JR東日本は27日、事業用交直流電車E493系、砕石輸送用電気式気動車GV-E197系の報道公開を実施した。E493系は2021年に新造された量産先行車に続き、量産車として2両編成を1編成新造し、2023年度以降に運用開始する予定となっている。

  • 事業用交直流電車E493系の量産先行車が報道公開された

JR東日本によれば、在来線の砕石輸送などに使用される機関車・貨車、車両の入換作業および回送列車に使用される機関車はいずれも国鉄時代に製造され、老朽化が進んでいることから、新型車両を投入することになったという。安全性・メンテナンス性のさらなる向上に向け、2021年に新造された量産先行車による性能試験と技術的検証がこのほど完了。量産車を新造して老朽化した機関車・貨車を置き換え、効率的な運用とメンテナンスの実現をめざす。

E493系は2両編成(E493形・E492形)の事業用交直流電車で、車両の入換作業や回送列車の牽引用として使用される。車体寸法は全長21.1m、全幅2.8m、全高3.98m。最高運転速度は100km/h。交直流切替え方式の採用により、電化方式にかかわらず走行できる。

置換えによる効果として、駆動システムや操縦方法を電車と統一することにより、従来の機関車固有の操縦方法が不要に。機関車の場合は複数のハンドル操作が必要で、操縦に熟練を要したが、E493系はひとつのハンドルで加速・ブレーキを操作するなど、操縦の簡素化を図った。

  • E493系とGV-E197系を並べて公開。JR東日本運輸車両部車両技術センター所長、菊地隆寛氏がインタビューに応じた

従来の電気機関車は直流電動機においてブラシ、整流子の保守が必要だったが、E493系の誘導電動機はブラシ、整流子がなくなり、省メンテナンス化を実現。VVVFインバータを採用したほか、主変換装置に半導体を使用し、電車と同じシステムで動力を伝達する。車体はステンレス製で、腐食に強く、塗装も不要。台車はシンプルな構造であるボルスタレス台車を採用。機関車と比べて部品点数が大幅に削減され、製造費の低減と保守の簡略化、軽量化を実現している。

報道公開にてインタビューに応じたJR東日本運輸車両部車両技術センター所長、菊地隆寛氏は、「機関車は電車・気動車と比べて複雑な構造で、運転操縦も技量を必要とします。当社は旅客会社ということもあり、電車・気動車が大半を占める中、電車・気動車をベースとした今回の車両を導入することにより、さらなる効率化を図りたいと考えています」と話す。

  • E493系の運転台など車内の様子

質疑応答の中で、E493系とGV-E197系の牽引能力に関する質問も。菊地氏は、「何両という言い方は非常に難しい」と前置きした上で、「E493系の場合、ざっとE233系10両分くらいの牽引能力を持たせています。総合車両製作所からの回送など意識して作った車両ですので、首都圏で活躍する10両程度の長大編成を引っ張る能力があります」と説明した。

GV-E197系については、「砕石輸送用の車両4両を連結しており、ざっと250トンくらいの重さであれば、この(牽引車)2両をもって牽引できるようになっています」と菊地氏。GV-E197系を回送車両等の牽引用で使用する場合、E493系とほぼ同程度の牽引能力を持っているとの説明もあった。

車両のデザインに関する質問もあり、「車体を製造した新潟トランシスにまとめていただきました。ネット上で205系や201系に似ていると言われましたが、とくにモチーフとした形式などはありません」と菊地氏。「シンプルに」「つくりやすく」といったところを狙ったデザインで、色もキヤ195系などの事業用車両と統一感を持たせたという。車両の愛称について、「いまのところ付ける予定はありません」とのことだった。

E493系は今後、量産車として2両編成を1編成新造し、2023年度以降に運用開始する予定。量産車は量産先行車の仕様を踏襲しつつ、コストダウンを図るという。量産車も量産先行車と同じ尾久車両センターへの配置を計画している。

  • E493系(量産先行車)の車内・外観