中盤でリードを奪い、最後は一気の端攻めで決める
里見香奈女流王位に西山朋佳白玲・女王が挑戦する第33期女流王位戦五番勝負(主催:新聞三社連合)の第4局が6月7日に徳島県徳島市「JRホテルクレメント徳島」で行われました。結果は89手で里見女流王位が勝ち、五番勝負を3勝1敗として、女流王位防衛を果たしました。
■里見女流王位が意欲的な居玉作戦を取る
本局は里見女流王位の先手番から、里見女流王位が中飛車、西山白玲・女王が三間飛車に振りました。これは手番も同じだった第2局と同様の出だしです。しかし11手目の▲4八銀上が里見女流王位の工夫で、早くも前例が無くなりました。以下、西山白玲・女王がオーソドックスな美濃囲いに囲ったのに対して、里見女流王位は居玉のまま中央に二枚銀の形を作り、さらに天王山を確保します。対して西山白玲・女王は角交換に出た後、飛車の位置を5筋に変え、更に手にした角を6五に据えて中央からの逆襲を狙いました。ただ、角を手放した代償となるほどの戦果を後手が得たかというと、何とも言えません。
■勝負を分けた金底の歩
昼食休憩再開後、里見女流王位は▲2二角と香取りに打ち、香得を実現します。さらに敵陣に作った馬を軸に、駒得を拡大していきました。この辺りから徐々に先手が指しやすくなっていきました。とはいえ先手は居玉で薄いという弱点もあり、攻め損なうとその反動で一気に自玉が危なくなるリスクもあります。
明暗を分けたのは65手目▲4一飛成の局面でした。これは5二の金取りになっているので、後手は△5一歩と受けます。「金底の歩、岩よりも堅し」という格言もある底歩です。しかし底歩にはその筋に歩が打てなくなるマイナスもあります。それをついた▲5四香が厳しい一着となりました。後手はここで△1四角と竜取りに打ちたいところです。竜取りになっているだけでなく、次に△4七銀と玉頭に迫る狙いもあります。しかし△1四角に構わず▲5二香成とされ、以下△4一角と竜を取るのは▲6二成香で後手の負け筋です。また▲5二香成に△4七銀と詰めろで迫るのは▲4七同竜△同角成が詰めろにならず、やはり▲6二成香で先手勝ちとなります。▲4一飛成には△6一銀と打てば▲5四香には△5三歩が打て、△1四角~△4七銀の筋も残っているので、これは難しい勝負でしょう。
実戦は▲5四香に△6二金としましたが、これは以下の順で後手玉の左辺が壁になったマイナスが生じました。それを突く71手目▲9五歩が美濃囲いの弱点を狙う端攻めで、以下は一気に里見女流王位が後手玉を寄せ切って勝利しました。今期の防衛で、里見女流王位は女流王位戦4連覇となります。
女流2強による十番勝負は里見女流王位が先勝しました。そして6月13日には両者によるマイナビ女子オープン第5局があります。西山の防衛か、里見が奪取して五冠となるか。女流棋界の頂上決戦もいよいよ最終ラウンドを迎えています。両者の戦いぶりに注目しましょう。
相崎修司(将棋情報局)