普段の生活やビジネスシーンの会話で当たり前に使っている言葉であっても、その正しい意味を理解できていないというケースも少なくありません。抽象的という言葉もその一つで、よく使われているものの、正しい意味を聞かれたら答えられないという人もいるでしょう。
本記事では抽象的の意味や正しい使い方を、例文とともに詳しくご紹介します。
抽象的とは?
抽象的という言葉は、日常会話でもビジネスシーンでもさまざまな形で使われています。例えばビジネスシーンで上司から「その案は抽象的だね」といわれたとしましょう。この場合、明確な意味がわからなければ褒められているのか、とがめられているのかもわかりませんね。
また、正しい意味を理解していなければ、こちらが使う場合も相手に意図を伝えることができません。ここではまず抽象的という言葉の基本的な意味や使い方などを詳しくご紹介します。
抽象的の意味
抽象的という言葉には大きく分けて2つの意味があります。
1つ目は多くのものの中から共通するものを抜き出し、一般化して考えることです。例えば、人生の目的について考える際に「幸せになりたい」というのは抽象的な考えであるといえるでしょう。
同じ「幸せ」にもさまざまな形があります。仕事で成功する、多くの人に認められる、家族に恵まれる、おいしいものを食べる、これらはどれも「幸せ」につながります。このように、多くの要素の中から共通するものを抜き出して考えることを「抽象的」と表現するのです。
2つ目の意味は、物事の実態や実際の姿から離れていて、具体性に欠けるというものです。この意味の場合、ネガティブなニュアンスで使われることが多く、例えば議論に具体性がなく結論がなかなか出ないことに対し、批判的な意味合いで「抽象的な議論」と表現することがあります。
また、形状やデザインなどに対しても抽象的という表現を使うことがあります。この場合、モチーフや対象となる形をそのまま表現するのではなく、特定の要素を抽出して再構築したものを指します。絵画などにおける抽象画もこの考え方によって描かれたもので、対象をそのままの形で写さないものを指します。
抽象的の使い方
先ほども少し触れましたが、抽象的はネガティブなニュアンスを含む場合と含まない場合があります。
共通するものを抜き出して一般化して考えることを指す場合は、物事を考える上で抽象的な考え、視点を持つことによって本質が見えてくることもあるため、ネガティブなニュアンスは含まない表現になるでしょう。
一方で具体性に欠けるといった意味で使う場合は、ネガティブなニュアンスになることが多い傾向にあるといえます。
抽象的という言葉は複数の意味があって、使い方やシーンによって変化します。そのため、会話などで使う場合、前後の文脈やシーンにあわせて正しい意味を考えることが大切です。
抽象的を使った例文
抽象的にはさまざまな使い方があります。しかし、具体的にどのように使えばいいのかわからないという人も多いでしょう。
ここでは例文を挙げながら、抽象的の具体的な使い方をシーン別にご紹介します。
ビジネスシーンでの使い方
抽象的という言葉はビジネスシーンでもよく使われる言葉です。ここでは例文を挙げながらビジネスシーンでの使い方をご紹介します。
・物事を抽象的にとらえることによって本質が見えることもある
・抽象的な議論ばかりで結論が出ない
・抽象的な提案では承認のしようがない
抽象的という表現はポジティブなニュアンス、ネガティブなニュアンスの両方で使われる言葉です。使い方を誤ると相手に失礼になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
日常会話での使い方
抽象的という言葉は日常会話でも使われます。ここでは普段の会話やカジュアルなシーンなどでの使い方をご紹介します。
・「何かおいしいものが食べたいな」
「抽象的だね、もう少し具体的に教えて。和食? 洋食? それともスイーツとか?」
・この絵画は抽象的な表現で描かれている
抽象的の類語
「抽象的」はさまざまなシーンで使うことができる言葉です。しかし、類語を知ることによって、さらにコミュニケーションで生かしやすくなるかもしれません。
ここでは抽象的の類語の中でも代表的なものをピックアップしてご紹介します。
概念的(がいねんてき)
さまざまな物事を大まかにとらえ、把握することを意味します。共通するものを抜き出して一般化するという意味で、抽象的という言葉を使う際の類語にあたります。
それでは「概念的」の使い方を例文付きでご紹介します。
・世の中の仕組みを概念的に把握する
・概念的に物事を考える
・そのプランは概念的には難しくない
概念的も抽象的と同じようにさまざまなシーンで使うことができる言葉です。
曖昧(あいまい)な
主な意味としては、物事や態度がはっきりしない、あやふやであることを表す言葉です。具体的ではない、具体性に欠けるといった意味で抽象的という言葉を使う場合の類語にあたりますので、ネガティブな印象です。 抽象的よりもわかりやすく、カジュアルに使いやすい言葉でもあります。
それでは使い方を例文でご紹介します。
・曖昧な表現ばかりで意図が伝わらない
・物事には曖昧にしておいた方がいいこともある
・そんな曖昧な態度では問題を解決できない
抽象的の対義語
抽象的には反対の意味を持つ対義語もいくつかあります。対義語も頭に入れておくことでさらに表現の幅を広げることができるでしょう。ここでは抽象的の対義語を例文とともにご紹介します。
具体的(ぐたいてき)
具体的は、はっきりとした実体のあるさま、個々の事柄に即しているという意味があります。抽象的は「具体的ではない、具体性に欠ける」という意味もあるため、対義語といえるでしょう。
それでは使い方を例文でご紹介します。
・具体的に説明することで説得力を持たせます
・議論では具体的な意見を出すことが重要だ
・具体的な提案をしてほしい
具象的(ぐしょうてき)
具象的は、はっきりとした、わかりやすい形を持つという意味です。美術作品やデザインなどに多く用いられる表現で、対象物をそのままはっきりと写したものを表します。抽象画の反対で、具象画という言葉を聞いたことのある人もいるでしょう。
それでは具象的の使い方を例文でご紹介します。
・彼の絵は具象的でとてもわかりやすいものだ
・このデザインはモチーフを具象的に表したものだ
・私は抽象画よりも具象的な作品の方が好きだ
抽象的の英語表現
抽象的という言葉はさまざまなシーンで日常的に使われています。しかし、英語表現となるととっさには出てこないかもしれません。
抽象的は英語で「abstract」と表現します。抽象的な思考をすることは「 think in the abstract」、抽象的な観念は「an abstract concept」などといいます。
・Your speech is too abstract to understand for me.
(あなたのスピーチは抽象的過ぎて、私には理解するのが難しかった)
抽象的の意味を簡単に解説しました
「抽象的」にはあらゆる物事の中から共通するものを抽出して一般化する、または具体性に欠けるといった2つの意味があります。ポジティブなニュアンスとネガティブなニュアンスの両方で使われます。
使い方によって意味が変わる言葉でもあるため、シーンにあわせて適切に使い分けることが大切です。