ソニーのハイエンドスマートフォン「Xperia 1 IV」がいよいよ発売となりました。ハイエンドにふさわしいスペックに加え、カメラでは望遠側の光学ズームを搭載した意欲作です。カメラ機能を中心に、Xperia 1 IVの実力をチェックしてみました。
デュアルSIMをサポートした最新Xperia
Xperia 1 IVの外観は、従来のXperia 1シリーズと共通しています。フラットなディスプレイと背面、縦に並んだカメラ、21:9の縦長ディスプレイ……と、基本的なスタイルは踏襲されています。
デザイン性は高く、過去機種とも統一感があるので、従来のユーザーであれば使い方に迷うことはないでしょう。縦長ディスプレイは、横幅が狭いので持ちやすく、大画面と可搬性の良さを両立させるデザインです。
大きな違いとしては、側面のボタンが1つ減りました。このボタンはGoogleアシスタントを起動するためのGoogleアシスタントボタンに割り当てられていたものですが、用途が限られる割に一等地にありました。これが廃止されたことでスッキリとして、誤操作も減りそうです。
これまで左側面にあったSIMカードスロットが本体底部に移動したのも違いです。Xperia 1 IVの大きな機能向上として、デュアルSIMに対応した点も大きなポイントです。これまでキャリア向けの端末はシングルSIMでしたが、Xperia 1 IVでは物理SIMとeSIMのデュアルSIMに対応した点は大きな違いです。
ディスプレイは従来と同じ4K対応の6.5型有機ELディスプレイ。HDRにも対応し、表示性能の高いディスプレイです。新たにリアルタイムHDRドライブが搭載され、動画の輝度や階調をリアルタイムに解析してHDR処理することで、明るい環境下でも映像表示が改善されるとしています。ただし、ディスプレイの最大輝度は従来と変わらず、直射日光下では明るさが足りない印象があります。
21:9のアスペクト比は、複数のアプリを使うマルチウィンドウでも使いやすく、持ちやすくて扱いやすいと感じます。従来通りイヤホン端子も備えているので、拡張性の高さも嬉しいところです。
もちろん、シャッターボタンを兼ねたカメラボタンも搭載。画面オフ時や別アプリ利用中でも、カメラボタン長押しでカメラが起動するのはとても使いやすい設計です。電源ボタン2回押しでカメラが起動するスマートフォンは多いのですが、配置的にも非常に使いやすいのがカメラボタンです。
光学ズームで高画質な望遠カメラ
肝心のカメラ機能は、従来通り縦に3つのカメラが並ぶトリプルカメラで、35mm判換算16mm、24mm、85~125mmという3つの焦点距離をカバーします。前モデルにおける望遠側の焦点距離70~105mmに対して、Xperia 1 IVは少し望遠寄りになりました。
この望遠カメラが光学ズームに対応しました。前モデルでは70mmと105mmの焦点距離を切り替えるという焦点切り替え式のレンズで、2つのレンズの間はデジタルズームで繋ぐということになっていました。
光学ズームになったことで、85~125mmの中間域もカバーすることができます。デジタルズームの処理が入らず、物理的に描写できるため、画質の向上が期待できます。光学倍率自体は1.5倍弱程度なので、デジタルズームでも画質にそう大きな違いはなさそうですが、特に動画撮影での画質向上が期待できるようです。
超広角カメラと望遠カメラはセンサーも変更されています。24mmのメインカメラと同様に、センサーが120fpsの高速読み出しに対応しており、リアルタイム瞳AFやHDR対応の20コマ/秒のAF/AE追従連写などが可能になりました。どのカメラを選んでも同じような撮影ができるのは重要なポイントで、このあたりは使いやすさが大幅に向上しました。
AF性能が高いので、半押しすると常にピント合わせを行ってくれるのは安心感があります。望遠カメラだとピント精度はやや落ちるようですが、速度も十分ですし、連写時も常にピント合わせをしてくれるので、数打てば当たる的な撮影をすれば、走る動物や子供でも撮影できるでしょう。
