名刺交換のシチュエーションは一対一だけではありません。複数人で名刺を交換する場面に遭遇することもあるでしょう。相手が一人から複数になることで名刺交換のマナーに違いが生じるのか、特に新入社員の皆さんは気になっているのではないでしょうか。
本記事では複数人での名刺交換の仕方やマナーについて解説します。社会人として恥ずかしい思いをしないよう、名刺交換のマナーを身につけましょう。
名刺交換前に準備すること
名刺交換の際は、準備段階から気をつけないといけないポイントがあります。スマートに名刺を交換して好印象を持ってもらうためにも、徹底した準備を心がけましょう。
名刺を確認する
名刺を交換する前には必ず表面の傷みや汚れ、破損、角が折れていないかなど、名刺にダメージがないことをチェックしてください。
名刺はビジネスパーソンとしての顔です。傷みや汚れがあるなど、渡して恥ずかしいような名刺を差し出すと、社会人に必要な基本的マナーが身についていないと判断されかねません。一緒に仕事をするパートナーとしての資質を疑われ、相手を不安にさせてしまうことも考えられます。
名刺交換の場には綺麗な名刺だけを持参するようにしましょう。
名刺入れは内ポケットにしまう
名刺交換はなるべく円滑に行いたいところ。名刺入れを出すタイミングでもたつくと名刺交換の流れを妨げてしまい、印象を悪くする恐れがあります。
速やかに出せるよう、あらかじめ名刺入れをジャケットの内ポケットや、鞄の取り出しやすい収納部分に入れておきましょう。
渡す人数分の名刺を用意しておく
名刺交換のマナーとして一番守らないといけないことは「自分の名刺を切らさないこと」です。名刺を多く使いそうな日は、名刺入れとは別に予備をバッグに入れておくなどの用意周到さが必要です。
名刺交換をする相手の人数がわかったら、その枚数を名刺入れの間に挟んでおくと、名刺交換がスムーズにできて印象が良くなります。慌てて名刺を取り出すと折れたり破れたりする可能性があるので、早めに必要な枚数を準備しましょう。
立ち位置をチェックする
複数人で名刺を交換する場合は、役職の順番に準じて並んでおきましょう。名刺交換のタイミングで場所を入れ替わると慌ただしい印象を受けます。
複数人での名刺交換の仕方・順番
複数人と名刺を交換する際に重要となるのが名刺交換をする順番です。社会人としての常識を備えた人と印象付けるためにも、マナーに則って行いましょう。
立場が下の人から上の人に渡す
名刺交換をする時に覚えておきたいことの一つに、「立場が下の人から先に渡す」というルールがあります。刺交換は立場が下の人や訪問した側から先に差し出すのが基本的なマナーです。他社を訪問した時は、自分から名刺を渡すようにしましょう。
さらに、複数人での名刺交換では、相手の最も役職が高い人から順に渡していくのが基本です。
相手の最も役職が高い人から順に渡していくのが基本です。
名刺交換の仕方【一対複数人の場合】
まずは自分一人で企業を訪問し、役職が上の複数人と名刺交換するケースを見てみましょう。
まず名刺を先に差し出すのは訪問した自分で、一番役職の高い人物に最初に渡します。図ではAにあたります。Aとの名刺交換後は、次に役職が高いB、その次のC、という順番で行ってください。自分が訪問される側になるときは、相手が名刺を差し出すまで待ちます。
【一対複数人での名刺交換(自分が訪問する側のケース)】
1.自分から先にAへ名刺を差し出し、Aの名刺を受け取る
2.自分から先にBへ名刺を差し出し、Bの名刺を受け取る
3.自分から先にCへ名刺を差し出し、Cの名刺を受け取る
名刺交換の仕方【複数人対複数人の場合】
続いては上司と2人で他社へ訪問し、訪問先の2名と名刺を交換するケースです。複数人同士で顔を合わせたときは、最初に自分の上司と訪問先の上司から名刺を交換します。
このとき、訪問先の担当者と自分が空いているからといって、名刺交換を始めたりしてはいけません。それぞれの上司が名刺交換している様子を一歩引いた位置で見守ります。
