日本HPが今年2月末に発表していたゲーミングディスプレイの新製品「OMEN 27u」。すでに展開中のWQHDモデル「OMEN 27i」から4Kへと高解像度化している点が特徴で、HDMI 2.1端子の搭載で家庭用ゲーム機との組み合わせにもピッタリな製品に仕上がっています。

  • コンソールでもPCでも、ブッ飛んだ体験を。

筆者は自腹で買ったOMEN 27iを愛用していることもあり、とても興味があったOMEN 27u。今回この新製品を、ゴールデンウィークを大きくまたぐような日程でお借りすることができたので、OMEN 27uと過ごすうちに感じたことについてお送りします。

なにか変わった?と思うほど外観はそっくり

まずは製品そのものについてご紹介。主な仕様としては27型サイズで、解像度は4K UHD(3,840×2,160ドット)、リフレッシュレートは144Hz、応答速度は最速1ms(GTG)。「IPS Oxide」なる聞き慣れないパネルを採用しており、DCI-P3を95%カバーする色再現性を実現。赤やオレンジなど暖色の表現に優れるほか、低リフレッシュレート駆動時にもちらつきにくい点が特徴とのこと。Display HDR 400に準拠する高輝度/ハイダイナミックレンジに対応しつつ、パネルの発熱を小さく抑えられるとしています。

とはいえ、OMEN 27iとスタンドを含む外観はほぼ共通です。スタンドの設置についてはすでに掲載している前モデルのレビュー記事をご覧いただくとしまして、今回は別途用意したディスプレイアームを使ってみました。

  • パッケージの様子

  • 大きい面がガバリと開くタイプで、内容物へのアクセスがかんたん

  • パネル部はスタンド用のアタッチメントが装着済みで、スタンドも組み立てられた状態で箱に入っています。ネジを2本締めればすぐに設置できます

  • パネルを取り出したところ。ジョイスティックと電源ボタンは背面です

  • 付属のACアダプター。無骨な汎用品から、ノートPCに同梱しているようなおしゃれなタイプに変わっています。出力は最大135W

  • アームを使うには、スタンド用のアタッチメントを外す必要があります。まずは後ろのパネルに指を突っ込んで外し……

  • シルバーのパーツを留めているネジと、外側のVESAマウント用のネジを外します

  • 外したところ

  • 後はディスプレイアームのマウントを据え付けるだけ

もしディスプレイアームを使う場合は、VESAマウントが“■”ではなく45度傾いた“◆”になっている点が要注意。ピボット設置に対応している製品を選択する必要があります。

映像出力端子にはDisplayPort 1.4×1、HDMI 2.0×1、HDMI 2.1を備え、PCやゲーム機の性能を全て活かして接続できます。PCはDisplayPortに繋いで4K/144Hz、PlayStation5はHDMI 2.1に繋いで4K/120Hz、Nintendo SwitchはHDMI 2.0に繋いでフルHD/60Hz、のような使い分けにピッタリ。PCとの組み合わせではUSBハブとしても使えますが、KVM機能はありません。

  • 端子部。左からヘッドホン出力、HDMI 2.0、HDMI 2.1、DisplayPort 1.4、電源入力

  • 反対側の端子部。左からセキュリティスロット、USB Type-C、USB-A 3.2 Gen2 10Gbps×2

大きな板のようなスタイリッシュな外観も継承。端子部を囲むように細いイルミネーションがあしらわれている点も共通で、前モデル同様パネル下部にリーディングライトも備えます。旧モデルの点光源で使いにくかったリーディングライトは若干改良されており、面光源になっていました。

それよりも、ついに4辺ベゼルレスを実現したところが外観面での最大の特徴です。下部のベゼルが取り払われ、スリムな印象に磨きがかかりました。

  • 前モデル・OMEN 27iの下部ベゼル。個人的にはOMENのシンプルなブランドロゴも気に入っていました

  • 新モデル・OMEN 27uの下部ベゼル。狭額縁になったとはいえ、非表示部分はやや広めです

WQHD/100%表示と全く同じ見た目の4K/150%スケーリング

さっそくゲーミングPCとDisplayPortケーブルで接続し、いざ点灯! まず気づいたのは、IPS Oxideパネルによる柔らかな暖色表示です。筆者は普段ゲーミングPCのデスクトップを淡いピンク色に設定して使っているため、色味の違いは歴然。OMEN 27iでは強くコントラストが出すぎていたのか、OMEN 27uでは彩度が抑えめでニュートラルな画面表示に変わりました。

