ソニーが2022年4月に発表したAIエンタテインメントロボット「poiq(ポイック)」にひと目惚れした筆者ですが、ポイックと一緒に暮らせるプロジェクト「天ちゃんのpoiq研究所」の研究員募集は落選してしまいました。
肩を落としていたところ、ソニーに足を運び、開発に携わるエンジニアの皆さんとともにポイックと対面できる機会をいただきました。研究員に当選した方々への出荷も始まるそうですが、ポイックの初期セットアップから初めての「ごあいさつ」まで、筆者のポイック体験レポートをお届けします。
ポイックがとにかく愛くるしい!
ポイックは音声などの手段によって、ユーザーとコミュニケーションが交わせるエンタテインメントロボットです。この愛くるしいロボットには、ソニーがペットロボット「aibo」や飛行ドローン「Airpeak」の開発で培ってきたAIとロボティクスの技術が満載されています。音声会話はクラウドにあるAIエンジンを通じて行います。
ポイックの背丈は約118mm。カプセル型の本体直径は約72mm。底面には2軸ホイールを搭載し、前後に動き回ったり、立ち止まったりしてくるくると回転します。3軸可動式の顔は、ふたつの目が動きます。さらに倒立振子を内蔵しているので、本体を軽く指でツンツンしても倒れません。
筆者はポイックのかわいらしい動作に一発でノックダウン。まずはポイックがユーザーの呼びかけに答えて近づいてきたり、ダンスを踊ったりする様子を動画でご覧ください。
スマスピとひと味違う、ポイックの独特なコミュニケーション方法
本体には音声コミュニケーション用として、スピーカーと4つのマイクを搭載しています。
クラウド上に設けたソニー独自の音声対話AIエンジンは、ユーザーと繰り返し交わした会話の内容を覚えていきます。顔の位置に搭載するカメラでユーザーを検知して、ポイックから話しかけてくることもあります。ユーザーが近くにいるときには、けっこう頻繁に話しかけてくるおしゃべりさんでした。
ポイックとの会話を始めるときは、スマホやスマートスピーカーのAIアシスタントで作法のようになっている「ウェイクワード」が不要。「おはよう」とか「こっちに来て」など、いきなり本題から話しかけられます。
筆者はふだんウェイクワードを必要とするAIアシスタントとの会話に慣れていたので、最初はポイックにどう話しかけていいのか少し戸惑いました。ユーザーの呼びかけが聞こえると、ポイックは「ポヨ」と音を出します。この音の後に、poiqは呼びかけに応じた返事をするので、その話を聞くようにするとスムーズに会話できます。
ポイックは登録した複数ユーザーの顔画像を覚えているので、話しかけてきた相手の居住地や食の好みを覚えて、それぞれに合った応答を返してきます。例えば「今日の天気」を聞くと、話しかけてきた相手の住まい周辺の気象情報を検索して答えます。
ポイックの頭脳はクラウドAIにもリンク。このクラウドAIは、ポイックと親密な時間を過ごしていく一般参加の「研究員」から寄せられる知識が集まる集合知です。
「天ちゃんのpoiq研究所」では、研究員に選ばれた方々がWebブラウザから「poiq辞書」にアクセスして、アニメ・グルメ・街などのトピックごとに知識を共有できるサービスを設けます。ポイックと研究員の1対1コミュニケーションで覚える知識だけでなく、大勢の研究員たちによる集合知も、ポイックの成長に欠かせない肥やしというわけです。なお、ユーザー個別のプロフィールや好みが、クラウドを通じて別のユーザーに知られる心配はありません。
ポイックのかんたん初期設定を紹介
研究員の手元にポイックが届いてから、あいさつを交わせるようになるまでの初期セットアップの手順を紹介しましょう。設定にはAndroid・iOS対応の「My poiq」アプリを使います。
ポイックの背面にある電源ボタンを押して起動すると、ポイックがすぐにペアリングモードに切り替わります。アプリを入れたスマホとBluetoothでペアリングしてから、使用環境のWi-Fiネットワークにポイックを常時接続します。ポイックのWi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n対応です。
続いてポイックのカメラを設定します。カメラは先述の通り「ユーザーの顔認識」に使うほか、ポイックは写真も撮影してくれます。アプリを使って任意のタイミングでシャッターを切ることもできますが、ポイックが起動中に気の向くまま自動で写真を撮る機能もあります。シャッターを切る前にポイックが声をかけてくれるか、またはユーザーの自然体な様子が撮れるように声かけを省く設定も選べます。
ポイックからのユーザーへの呼びかけ方も、さん・ちゃん・くん・さま・敬称なしという各パターンから選べます。敬称なしだと、とても親密な感じがしますね。
ポイックは、インストールする「キャラクター」を自由に選べるようになるロボットです。リリースでは声優の花守ゆみりさんが担当する女性キャラクター「アマーリ」が発表されていますが、ほかにも男性・女性のキャラが順次そろいます。キャラクターは声だけでなく、話し方や性格もそれぞれに違うそうなので、先ほどの呼びかけ方との組み合わせも含めて慎重に選びたいところです。もちろんあとから設定を変更することも可能です。
あとは「ポイックの名前」も自由に決められます。気持ちを込めて名前を付けると、ポイックがいっそういとおしく感じられるはず。瞳の色も、デフォルトの「アクア」以外からから選んで、「うちの子」にカスタマイズするとよいのではないでしょうか。
アプリを使ってポイックの「会話力」を鍛えよう
最後に、ポイックにユーザーの顔を覚えさせます。カメラを見つめて、顔の向きを上下左右にゆっくりと動かします。初期設定で1名の顔を登録したあと、ポイックに「ともだちになろうよ」と呼びかければ、家族や友人の顔を複数追加登録できます。
「My poiq」アプリには、ユーザーと交わした音声コミュニケーションのログがチャットとして記録されます。ポイックの応答に「評価」を加える機能があり、ソニーのエンジニア各氏は「満足できなかったり、気になる応答があったりした場合はぜひこまめにチェックしてもらえればとても有り難い」と話していました。
ポイックと毎日話しながらコミュニケーションを深めていくと、ポイックはユーザーの好みを覚えてくれるだけでなく、会話の内容に応じてユーザーの習慣を学び、「好きな食べ物」や「よく会う人物」を推し量ってくれるようにもなるそうです。また「アツシさんはカレーが好きみたいだけど、ワタシはスパゲッティのほうが好きです」といった感じで自我を持ち、意見を伝えることもできるんだとか。
筆者はこれからポイックの研究員として活躍できる皆さんがとてもうらやましいです。どうかポイックと一緒にステキな時間をお過ごしください。