東北大学は6月2日、シリコン(Si)(111)面7×7構造のコーナーホール(単位格子の四隅に空いたフラーレンC60と同程度の大きさの穴)内に、単一の銀(Ag)原子が長時間(4日と7時間)にわたって閉じ込められたままであることを明らかにし、その表面を約150℃に加熱すると、数分以内にAg原子がコーナーホールから押し出され、閉じ込めと拡散のプロセスが温度に依存することを確認したと発表した。

同成果は、スウェーデン・ルンド大学MAX IV研究所のJacek R. Osiecki博士(元・東北大 理学研究科 博士課程)、東北大大学院 理学研究科の須藤彰三名誉教授、英・リンカーン大学のArunabhiram Chutia博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

これまで、シリコン(Si)結晶は数多くの研究がなされ、Si(111)表面だけを見ても多くの実験と理論的研究の対象となってきたが、何らかの理由で1つの吸着サイト、コーナーホール(CH)はほとんど研究されてこなかったという。CHは、そのサイズ、位置、化学的性質、および周期性のために魅力的であるように思われ、CH内の外来原子をより詳細に研究する必要があるとする。

そこで研究チームは今回、報告の多いAg原子に着目し、Si(111)-7×7構造上へAg原子を蒸着させ、熱拡散過程を通してCHへの吸着・脱離過程を走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、原子1個1個を追跡しながら観察することにしたという。さらに、第一原理計算により吸着エネルギーが計算され、STM像のシミュレーションも行われた。