さまざまな商品の値上げラッシュが続くなか、静観を保っているのがアップル。値上げどころか、5月いっぱいはアップル製品の下取りサービス「Apple Trade In」の下取り金額を大幅に増額するなど、異例の大盤振る舞いの状況です。しかし、この下取り増額は「心苦しいのですが、今後値上げを予定しています。値上げの前に下取り増額を実施しますので、買い替えを検討しているなら今のうちがいいですよ…」というアップルの隠しメッセージなのかもしれません。もし値上げを実施するとしたら、“Xデー”はズバリ6月7日のWWDC開幕のタイミングになるでしょう。

  • 急激な円安や世界情勢の変化、半導体不足、原材料の高騰などの状況が続くなか、アップルはかたくなに製品の値上げをしていない

下取り金額の大幅アップは値上げの予告なのか

急激な円安や世界情勢の変化、半導体不足、原材料の高騰などを受けて、さまざまな商品が続々と値上げされています。特に、iPhoneなどのアップル製品はすべて輸入品なので、急激な円安の影響をモロに受けているのは間違いありません。そのような状況でも、アップルは販売中のiPhone 13シリーズやiPad、Macなどの商品を値上げせず、発売当時の価格に据え置いて販売しています。

しかし、アップルも慈善事業で製品を販売しているわけではないため、採算が悪化するとなれば値上げする可能性もあります。過去には、為替が大きく変動したタイミングでiPhone 6を途中で値上げしたことがあります。ところが、今回は2021年9月末のiPhone 13シリーズ販売開始時から20円近くも一気に円安になっているのに、何も動きがありません。それどころか、5月11日には下取りサービス「Apple Trade In」の下取り金額の増額を始めました。

Apple Trade Inは、アップル製品を購入する際に古いデバイスを下取りに出すと、販売価格から下取り分が割引になるサービス。今回、iPhoneやiPad、Mac、Apple Watchの下取り金額が最大1万円も上乗せされ、おトクに最新機種へ買い替えられるようになっています。

  • Apple Trade Inの下取り金額増額。「5月31日まで」と赤字で記載されている

本来は製品を今すぐにでも値上げしたいはずなのに、真逆の行動に出たのは、何かしらの意味があると考えられます。

国内のスマートフォン市場で50%超の圧倒的なシェアを持つiPhoneなど、アップル製品は日本市場で高い人気を集めています。アップルも当然そのことを承知していて、日本市場を重要視しているのは確かなようです。しかし、日本人は商品の値上げに特に敏感で強い嫌悪感を示す傾向があるので、iPhoneなど販売中の商品をいきなり値上げするのはアップル製品に対する消費者の印象を悪くする…と見ているのではないでしょうか。

  • iPhoneは日本で絶大な支持を集めている

値上げのタイミングを吟味したアップルが、6月7日(日本時間)から開幕するWWDCを好機と捉えた可能性があります。WWDCはアプリ開発者向けのイベントですが、基調講演でMacなどの新製品が発表されることがあります。新製品の発表を受けてアップルのWebサイトを更新する際、合わせて既存製品の価格を見直す…という流れはあり得そうです。さまざまな新機能が追加される新OSの概要が発表されるタイミングなので、「秋にこれほどの機能強化が図られるのなら、多少の値上げもやむなし」と理解を示す人も少なくないでしょう。

既存製品を単純に値上げするだけでは日本のファンに申し訳ないので、値上げの前に製品をおトクに手に入れられるよう、Apple Trade Inの下取り増額を実施した…という流れではないでしょうか。

もちろん、アップルが値上げを実施しない可能性も十分に考えられます。しかし、現行のiPhoneやiPad、Macなどはどれも完成度が高く、古い機種からの買い替えを検討している人は下取り増額が適用される5月31日までに決断するのがよいかもしれません。

  • 現在、無印iPadは39,800円という手ごろな価格で購入できる。手ごろな価格で買えるうちに入手しておくのがよいかもしれない