次は自分の上司と訪問先の担当者、自分と訪問先の上司の名刺を同時に交換しましょう。立ち位置を変えないとスムーズに名刺を交換できない状況では、自分の上司と訪問先の担当者との名刺交換を先に行います。直後に自分と訪問先の上司との名刺交換を行ってください。
最後は自分と訪問先の担当者との名刺交換です。
なお相手が自社へ訪問してきたときは、上司同士の名刺交換をした後に相手の上司と自分、相手の担当者と自分の上司、相手の担当者と自分、の順で名刺を交換します。
【複数人対複数人での名刺交換(自分たちが訪問する側のケース)】
1.自分の上司と訪問先の上司
2.自分の上司と訪問先の担当者
3.自分と訪問先の上司
4.自分と訪問先の担当者
※2と3は同時が望ましいが、順番でも可
【複数人対複数人での名刺交換(自分たちが訪問される側のケース)】
1.相手の上司と自分の上司
2.相手の上司と自分
3.相手の担当者と自分の上司
4.相手の担当者と自分
順番がわからないときの対処法
役職を見極めるコツは入室する順番です。基本的に役職が最も高い人から順に入室するので、しっかりと確認しておきましょう。
もし相手が着席して待っていたら、最初に名刺交換するのは上座に座っている人です。原則として、入り口から最も遠い席が上座になります。奥から順番に名刺を交換し、最後に入り口に最も近い席の人に名刺を差し出してください。
複数人での名刺交換の手順
名刺交換の手順は基本的に一対一で行うときと同じですが、名刺の持ち方など細かな部分が異なります。正しく理解しましょう。
名刺の正しい持ち方
名刺交換のタイミングになったら起立して名刺入れを取り出します。事前に挟んでおいた名刺の束から1枚取って、名刺入れの上で保持します。このとき、名刺を相手に向けることを忘れないようにしてください。
名刺を差し出す
名刺を胸の高さに持ち上げたら、企業名や部署名、氏名などを名乗りながら、右手で自分の名刺を持ちます。左手は相手がその上に名刺を載せやすいように、名刺入れを水平に保持します。
名刺交換をスムーズにする覚え方は右手に名刺、左手に名刺入れを持った「右側通行」です。
名刺を受け取る
名刺入れは名刺の「座布団」です。相手の名刺は、自分の名刺入れの上で受け取りましょう。相手の名刺を左手の親指で名刺入れと挟むように受け取った後は、すぐに右手を添えて両手で持ち、「頂戴いたします」と一言添えてください。
受け取った名刺の正しい持ち方
受け取った相手の名刺は名刺入れの下に移動させ、次の人に渡す名刺を名刺入れの上に置いて準備します。2人目以降の名刺は、ひとつ前に受け取った名刺の下に入れることにより、役職順に名刺を保持することができます。
再び名刺を差し出す
複数人との名刺交換は、相手から受け取った名刺を名刺入れの下に持ったまま連続で行います。すぐに名刺入れに挟んである自分の名刺を取り出して、次の人と交換してください。
名刺交換がない場合の対応
名刺交換の後に入室した人がいる、あるいは名刺交換自体を相手が忘れているなどの理由で名刺交換が行われないこともあるかもしれません。顔を合わせた直後に名刺を交換できなかったときは、商談や会議の終了後に「恐れ入りますが、お名刺を1枚いただけますでしょうか」と伝えるとよいでしょう。
複数人で交換した名刺の置き方としまい方
交換を終えたからといって名刺をすぐに片付けるのはマナー違反にあたります。正しい取り扱い方をしっかりと頭に入れてください。
席順にしたがって名刺を置く
名刺交換が終わって会議や商談に入るときは注意をはらって相手の着席順を確認します。最も役職の高い人の名刺を、座布団である名刺入れの上に置き、相手が座った席順でテーブル手前に並べます。役職の高さが明確でないケースでは、縦方向に並べるとよいでしょう。
テーブルの上に出しておくことによって、商談中に相手の名前や役職を忘れてしまった時にも確認することができます。
相手の動きに合わせて名刺をしまう
名刺交換のマナーにおいて、しまい方のルールは定められていません。迷ったときは相手が名刺をしまうタイミングで片付ければ失礼にはあたらないでしょう。
