コロナ禍がブライダル業界にも変化をもたらしている。ご祝儀は、事前のクレジット決済により非接触・混雑回避が図られ、式場の受付ではQRコードをかざすだけといったことが徐々に増えてきているそう。そのほか、円卓テーブルにはアクリル板が設置され、結婚式の引き出物やプチギフトでは除菌用アルコールが選ばれることもあるという。

今回はそんな変化をみせるブライダル業界を知るため、東京ビッグサイトで6月1日、2日に開催された「第23回 ブライダル産業フェア2022」を取材した。

  • ブライダル産業フェア2022が開催。コロナ禍に対応する企業の取り組みを取材した

■withコロナ時代、各社の施策とは?

衣裳、美容、服飾、ギフトなど、婚礼に関わる企業(79社)が出展した今回の「ブライダル産業フェア2022」。会場となった東京ビッグサイト 南3ホールは、平日にも関わらず多くの参加者で賑わった。

  • 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3丁目11-1)

ココチエが運営する「Dear」では、WEB招待状サービスを提案する。従来、新郎新婦は招待状作成のため、ゲストに住所を聞き、宛名書きをして、切手を貼って封入して……という手間やコストをかけていた。

WEB招待状は、項目に沿ってメッセージや写真を入力していくだけで完成する。送信方法もメール、LINE、Facebook、SMSに対応。相手の住所が分からなくても招待状を送信できる、というのが今風だ。

  • DearのWEB招待状のサンプル。結婚式、披露宴、1.5次会、二次会などに使える30種類以上のデザインを揃える

また、ご祝儀を事前にクレジット決済できるサービスも提供。これによりゲストは当日、受付でQRコードをかざすだけで入場できる。担当者は「芳名帳に記入する必要がなくなり、受付で待たされることもなくなります。コロナ禍になり、密を避けたいというニーズから利用が増えました」と説明する。

  • 受付ではQRコードをかざすだけ

カードタイプのカタログ式ギフトを提供するのはデジタルバードが運営する「hikica(ヒキカ)」。従来、ゲストは引き出物、引菓子、縁起物のセットを持ち帰っていたが、本サービスではカードを持ち帰るだけ。裏面に記載のQRコードからサイトにアクセスすることで、引き出物、引菓子、縁起物の3品を自由に選ぶことができる。

担当者は「新しい引き出物の贈り方を提案します。新郎新婦の負担を減らし、結婚式に招かれたゲストにも喜ばれるオンライン引き出物サービスです」と説明する。

  • 引き出物、引菓子、縁起物の3品をカード1枚にしたhikica

  • 引き出物などを選べるサイト

続いては、ファーストコレクションが手掛けるライフスタイルブランド「JAMES MARTIN(ジェームズマーティン)」。同社のブースでは、結婚式の引き出物や返礼品のカタログで人気の「ギフトセット」や、式場のエントランスに設置できる足踏み式アルコール噴霧器「ジェームズマーティン フットポンプ」などを展示した。

担当者は「食品成分のみで組成した安心安全なアルコール製剤です。結婚式場の各所に用意することで、ゲストの方にも安心して使用いただけます。30mlのボトルタイプならプチギフトなどにもちょうど良いサイズ感です」と話した。

  • スタイリッシュな見た目が特徴のJAMES MARTINは除菌用アルコールなどを展示

名古屋のフラワーショップ「PEU・CONNU(プー・コニュ)」では、押し花の加工サービスなどを展開している。押し花は、生花を乾燥させたうえで、当日のブーケの雰囲気そのままに額装するのが特徴。

「結婚式のブーケを押し花にすることができます。一度、すべての花びら、葉、茎などを解体しまして、適当な形や大きさに切り取り、額にあわせて正面を向いている花、横向きの花など、組み直す作業をしています」(担当者)とし、平面なのに、どこか立体的な表現ができるよう、心がけているとも説明してくれた。

  • 花びら1枚1枚を丁寧に配置して額装するPEU・CONNU

  • ドームの中にアレンジするドライフラワーも提供する。こちらは瞬時に空気を抜くことで、生花の色合いそのままに保存できるという

「ベースコーヒー」では、オリジナルデザインのドリップバッグを製作する。結婚式のほか、イベント、企業のノベルティなど、様々なオーダーに対応するという。会場に展示されていたドリップバッグには、新郎新婦のネームとイラストが描かれたものや、花束のイラストとThank youのメッセージが入ったものなどがあった。