Windowsのスケーリングは150%が推奨値。計算すれば当然ですが、WQHD解像度で100%の画面表示と4K UHD 150%の画面表示はサイズが同じになります。ブラウザなどを開いても、全く同じ文字サイズでテキストや画像が表示されるというわけ。

  • 150%がデフォルトの推奨値です

一方で全く違うのは精細感。表示サイズはそのままに、文字がスケーリングされてとてもクッキリと描画されています。高解像度ノートPCのようなクッキリ表示をデスクトップPCで体験してみると、まるで新しいPCに買い替えたときのような、かなりモダンな印象を受けました。

ちなみにパネルはノングレアですが、割りと映り込みが多め。画面表示は鮮やかで美しいですが、ハーフグレアと言ってもいいレベルなので、部屋の光源の位置が悪かったりすると見えにくいことがあるかもしれません。

ゲームはGeForce RTX 3080 Tiでも強烈に重い

4K/144Hzディスプレイでのゲーム体験はASUS「ROG Swift PG32UQX」のレビューでもちらっと体験しましたが、個人的には32型という大画面がネックに。27型で慣れている筆者にとっては普段遊ぶFPSゲームがやりづらく、短い貸与期間もあって慣れるまでは至りませんでした。その点、今回借りているOMEN 27uは完全に慣れている27型。『Apex Legends』はもとより、『VALORANT』も普段通り楽しむことができました。しかし見えてきたのは、4K解像度が要求する描画性能のヘビーさです。

  • 自動で144Hzになるはずですが、リフレッシュレートは一応確認しておきましょう

筆者のゲーミングPCはGeForce RTX 3080 Tiを搭載して強力な性能を備えていますが、それでも大半のゲームはある程度高画質な設定で80fps前後まで落ち込みます。『Apex Legends』は描画設定を落としても高負荷なシーンで大きく60fpsを下回り、やはり厳しさは否めません。『VALORANT』にいたっては4Kで遊ばれることをあまり想定していないのか、大きく画面表示が変遷するタイミングでクラッシュしてしまうことすら何度かありました。

  • NIS(NVIDIA Image Scaling)など、超解像技術のアップスケーリングで負荷を軽減するアプローチも有効かもしれません

とはいえ、競技性の高いFPSゲームに向いていないことは百も承知。最近始めた『FFXIV』はキレイな画面表示で鮮やかな描写を楽しめ、『God Of War』はDLSSの支援もあって高画質・高パフォーマンスをかんたんに維持できました。また、どうしても性能が足りない場合は汎用の超解像技術で“かさ増し”してしまうのも1つの手段かも。「NVIDIA Image Scaling」を適用することで、ある程度パフォーマンスを確保することも可能です。

ゲーミングPC環境の終着点。まさに高嶺の花

買い替えることでどんどん性能を引き上げられるPCパーツとは異なり、その高い画面表示性能によって、逆に強力なPC性能が必要になるゲーミングディスプレイ。4Kの高解像度で144Hzの高リフレッシュレートは極めてリッチなPC使用体験を実現しますが、ゲーミングにおける負荷もまた強烈。自分がプレイするゲームのジャンルや、搭載しているPCの性能ともよく相談する必要がありそうです。

本記事で紹介したHP「OMEN 27u」は、97,900円(記事制作時点、直販ストア価格)で販売中。強力なPCを購入してさらにハイクオリティなゲームプレイ体験が得たいなら、高解像度・高リフレッシュレート・広色域を備えたOMEN 27uも十分なポテンシャルを備えていると思います。

  • 余談ですが、個人的にはスマートフォンゲームを快適にプレイできた点がかなり便利でした。フルHDサイズのウィンドウをかんたんに取り回せるほか、中途半端なウインドウサイズで遊んでいた『ウマ娘』も最大サイズでプレイできます