4人に1人は帝王切開で出産していることをご存じでしょうか。公的医療保険の対象になるため自己負担額はかかった金額の3割となりますが、差額ベッド代など公的保険が利用できない部分の金額は自己負担になります。少しでも安心して出産に臨めるよう、帝王切開と自然分娩の費用の違いと備え方について理解しておきましょう。

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■帝王切開とは

出産方法には、帝王切開と自然分娩があります。

自然分娩ではリスクが生じる場合や、トラブルにより急いで赤ちゃんを取り上げる必要がある場合に帝王切開を行います。

・予定帝王切開

逆子や多胎児妊娠など経腟分娩が難しい場合、発育がゆっくりで経腟分娩は赤ちゃんへの負担が大きいと判断された場合などに帝王切開による分娩を事前に計画します。

・緊急帝王切開

自然分娩を予定していたけれど、臍の緒が巻き付いてしまったり、母親の健康状態が急激に悪化してしまったりといった予期せぬトラブルが起こった場合に行います。

・帝王切開の確率は?

公益社団法人日本看護協会「2020 年 病院看護実態調査 報告書」によると、1件以上の分娩を取り扱った病院の平均帝王切開率は平均27.5%となっています。つまり、4人に1人以上は帝王切開で出産していることになります。

■帝王切開と自然分娩の違いは?

帝王切開か自然分娩かで利用できる保険が異なります。

○帝王切開の場合

・公的医療保険

帝王切開にかかる医療費は公的医療保険の対象となります。出産以外のケガや病気のときと同様、自己負担はかかった費用の3割です(負担割合は所得・年齢により異なります)。また、公的医療保険の対象となる費用は高額療養費制度も適用となるため、1カ月の上限額を超えた自己負担部分は払い戻されます。

・民間医療保険

多くの保険は帝王切開を給付対象としています。とはいえ、すべての医療保険の対象となるわけではないので、保障の対象を確認しておきましょう。

○自然分娩の場合

・公的医療保険

自然分娩は「病気ではない」と定義されています。そのため、公的医療保険の対象とはなりません。

・民間医療保険

ほとんどの民間の医療保険でも給付対象とはなりません。

■帝王切開にかかる費用は?

〇自然分娩にかかる費用

【 出産費用の状況(令和元年度速報値) 】

  平均値 中央値
全体 524,182円 509,910円
公的病院 511,444円 501,280円
私的病院 550,993円 526,336円
診療所(助産所を含む) 517,371円 506,900円
※室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を含む出産費用の合計額(妊婦負担合計額)
※参考:厚生労働省「出産育児一時金について」

自然分娩では約50万円の費用がかかります。

帝王切開の場合、この費用にプラスして手術費用などがかかります。

■帝王切開にかかる費用

帝王切開の手術にかかる費用はどこの医療機関であっても変わりません。

  医療費 自己負担額(3割※)
予定帝王切開 20万1,400円 6万420円
緊急帝王切開 22万2,000円 6万6,600円

※自己負担額は3割で試算。負担割合は所得・年齢により異なります。
※複雑な場合は医療費がさらに2万円が加算されます。
参考:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について」

自然分娩は入院期間が平均6日程度ですが、帝王切開の場合は入院がさらに長くなります。

その分、入院費や差額ベッド代、食事代などが増えることになります。自然分娩にかかる費用にプラスして10~15万程度を想定しておく必要があります。

■出産時に利用できる公的制度

出産にかかる費用は高額になりがちですが、出産時に活用できる公的制度が多くあります。自己負担を減らすためにも制度を理解して、漏れなく活用しましょう。

〇出産育児一時金

国民健康保険・会社の健康保険に加入している人が受け取れるお金です。被保険者の扶養家族が出産する場合は「家族出産育児一時金」として同様に受け取れます。

金額は子ども1人につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は40.8万円※令和3年12月31日以前の出産は40.4万円)です。多胎の場合は人数分を受け取れます。また、健康保険組合によっては付加給付が上乗せされる場合もあります。

直接支払制度を利用すると、病院が直接出産育児一時金を受け取れるので、大きなお金を用意する必要がなくなります。退院時に出産育児一時金を超えた額のみを病院に支払います。逆に、出産費用のほうが出産育児一時金より少ない場合は、出産後に加入している健康保険に請求し、差額を受け取ります。