世界15カ国ほどのコーヒー豆を用意しており、種類も自由に選択できるとのこと。ちなみに妊婦やカフェインが飲めない人のためにカフェインレスコーヒー(デカフェ)を選ぶことも可能だ。「豆をご指定いただくか、コーヒーの味のイメージでも良いのでお伝えいただければ、こちらで選んで焙煎してお届けします」(担当者)。

  • ベースコーヒーによるドリップバッグ。手土産に配るにはぴったり

「住化アクリル販売」では、アートカリグラフィーがデザインされたアクリル板を提案する。いまや会食の場に欠かせなくなったアクリル板。

同社は、アーティスティックなイラストが描かれた美しいアクリル板を製作。ブライダル向けにはドレスとヒールが描かれた絵柄も提供する。ちなみにラインナップには、透過率の極めて高い(どの角度から写真を撮っても反射しない)製品も用意している。

  • 住化アクリル販売の、デザイン性の高いアクリル板

これは結婚式場に限ったことではないが、アルコールを飲めない人に向けた上質なドリンクメニューが市場には決して多いとはいえないだろう。そこで「丸七鈴木商店」では茶葉の魅力を存分に引き出した、こだわりの「CRAFT BREW TEA(ガラスボトル入り緑茶)」を提案する。

「130種類ほどある日本茶のなかで、個性的な品種をピックアップしてボトリングした商品が人気です。実際のウエディング会場でも、新郎新婦さんから『このテーブルには飲めない人がいるので』ということで銘柄をご指定いただく機会が増えました。濃厚な抹茶のエキスをボトリングした『MATCHA WATER』など、ワインのように楽しめる日本茶を用意することで、ゲストをもてなすことができます」と担当者。

  • 丸七鈴木商店では、茶葉をたっぷりと使用したCRAFT BREW TEAを提供

"光を纏うウエディング"としてアピールするのは「八雲迎賓館」。特殊素材のLIGHT FORCER「オーロラリフレクター」を使用したウエディングドレスを提供し、カメラのストロボの反射で花嫁のドレスをオーロラのように輝かせる。

担当者は「お客様に驚きを提供したい、というのが開発のきっかけになりました。様々な用途で利用できる反射材をドレスに使用しています。ゲストの皆さんの記憶に残る挙式になることを期待しています」と説明した。

  • 八雲迎賓館では、光を纏うウエディングを提案。iPhoneのフラッシュで撮影しても見事に輝いた。ウェルカムボード、タペストリーも同様に光らせることができるという

■あの八芳園がDXを推進⁉

結婚式場としても有名な「八芳園」では、社内業務の抜本的なデジタル化とDX推進に取り組んでいるという。

担当者は「コロナ禍によりニューノーマルな時代が訪れました。いま多くの企業にテレワーク、オンライン業務が普及し始めており、そのため従来のビジネスモデルや社内システムの見直しが余儀なくされています。それは八芳園も同じです。そこで我々は、社内にDX推進室を立ち上げ、新事業として伴走型DX推進支援サポート『SOLVE EIGHT』をスタートさせました。私はもともと、ブライダルに関わってきた人間。だからこそ気付けるポイントがたくさんあります」と説明する。

  • 八芳園では、総合プロデュース企業として「SOLVE EIGHT」を提案。企業のDX化をサポートする

例えば、ブライダル業界にはエクセルで顧客管理を行っている企業が未だ多く存在する。部署によりフォーマットが異なり情報が共有できない、最新データが分かりづらい、手入力に膨大な時間がかかる――。現場では、そうした問題が日常的に起きているという。

そこで八芳園では、サイボウズの「kintone」を業務改善プラットフォームの軸に据えたサービスを提供。企業や式場にコンサルティングを行いながら、バックオフィス部門や営業部門をはじめとする、あらゆる業務の最適化を図っていく。先の担当者は「利用者と同じ目線で、企業の抱える課題を解決しながらDX化に導いていきます」と話していた。

  • サイボウズの「kintone」で企業の業務改善を図る。担当者によれば、ブライダル業界はDX化が後れており、紙やエクセルで顧客管理している企業が多いという