メインカメラは、前モデルとほとんど違いはなさそうで、1/1.7型Exmor RS for mobileセンサーを搭載して、画質は十分なレベル。メインカメラとしては色々なシーンでバランスの良い写真が撮影できます。それに比べると、センサーサイズの小さい超広角、望遠の2カメラは画質的にはやや劣りますが、幅広いシーンをカバーできる利便性の高さは強力です。
特に望遠カメラは、85mmというポートレートに最適な画角で、F値はF2.3と少し不十分ですが、それなりに背景もボケるので、人を撮影するときには扱いやすくなっています。ソフトウェア的にボケを作るポートレートモードなどとは異なり、細かい髪の毛の処理で問題が発生することもなく、自然で立体感のある描写。その上、125mmまで光学ズームできるので、撮影の幅が広がります。
望遠カメラ ワイド端の撮影例
望遠カメラ テレ端の撮影例
超広角カメラの撮影例
光学ズームの場合、ズームしても画質劣化を気にしないで済むというのが精神衛生上はいいでしょう。画質低下がゼロというわけではないのですが、デジタルズームに比べれば安心して使えるのが嬉しいところです。
テレ端の125mmは、24mmのメインカメラから見ると約5.2倍で、決して高倍率とは言えませんが、普段の使い方では便利な焦点距離です。10倍(240mm)ぐらいの光学倍率だと嬉しいのですが、さすがにこのサイズに埋め込むのは難しそうです。
スチルカメラ性能の強化は順当で、Xperia 1 IIIユーザーからすると、買い換えるほどではないかもしれません。ただ、今回は動画性能に大きな向上があります。まず、すべてのカメラで4K 120fpsのスローモーションを撮影できるようになり、新たにシームレスズームが可能になりました。
静止画とは異なり、16~125mmまで連続的にズームできるので、使い勝手は良くなります。レンズが切り替わるたびに派手にカクッと映像がずれるので、撮影を終了せずにワイド端からテレ端までズームできるという点が重要でしょう。
Xperia PRO-Iで登場したVideography Proも搭載されました。Xperia 1 IIIまでは動画撮影だとプロ向けのCinematography ProかPhotography Proのベーシックモードを使うしかなかったのですが、機能と使い勝手のバランスが取れたVideography Proによって、気軽な撮影から本格的な撮影までが可能になりました。
Videography Proは、YouTubeへのライブ配信機能を備えた点も新しいところ。ただ、これはスマートフォンからのライブ配信を行う人のためのものなので、それほど多くの人が利用する機能ではないかもしれません。YouTubeでの収益化をしていてライブ配信を行っている人などには良さそうです。
充実したパフォーマンスのハイエンド端末
性能面は、ハイエンドスマートフォンとして、SoCはSnapdragon 8 Gen 1、メモリは12GB、ストレージは256GB、ネットワークとして5GではSub 6だけでなくミリ波もサポート。ドコモ版はn3/n41/n77/n78/n79、n257をサポートします(後日アップデートによる対応を含む)。au版とソフトバンク版はn41/n79非対応の代わりに、n28に対応します。特にLTE周波数のNR化したバンドで微妙な違いがあるのは気になるところですが、それでも比較的広い周波数に対応しています。
今回、ベンチマークテストは行っていませんが、パフォーマンスに関しては特に問題は起きないでしょう。
新アプリとしてMusic Proというものも搭載されました。筆者は音楽制作に通じているわけではないのできちんと検証できていませんが、オンラインサービスと連携して、月額課金制ながら音楽制作に便利そうな機能が用意されています。4つ目の「Pro」アプリとして、ソニーらしいアプリで期待できそうです。
Xperia 1 IVは、他社のスマホカメラに比べると「忠実」なカメラを搭載したハイエンドスマートフォンです。スマートフォンとしての性能は問題なく、日常遣いからカメラ、動画のリアルタイム配信、ゲーム、ゲーム実況といったエンターテインメント性能も盛りだくさん。望遠カメラの光学ズームは、今後のスマホカメラの方向性として、さらなる機能強化を期待したいところです。