〇出産手当金

会社の健康保険に加入している人が出産のために会社を休んだ場合に受け取れるお金です。

出産育児一時金は出産にかかる費用の負担軽減を目的としますが、出産手当金は産休中の生活保障を目的としています。

国民健康保険に加入している人や会社勤めをしている配偶者の被扶養者は対象となりません。

出産手当金は、出産予定日以前42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から、出産日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間に対して支払われます。実際の出産日が予定日よりも遅くなったときは遅れた期間分も支給されます。

出産手当金の支給額(日額)は、

支給開始日以前の12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

で計算されます。

一般的には、出産手当金は産後にまとめて受け取ることになります。そのため、産休中の生活費は別途用意する必要があります。都度手続きは必要になりますが、期間を区切って申請することも可能です。

〇傷病手当金

被保険者が病気やケガのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。 悪阻や切迫早産で医師が労務不能と判断したときにも傷病手当金の対象となります。

傷病手当金の支給額(日額)は 支給開始日以前の12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3 で計算されます。

〇高額療養費制度

同一月(1日から月末)にかかった医療費のうち、年齢・収入に応じて決められた自己負担限度額を超えた額が払い戻される制度です。

自然分娩の場合、高額療養費制度は使えませんが、帝王切開の場合は公的医療保険適用分については利用できます。

【 高額療養費制度の自己負担上限額(69歳以下) 】

  • 出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から) 」

あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けて、医療機関の窓口に提示すれば、窓口での支払額が自己負担限度額までとなります。

〇医療費控除

医療費控除とは所得控除の一つで、1月1日から12月31日の1年間に、本人または生計を一にする配偶者や子どもなどのために支払った医療費が一定額を超えるときに控除を受けられものです。

妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用も医療費控除の対象になります。ただし、加入している健康保険組合などから支給される出産育児一時金や家族出産育児一時金、または民間の医療保険から受け取った給付金などは医療費から差し引きます(出産手当金は差し引く必要はありません)。

■帝王切開に保険で備えるには?

帝王切開での出産となった場合、公的医療保険が適用となるうえ、出産育児一時金や出産手当金などの給付もあるので、金銭的な負担は随分と軽減されます。とはいえ、さらに安心を得たい場合には保険で備えておくこともできます。

〇医療保険

ケガや病気で入院・手術をした際に給付金が受け取れる保険です。帝王切開を給付対象としている保険に加入すれば、入院給付金・手術給付金が受け取れます。

〇生命保険に付帯できる医療特約

死亡した際に保険金が支払われる生命保険に特約として医療保障をつけて、帝王切開に備えることができます。医療特約だけの加入はできないので、死亡保障が本当に必要なのかをしっかりと見極めたうえで加入しましょう。

〇女性向け医療保険

女性特有の病気の保障を手厚くしている保険です。通常の医療保険に女性疾病特約として特約を付けられるものもあります。帝王切開が給付対象となっている保険も多いので、手厚い保障が得られます。

保障が手厚いのは安心ですが、保障が手厚くなるとその分保険料も高くなるので、適正な保障内容かどうかを確認しましょう。

■帝王切開に備えて保険に加入するときの注意点

保険への加入の必要性を感じたら、妊娠する前に早めに加入しましょう。

妊娠してからだと、加入自体ができない、もしくは、加入できたとしても部位不担保という特別条件がつくことがほとんどです。

特別条件がつくと、帝王切開にともなう手術や入院は保障の対象外となってしまいます。

最初の出産が帝王切開の場合、次の妊娠前に保険に加入したとしても無条件での加入は難しくなります。ほとんどの保険では過去5年以内に受けた手術を告知する義務があるので、部位不担保となる可能性が高くなります。

■まとめ

出産前はただでさえ不安になりがちです。帝王切開となると、身体的負担に加えてお金の不安もさらに大きくなるかもしれません。ただし、帝王切開は公的医療保険の対象となるので、自然分娩と比べて費用は増えますが、それほど高額になるわけではありません。実際に高額療養費制度を利用した場合、自己負担額はどれくらいになるのかを計算してみて、民間の保険が必要かを判断しましょう。

できれば、結婚や出産を意識したタイミングで、帝王切開に限らず、ケガや病気をした場合に公的制度と預貯金だけでは経済的に困るのかどうか、民間保険の必要性を確認しておきたいものです。保険での備えが必要だと判断した場合には、帝王切開も保障対象である保険に早めに加入しておくと安心して赤ちゃんを迎えられますね。