企業を経営していく上で欠かせない「ガバナンス」。しかし、その言葉の意味を詳しく理解できている方は少ないかもしれません。
本記事では、会社経営に欠かせないガバナンスの意味、および具体的な使い方を解説します。
ガバナンスの意味
ガバナンスとは「統治・支配・管理」を意味する言葉です。主に、「コーポレート・ガバナンス」という意味合いで使われることが多く、この場合には、健全な企業経営を行うために管理体制の構築や企業内部の統治をすることを指します。
企業だけでなく、管理・統治するべき組織や団体に対して使える言葉で、近年では「グローバル・ガバナンス」や「インターネット・ガバナンス」といった言葉も出てきました。
ガバナンスの同義語
前述でも少し触れていますが、「管理体制」「統治力」「支配体制」といった言葉が、ガバナンスの類義語として挙げられます。「ガバナンスが効いている」という言い方がありますが、これは「一目置かれる統治力」などと言い換えられます。
ガバナンスの英語訳
ガバナンス(governance)は、ギリシャ語を起源としている英語です。日本語に直訳すると「組織などをまとめあげるための方針やルールなどを決め、組織内に行き渡らせて実行させること」という意味です。簡潔に訳すると「統治・支配・管理」という言葉が適しています。
ガバナンスの使い方
「ガバナンス」と合わせて使用される言葉は主に「強化・向上・改善・確立・改革・発揮」などです。
以下、実例を紹介します。
ガバナンス強化
例えば「強化」という言葉では「ガバナンス強化」や「ガバナンスを強化する」といった使い方になります。ガバナンスは企業運営の基本方針であることから、この場合は「統治の影響力を強める」「管理体制を強化する」といった意味合いをもちます。
ガバナンスコード
ガバナンスコードとは、企業などが統治を行う際にガイドラインとして提示する指針のことです。主に経営力や収益力向上のために、ガバナンスコードを示すことが多いとされます。
ガバナンス効果
ガバナンスという言葉が注目を集めることになったのには「企業の不祥事の増加」や「エージェンシー問題の顕在化」が背景にあるとされています。コーポレートガバナンス(企業統治)は、株主・顧客・取引先・従業員などの保護と利益向上を目的にしています。
そのため、ガバナンスを示すことで、企業の不祥事を未然に防いだり、競合他社に対する競争優位性を獲得し、結果企業継続につながったりする効果を期待できます。
ガバナンスと似た言葉との違い
企業が収益向上などのために図る施策は、内部統制やマネジメントシステムの開発、有識者会議などさまざまな方法があります。
リスクマネジメントの洗い出しやコンプライアンスの改革などもその一つです。その違いについて紹介するとともに「ガバメント」が行う「国の施策」との違いについてもご紹介します。
リスクマネジメントとの違い
ガバナンスとリスクマネジメントは、一般的に使われる領域や意味合いに違いがあります。ガバナンスは、例えば株主など外部の利害関係者からもたらされる企業経営者の統治を意味しています。一方、リスクマネジメントは経営者による従業員など内部の管理を意味しており、「ガバナンスにリスクマネジメントが含まれる」こととなります。
コンプライアンスとの違い
コンプライアンスは「社外の倫理や道徳に従うこと」です。企業などでコンプライアンスが注目されるようになったのは、不祥事や不正の発覚が相次いだ2000年代で、ガバナンスがより注目されるようになった時期と同じ頃です。
大手自動車メーカーによるリコール隠しや産地偽装問題などに対し、投資家や一般社会から批判が寄せられたことをきっかけに、行政による企業管理体制の取り締まりが求められました。その結果、企業のコンプライアンスが重視されるようになりました。
ガバナンスとの違いは、コンプライアンスが法律など国が定める規律にも従う一方、ガバナンスは企業独自で管理体制を構築するということです。つまり、ガバナンスを示す中に「コンプライアンスの順守が必要」と提示される可能性もあるということです。
ガバメントとの違い
ガバナンスとガバメントは、どちらも起源を同じくする言葉とされています。「ガバメント」は主に「国家や地方自治体による統治」という意味で使われ、私的な意味合いが含まれません。
一方、「ガバナンス」は15世紀以降、ビジネス界(先進企業、中小企業など)や政治学といった世界から姿を消します。一時はまったく使われなくなった言葉でしたが、1990年代になって再び登場することとなります。
「国や地方自治体以外のアクターによる政治」を表す言葉として、再び広がることとなり、さまざまな組織統治に責任を果たす役割を担っています。
ガバナンス強化の事例
実際に行われたガバナンス強化の事例についてご紹介します。実例を参考にビジネスに活かしてみましょう。
ある大手化粧品会社では、「守りのガバナンス」と称し、自己に厳しい姿勢を社内に徹底したほか、内部統制にも注力しました。また、「攻めのガバナンス」では、代表取締役社長以下、取締役会を夢の実現の場として認識させ、議論を活発化させていることにあります。
他にもガラスディスクやメガネ、コンタクトレンズを扱う会社にて、取締役会のあり方に対し、「中長期的な企業価値の向上を支えている」などとし、「経営者の選任解任、サクセッションプランについても平時・非常時も含めて準備ができている」などと世界標準のガバナンスモデルを実践しているとされています。
ガバナンスへの理解を深めて適切に使おう
企業価値を高めるためには、適切な管理体制を構築する必要があります。しかし一方で、リスクマネジメントやコンプライアンスをガバナンスの中に組み込むことで、メリットも大きい一方、自由な企業活動を阻害する可能性もあります。
企業価値向上のタイミングを見極め、さらに高めるために適切な時期にガバナンスを効かせることが重要です。
また、不正や不祥事には随時内部監査や調査を行い、問題点に対しガバナンスを効果的に働くようコントロールする必要もあります。
企業の未来を守るため、こちらの記事で学んだガバナンスの知識を生かし、透明性のある体制作りを行いましょう。