iPhoneをはじめとするアップル製品の次期OSや新サービスの内容が公開される「WWDC22」(世界開発者会議)の開幕が6月7日(日本時間)に迫りました。新機能や新技術を積極的に自社アプリに取り入れてユーザーから高い評価を得ている日本のデベロッパーも、熱い期待を寄せていました。

  • 日本時間の6月7日に開幕するWWDC22。今年もすべてオンラインで実施するものの、世界各国の限られたデベロッパーをアップル本社に招き、基調講演を一緒に見る試みが用意されている

ARKitやSharePlayで物件選びに楽しさを「LIFULL HOME'S」

賃貸住宅など物件探しの情報サイト「LIFULL HOME'S」(ライフルホームズ)で知られるLIFULL(ライフル)。iPhone用アプリ「LIFULL HOME'S」は、Webブラウザー版にはないAR(拡張現実)やFaceTimeのSharePlayを用いた新機能をいち早く盛り込み、最新テクノロジーで物件選びのスタイルを変えたことでユーザーから支持を集めています。

ARを利用した機能は、周囲の街並みにカメラを向けると募集中の物件がARで重ねて表示される「かざして検索」、物件の見学中に気に入った装備を見つけたらARで評価を載せられる「AR評価」、室内の角を指定していくだけで部屋の間取りが作れる「AR間取り作成」などを搭載。FaceTimeのSharePlayを利用した機能を使えば、物件を見ながら別の場所にいる家族や友人と画面を共有し、気に入ったポイントや感想などのメモを手書きで書き込みながら相談できます。

  • 「LIFULL HOME'S」のアプリ。ARを用いた機能を多く搭載しており、気に入った装備の評価をARで重ねて表示できる「AR評価」(左)や、周囲の街並みにカメラを向けると物件の存在をARで重ねて表示する「かざして検索」(右)などが利用できる

  • FaceTimeのSharePlayを利用した機能も搭載。画面を家族などと共有し、手書きでメモなどを書き込める

特筆できるのが、これらの機能はOSのアップデートで搭載されるといち早くアプリに追加したこと。LIFULLでは、WWDCで発表された新しい機能や技術を、いち早くユーザーに使ってもらいたいと考えています。それもあり、いざWWDCが始まると、エンジニアやプランナーなどアプリ開発の担当者が積極的に情報収集や議論をするそうです。

これまでのWWDCでもっともインパクトがあったのが、ARKitが発表された2017年。「ARを使えば、これまでにない体験や楽しさを物件選びに提供できる!」と全員で驚いたそう。「新しい機能は前例のない体験をユーザーにもたらしてくれますから。今年もWWDCでどのような発表がなされるのか楽しみにしています」と期待を寄せていました。

CarPlayでスマホナビの常識を超える「カーナビタイム」

スマホ用のカーナビアプリとして抜群の知名度と人気を誇るのが、ナビタイムジャパンの「カーナビタイム」です。「高速道路をよく使う」などユーザーの好みに寄り添った経路を出したり、タクシーなどのプロドライバーに向けたバージョンでは交差点名や駅のロータリーを細かく表示するなど、独自の工夫が評価されています。

各社からさまざまなカーナビアプリが登場するなか、カーナビタイムが注力しているのがCarPlayとの連携です。2018年のWWDCでCarPlayが発表されて以来、ナビゲーション機能を動かしながらiPhone内の音楽を再生できるようにしたり、ナビゲーションの画面をCarPlay側に任せてiPhoneはドライブレコーダーとして使う、といった機能強化を図っています。

  • CarPlayで利用中のカーナビタイムアプリ。専用のカーナビゲーションのような使い勝手や視認性を提供してくれる

  • ナビゲーション画面はCarPlayに任せ、iPhoneをドライブレコーダーとして使うことも可能

アプリ開発者の立場で見ると、iOSなどアップル製品のプラットフォームは魅力が多いといいます。CarPlayなどの新機能が発表されると、サンプルコードが豊富に用意されていて、自社アプリに実装するのが容易なんだそう。また、以前はCarPlayの画面内に交差点などの案内画像を出すことはできなかったのですが、利便性を高めるために表示したい…とアップルに要望を送ったら、しっかり対応してくれたことも。「何より、iPhoneは日本でユーザー数が多いのが魅力ですね。将来的には、世界的に使われるサービスになることを目指します」と意気込みを語ります。

  • 交差点や高速道路の分岐にさしかかると、画面内に交差点などの案内画像が現れる

今年のWWDCについては、やはりCarPlay関連の新技術や新機能に注目していると語ります。さらに、標識や地名などの文字を認識するテキスト認識関連のアップデートや、AirTagがサードパーティー製アプリで使えるようにAPI公開がなされるか、などの点にも期待しているそうです。

XRのバーチャル空間を日常のものにする「STYLY」

YouTubeを使って動画を配信したり再生するように、メタバースのバーチャル空間を制作して配信したり体験できるプラットフォーム「STYLY」を提供しているPsychic VR Lab。「これまで、ウォークマンで音楽を身にまとい、iPhoneでコンピュータを身にまとうようになった。5G時代になるこれからの10年は、XRのバーチャル空間を身にまとうようになる」と、近未来の将来像を描きます。

「STYLY」のコンセプトムービー

STYLYのスマホアプリは、制作に特化した「STYLY Studio」と、再生に特化した「STYLY Gallery」の2種類があります。それぞれのアプリはiPhone用とAndroid用を用意していますが、iPhoneだけが持つSharePlayやAR Kit、iPhone 13 ProやiPad Proに備わるLiDAR(ライダー)センサーを評価しており、今後はiPhone限定でこれらに対応した機能を追加する考えもあるそうです。

  • 「クリエイティブな力は持っているが、エンジニアリングする力がない人でも使ってもらえるように」と生み出されたSTYLY。柔軟な頭を持つ小学生にも使ってほしいとしている

WWDCには、やはりXR関連の機能やハードウエアの登場を期待しているとのこと。以前から噂されているゴーグル型デバイスがお披露目されるかどうか、基調講演を楽しみにしたいと思います。