Microsoftの開発者向けイベント「Build 2022」が無事終了した。Microsoft CEOのSatya Nadella氏によれば、Build 2022で発表したアップデートは50を超えるそうだ。その中から消費者向けの情報をピックアップしたい。
まずはMicrosoft Storeの強化。アプリの検出率を改善し、2022年第1四半期の利用率は前年同期比で50%アップした。また、Microsoft Store Adsと呼ばれる広告システムも数カ月内に導入する。関連する大きなトピックはAmazon Appstoreプレビューの拡大だろう。2022年内にフランス、ドイツ、イタリア、日本、英国の5カ国に拡大し、必然的にWindows Subsystem for Androidプレビューも年内に利用可能になる。
次はProject Volterra(ボルテラ)と呼ばれる開発者向けデバイス。SnapdragonのプロセッサーとNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載し、Visual StudioやWSL(Windows Subsystem for Linux)など一連の開発ツールを使用できる。詳細は後日発表の予定だが、目を引くのは本体のコンパクトさ。M1 MacやMac miniを彷彿とさせるが、選択肢が少なかった新たなARMデバイスとして注目している。
Project Volterraを魅力的にしているのはNPUの存在だ。Microsoft Technical Fellow, Windows+DevicesのStevie Bathiche氏は、「NPUはWindows PCの不可欠な要素になる」と述べ、最新鋭のフェイストラッカーを披露した。同氏によれば複雑かつ高密度のAIモデルを使用しており、NPU未搭載のハイエンドPCではCPUが20ワットも消費するが、Project Volterraの利用率は145ミリワットにすぎない。
通常はクラウド経由で利用するWindows 11の字幕機能もローカルで実行可能だ(とMicrosoftは説明しているが、この機能は音声認識エンジンと言語データをダウンロードしている)。NPUがコンシューマーレベルまで降りてくるのかどうかはともかく、同氏の発言のように「NPUはWindowsのエコシステムの中で普遍的なものになる」可能性は高い。
ほかにも2022年後半から、Windows 11のウィジェットをPWA(プログレッシブウェブアプリ)として開発可能になり、近々リリース予定のWindows App SDK 1.1は、WinUI 3のFluentビジュアルマテリアルやデスクトップウィンドウAPIの更新など多くの機能を刷新した。これらは「Windowsで次世代のエクスペリエンスを大規模に構築」で語られた内容だが、基調講演に目を向けると、いくつか興味深いトピックもある。
そのひとつつがMesh for Microsoft Teams。メタバースをMicrosoft Teamsに取り込んだ形だ。こちらは2022年内の提供を予定しているが、Webカメラに映る人物の仮想化だけではなく、仮想キャンパスや仮想会議室による会話も可能だという。
今回、過去のBuildと比較するとWSLやWindowsターミナルのような大きなトピックはなかったものの、Project Volterraの存在感は大きい。一連の発表内容はBook of Newsで確認できる。2022年は日本語版も用意されたので、一読してみてはいかがだろうか。