カタカナ語であるカタルシスの由来は、古代ギリシアにまでさかのぼります。元々は排泄を意味する言葉として使われていましたが、現在では哲学や心理学的な意味も持ちます。
この記事では、カタルシスの意味と語源、実際の使い方や関連語について紹介していきますので、よく意味がわからないまま使っていた方はチェックしてみてください。
カタルシスの意味と語源
ここでは、カタルシスの意味や、現在のように使われるようになった由来を紹介していきます。
カタルシスとは感情の浄化や、精神分析や心理学での治療方法のこと
カタルシスの意味は主に2種類です。1つ目は、文学作品や映画に感情移入することによって、日常生活の中で抑圧されていた気持ちが解放されて、すっきりすることです。
2つ目は、精神医学用語や心理学用語として用いられ、思い起こすだけで嫌な気持ちがよみがえることや、嫌なできごと・気持ちを自由に表現させることで心の緊張を解く治療方法を意味します。
一般的には「気持ちが解放される」ことを表す、前者の意味で用いられるケースが多いです。
英語では「catharsis」と書く外来語
外来語であるカタルシスは、英語では「catharsis」と書く名詞です。英語での意味は感情の浄化や抑圧感情を取り除かせようとする精神療法のほか、下剤による便通のことも表しています。
カタルシスの語源はギリシア語の「katharsis」
前述のように英語では「catharsis」と書くカタルシスですが、さらにさかのぼると、語源はギリシア語の「katharsis」にまでたどりつきます。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが広めた言葉です。
カタルシスは元々古代ギリシア時代では「排泄」を意味する言葉として使われていました。哲学者として知られているアリストテレスが発した「悲劇の効果は恐れと憐れみによるカタルシスにある」という言葉で広く使われるようになったことが、現在の「気持ちが解放される」という意味で使われるようになったきっかけです。
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カタルシスの使い方と例文
カタルシスの意味を理解できても、慣れていないと実際の使い方はわかりにくいものです。そこで、カタルシスという言葉を使った表現の使い方や例文を紹介していきます。
カタルシスを感じる
「カタルシスを感じる」とは、押し殺していた感情を解放して、気持ちがすっきりすることを表します。「南の島で海を眺めているとカタルシスを感じる」というように、外的な影響で精神が浄化されることを表現できます。
読書や映画・音楽鑑賞による効果など幅広く使われる言い回しなため、覚えておくといいでしょう。
カタルシスへ誘う
「カタルシスへ誘う(いざなう)」とは、すっきりとした気持ちに導いてくれることを意味しています。「彼女の落ち着いた声はまるでカタルシスへ誘ってくれるかのようだ」というように使われる表現です。
舞台の評論文や書評などで使われる機会がある言い回しなので、覚えておくといいでしょう。
カタルシスがない
「カタルシスがない」とは、「カタルシスを感じられない」を省略した言い回しです。映画や音楽を鑑賞したにもかかわらず心地よさが感じられず、すっきりとした気分になれないなど不完全燃焼な状態や、やりきれない感情を持つことを表します。
気持ちをすっきりとさせたかったにもかかわらず、もやっとした感情が残った際によく使われる言い回しです。
カタルシスを喚起する
「喚起(かんき)」とは、呼び起こすことを意味する動詞です。「カタルシスを喚起する」とは、浄化を呼び起こしてくれること。すなわち、心からすっきりさせてくれる事柄を思い起こさせることを意味しています。
「彼女の感情のこもった演技を見ていると、カタルシスを喚起させられた」というように、気持ちがプラスに引っ張られることで、すっきりするような状況で使われる言葉です。
カタルシスを用いた関連用語
カタルシスを含む代表的な言い回しを紹介していきます。
カタルシス効果
カタルシス効果とは、無意識に抑圧されている心のもやもやを外に出すことで、心が解放される効果のことです。日常生活でも、泣いたり、人に悩みを打ち明けたりすることで、心がスッキリしたという経験がある人もいるでしょう。
ビジネスシーンにおいても、相手との距離を縮めたり、信頼関係を築く際にカタルシス効果が利用されることがあります。
カタルシス療法
カタルシス療法とは、カタルシス作用が期待される精神療法の一つです。人間が持つ抑圧された感情は、蓄積したままでは精神に異常をきたしてしまう原因にもなるケースがありますが、話をしたり自由に連想したりすることで感情が発散される作用を利用しています。
カタルシスの類義語・言い換え表現
カタルシスのようなカタカナ語は、よく意味がわからないまま使いがちです。言い換えるとどのような言葉になるのかを覚えておくと理解にも役立つでしょう。
浄化
一般的によく使われるカタカナ語のカタルシスとは、抑圧された気持ちを「浄化すること」で言い換えられる言葉です。元々の意味である「排泄」として使われることはほとんどありません。
精神療法の手法として使われる場合を除くと、「浄化する」と言い換えればほぼ同じ意味を持たせられます。
浄化を意味する言葉・カタルシスを正しく理解しよう
カタルシスは、雑誌に掲載されている書評や映画の評論文などでしばしば登場します。日本語では「浄化すること」「精神の浄化作用」を意味する言葉としてよく使われるものの、よくわからないまま読み飛ばしている方も多い言葉でしょう。
元々は「排泄」を意味する言葉でしたが、古代ギリシアの哲学者アリストテレスによって現在の意味に変化しました。抑圧されたもやもやした気持ちが解消されることを端的に表しています。
カタルシスに代表される哲学由来の言葉やカタカナ語は、正しく意味を理解しきれず、なんとなく使っている方が多いようです。正確な意味をよく理解した上で活用しましょう。