小倉百人一首競技かるた「名人vsクイーン ドリームマッチ」が22日、文京シビックセンター(東京都文京区)にて開催された。競技かるたの男性トップ選手(名人)と女性トップ選手(クイーン)の真剣勝負とあり、会場には多くの一般観覧者が来場。なお熱戦の模様はNTT東日本、NTTe-Sportsの協力のもと、YouTubeとゲーマー向け総合コミュニケーションプラットフォーム「eXeLAB」にてライブ中継が配信された。
競技かるた発祥の地・文京区
今回の催しは「かるたの街文京」宣言をしている文京区の主催によるもの。関係者によれば、明治時代、文京区本郷にキャンパスのある東京大学の学生たちが始めた「かるた競技の会」が、現在の競技かるたやかるた会に繋がっているという。
夢の舞台は、文京シビックセンター(26階スカイホール)に設けられた。会場には畳が敷かれ、そこに登場したのは着物姿の第68期名人位の川瀬将義 六段と、第66期クイーン位の山添百合 八段。会場には約50名ほどの観覧者が訪れた。
中継用に4台のカメラが用意されたほか、別室には実況と解説者がスタンバイ。今回はYouTubeとゲーマー向け総合コミュニケーションプラットフォーム「eXeLAB」にてリアルタイムで大会の様子が中継された。ICT環境の構築やライブ配信支援はNTT東日本が、撮影およびライブ配信は「eXeLAB」の提供元であるNTTe-Sportsが担当、また両社で公式SNSによる情報発信も行っている。
NTTe-Sportsの担当者は「eスポーツで培ってきたカメラワークなどを活かした配信を行います。競技かるたは、とてもスピードが速い。そこでできるだけコマ落ちしない映像で、視聴者にスピード感、臨場感を伝えていけたら」と意気込む。
開催に先立ち、文京区の成澤廣修区長は「競技かるた発祥の地として、今回のドリームマッチに臨みます。今後も全日本かるた協会と協力して、様々なイベントを開催していければ」と挨拶。また、全日本かるた協会の松川英夫会長は「今日は見応えのある対戦になると期待しています。白熱した競技を楽しんでもらえたら」とし、今後は競技かるたの「見て楽しむ」側面も育んでいきたい、と説明した。
痺れるデッドヒートに!
競技に先立ち、一般観覧者、およびメディアには素振りの練習を間近で撮影することが許された。両者とも腕の振りが鋭く、カメラの連写でも追いつかない。
そして、いよいよ競技が開始する。シーンと静まり返り、より一層の緊張感が増す会場。
序盤から一進一退の攻防が続いた。上の句を読み始めると同時に、手を振り抜く両者。札は上から抑えることもあれば、横に払うこともあり、また指先で向こうに飛ばすこともあった。左の札を取りにいくと見せかけ、右の札を取るような場面も。そして空札のときはフェイントを交えつつ、素振りの確認をしている。様々な駆け引きがあるようだ。
観客席では大人も子どもも身を乗り出しつつ、固唾を呑んで見入っている。声は出せないものの「この句は、あれだね」と言わんばかりに、目を見合わせて微笑む小さな姉妹の姿も。
小刻みに身体を揺らしながら、いつでも瞬発的に動けるように調整を続ける両者。ときにうなずき、または首を左右に振る様子からは「その調子、その調子」と自分に言い聞かせているようにも感じる。ひとつの札を取るときに、複数の札を派手に撒き散らすこともしばしば。ときには札が客席にも飛び、また審判員の座布団の下にも潜り込む。
競技開始から25分が経ったところで、まだ札は半分くらい残っていた。これが40分が過ぎ、50分が過ぎて残りの札も少なくなると、さらに緊張感が増してくる。たとえば「君がため 惜しからざりし 命さへ...」と歌うところ、「き(ki)」のkを発音するか否かというタイミングですでに腕を動かしている。終盤は名人がリードし、4点差まで離したところでクイーンが追いつく、という展開が何度か続いた。残り5枚となったところで1点差、残り3枚というところで同点に。最終盤、ついにクイーンが逆転するが、再び同点に。60分を超える熱戦となったが、最後は1枚差で名人が勝利した。
対戦後の対談で、川瀬名人は「序盤はお互いに硬くて、緊張していました。お手つきも、たくさんしてしまった。緊張するなかでも、精一杯やれたのではないか」とコメント。勝てた要因として、終盤に「何が読まれるか」「どの札が残るのか」の読みが当たった、と話した。また山添クイーンは「普段、あまり緊張はしないほうなのに、今回は緊張しました」。対戦中も焦らない、我慢、と自分に言い聞かせていたと振り返った。
ちなみに対戦後、文京区と全日本かるた協会は「相互協力協定締結式」を実施。文京区の成澤廣修区長は、かるた文化のさらなるサポートを約束した。