが今回は特別に中をのぞかせてもらった。

  • セラーは古民家の柱や扉を再利用している

中は天井が高く広々とした空間で、壁面には迫力のあるアート作品が飾られている。

  • 床には一部、笏谷石(しゃくだにいし)という希少な石を使用

樹齢200年の地元の杉を使った巨大なカウンターが設置され、規模感の大きさにただただ驚いてばかり。

  • あまりにも大きすぎて最初何かわからなかった

水野氏によると臥龍棟(がりゅうとう)では、今後人々の交流をはかるイベント開催などを考えているという。

■自然に癒やされながら酒を楽しむ「酒楽棟(しゅらくとう)」

続いては、レストランやショップが入る「酒楽棟(しゅらくとう)」へ。個人的に最も感動したのが階段をあがってすぐのこちらの景色。

  • 四季折々の九頭竜川を望む美しい景観を眺めることができる

対岸の山々が織り成す雄大な風景が一枚の絵画のように見える。そのまま前に歩いていくと今度は大パノラマの景色が現れ、なんとも粋な仕掛けにショップやレストランに行く前からワクワクが止まらない。

レストラン「acoya(あこや)」

そんな圧巻の景色を目の前に料理を楽しめるのが、レストラン「acoya(あこや)」。店内はお酒に合うおつまみを提供する「アペロ」とお菓子を販売する「パティスリー」の2ゾーンに分かれている。

  • 店内は白と黒のゾーンに分かれており、白がパティスリー、黒がアペロの空間となっている

  • レストランだがアートショップのような雰囲気が漂う

「アペロ」では、フランス料理をベースにした御膳スタイルの料理を提供する。筆者はランチメニューをいただいたのだが、特に感動したのがメインのお肉料理。黒龍吟醸豚のバラ肉と五領玉葱をシェリービネガーで煮込んだ肉料理は、ほろほろとやわらかく、噛むほどにうまみがあふれ出し、なんとも幸福感に包まれる一品だった。

  • 海に山に豊かな「福井」の食材にこだわってメニューを構成。また、食器も越前焼や越前漆器を使う徹底ぶりだ

  • 黒龍吟醸豚という黒龍の酒粕を食べさせた豚のバラ肉を使用している

また、一緒に提供されたスパークリング日本酒「ESHIKOTO AWA 2019 Extra Dry」は、切れ味のいいドライな味わいで、すっきりとした後味を演出してくれた。

  • 「ESHIKOTO AWA 2019 Extra Dry」(7,700円)は、awa酒のための技法で醸した日本酒を15カ月以上「瓶内二次発酵」させ、冷蔵熟成している。そのため日本酒らしい米のうまさを感じつつも、やわらかな口当たりとスパークリングならではの軽快な味わいが堪能できる

デザートには、「ESHIKOTO 梅酒13」と、それを使用した梅酒のパウンドケーキが登場。梅の華やかな香りと優しい甘さ、ほどよい酸味が調和しており、「梅」というより「梅酒」を楽しめるような、酒好きにはたまらないスイーツだ。なお、こちらはパティスリーにて販売予定とのこと。

  • 「ESHIKOTO 黄金梅酒 CAKE」と「ESHIKOTO 梅酒13」のペアリングを堪能

石田屋酒ショップ

続いてはお酒や伝統工芸品を販売する「石田屋酒ショップ」へ。黒を基調とした店内は、シンプルでありながら洗練された大人の雰囲気が漂う。

  • ショップの店内には笏谷石や越前和紙を使用している

  • 窓が大きく自然と一体感溢れる空間でお酒を楽しめる

シックな空間に配された越前箪笥(えちぜんたんす)の中には、地元のアーティストが作ったという伝統工芸品が展示されており、気に入ったものがあれば実際に購入も可能。酒ショップとしてはもちろん、ギャラリーとしての役割も兼ね備えている。

  • 越前箪笥の中には地元のアーティストが作った酒器が飾られていた

また、「ここに来てもらう価値を創り出したい」と、「石田屋酒ショップ」でしか購入できない限定酒などもラインナップ。

  • 黒龍酒造の酒造りを大切にしながら、新しい挑戦をコンセプトに生まれたブランド「ESHIKOTO 永」シリーズや、黒龍ももちろん用意されている

さらに、本ショップのみどころであるテイスティング体験も外せない。今回は、「石田屋酒ショップ」の限定酒、福井県産の酒米・酵母を使用した「ESHIKOTO 永」シリーズから3種類のお酒を飲み比べ。同じシリーズでも、同時に味わうことでそれぞれの特徴をより理解できたのもうれしいポイントだ。

  • 向かって左から3種類を飲み比べ。「ESHIKOTO」を反対から読むと、「永(TOKOSHIE)」となり日本酒のシリーズ名となる


魅力的な体験ができる「ESHIKOTO」だが、今回オープンした施設は3万坪のうちのわずか1万坪程度。今後は蒸留所、醸造ラボ、オーベルジュなど、さらなる開発が進んでいくという。地元福井の魅力を発信する「ESHIKOTO」が"永久(とこしえ)の場所"となる挑戦は、まだ始まったばかりだ。

※施設利用は20歳以上に限る、ペット同伴不可

■Information
「ESHIKOTO(えしこと)」
【場所】福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17

「acoya(あこや)」
【場所】福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17 酒楽棟2F-B
【営業時間】モーニング 8:00~11:00/ランチ 12:00~15:00/カフェ 15:00~18:00
※いずれの時間帯も営業終了1時間前がラストオーダー