実際に同物質をアクリル樹脂に添加したフィルムに、静電気発生ガンからコロナ放電を照射したところ、緑の発光の観測に成功。発光したフィルムの表面電位分布測定から、コロナ放電の照射によって形成された帯電と発光領域とが一致することを確認。静電気発光では電荷が注入された部分に発光が生じることが明らかにされた。
さらに、摩擦と剥離によって静電気を発生させるヴァンデグラフ型静電気発生器に指を近づける実験も実施。指と静電発電器とが最短距離となる場所で発光が観察されたとするほか、指を動かすと、それに応じて発光場所が移動することも確認されたという。このメカニズムは最初の実験とは逆で、静電気発生器から指に向かって電荷が放出されたときに発光が起きるというものであり、開発された静電気発光材料は、材料が帯電するときと放電するときの両方で発光現象が起きることが示されたとする。
静電気発光の詳細なメカニズムとしては、(1)紫外線から(可視光の)青色までの波長領域の光を吸収してキャリアが伝導帯に励起され、(2)一部のキャリアは欠陥準位に捕捉される。外部から電荷が発光材料に注入されると、(3)欠陥準位に捕捉されたキャリアが伝導帯を伝って移動し、(4)Eu2+に由来する発光が観測されたと考えられるとしている。
また同じ化学組成で、結晶構造が異なるSrAl2O4:Eu2+において静電気発光する材料としない材料があることも確認されたという。これは静電気発光材料において、材料設計をすることで、静電気によって発光強度を調節できる可能性を示す成果だとする。
今回見出された静電気発光を示すセラミックス微粒子は粒径が数μmほどであり、電源を必要とせずに静電気に由来する電荷を検知して光を出力することができる小型の静電気センサーであり、これを対象物に塗布することでセンサー機能を持たせることが可能となることから、例えば自動車やドローンなどの移動する3次元的な対象物の静電気をカメラでリアルタイムに遠隔で測定することなどができるようになると研究チームでは説明している。
なお、今後は、静電気発光のメカニズムの解明を行うとともに、さまざまな環境に柔軟に対応する静電気の可視化センシング技術の技術的基盤を確立するとしている。また、エレクトロニクスや次世代モビリティ分野でさまざまな機器や製品を対象とした、静電気発生のモニタリングおよび静電気対策の実証試験を行う予定としており、連携可能な企業の募集も行っていくともしている。