名刺をテーブルから落とすのはたいへん失礼です。商談中にテーブルに書類を広げるなど、そのような可能性が生じたら「お名刺を汚すといけないので、しまわせていただきます」と述べてから片付けてください。商談や会議の最中であるにもかかわらず無断で名刺入れにしまうのはNGです。
名刺交換で失礼にあたる行為
社会人として名刺交換のマナーを身につけるなら、避けるべき行為も把握しておきたいところ。マナー違反にあたる行動を取らないよう、今のうちに知っておくことが大切です。
受け取った名刺を目の前で重ねる
相手から名刺を受け取った直後、名刺入れの上で自分の名刺や他の人の名刺を重ねるのは失礼な行為と受け取られます。必ず名刺入れの下に受け取った名刺を移動させてから、他の人の名刺を受け取るようにしましょう。
下を向いて名刺を差し出す
名刺ばかりに視線を落としていると、失礼な相手とみなされる恐れがあります。名刺の向きや持ち方を確認したら相手と視線を合わせ、にこやかな表情を心がけましょう。
テーブルを挟んで名刺交換する
名刺交換は相手と自分の間に何もない状態で行うのが基本です。目の前にテーブルがあるときは速やかにテーブルの外側に一歩移動して行います。
企業名や名前が隠れるような持ち方
名刺を受け取ったときに相手企業のロゴや社名、氏名を隠すように指を重ねるのはたいへん失礼です。相手を軽視しているという印象を与えかねません。名刺を受け取る際は座布団である名刺入れに載せ、余白部分に親指を置いて、丁寧に取り扱うことを心がけましょう。
名刺・名刺入れがない
名刺や名刺入れを忘れたら、必ず「申し訳ございません。ただいま名刺を切らしておりまして」とお詫びの言葉を述べてください。続けて企業名と名前を伝えます。
勤務先に戻ったら早急に名刺の郵送準備に入りましょう。お詫びの言葉も忘れずに添えてください。
目上の人が先に名刺を差し出す
名刺交換は、基本的に立場が下の人から先に差し出します。目上の人よりも名刺を差し出すタイミングが遅れたときは、相手を待たせないのがマナーです。「頂戴いたします」と述べてすぐに受け取り、名刺を準備してから「申し遅れました」の一言とともに名刺を差し出します。
名刺にメモ
氏名の読み方や相手の情報など、書き留めたいことがあっても、相手の目の前で名刺に直接書き入れるのは厳禁です。メモ帳など必ず別紙に書き込んでください。
ただし、一度名刺交換した人に後日会って、「〇〇さん、先日はありがとうございました」などと挨拶ができることは、大きなビジネスチャンスに繋がり、とても大切です。ですから名刺交換した際に、交換した日付や場所、相手の特徴を名刺にメモした上で、大切に保管してほしいと思います。
そもそもなぜ名刺交換が必要なのか?
名刺交換は単に自分を覚えてもらうために行うわけではありません。名刺交換の役割をおさらいしておきましょう。
自己紹介
ビジネスの上で初対面の相手とやり取りをする際、まずお互いの身分を明かす必要があり、その働きをするのが名刺交換です。氏名・勤務先の企業名・役職名・部署名などを伝えて、お互いの情報を把握することで、安心してビジネスの話を進めることができます。
連絡先の伝達
連絡先を知らなければ一緒にビジネスを進めることができません。関係を構築し、今後とも付き合いを続けていくためには連絡先を交換する必要があり、連絡先を記載している名刺を交換することで、お互いの連絡先を把握することができます。
ビジネスマナーの確認
名刺交換は挨拶の仕方や名刺の扱い方など、社会人としての立ち居振る舞いをお互いチェックすることができます。
少しでも不相応な所作が見受けられると「最低限のマナーすら身についていない」と判断されることもあります。初対面でマナーのなっていない人という印象を残してしまうと、その後の信頼関係の構築に支障をきたすケースも十分考えられるので注意しましょう。
複数人との名刺交換マナーを身につけて第一印象を良くしよう
名刺交換は単なる自己紹介だけでなく、相手からビジネスマナーをチェックされる場面でもあります。事前の準備から名刺を交換する方法まで、基本的な部分はしっかり学んでおきましょう。
また、複数人と名刺交換をする際には、交換する順番も重要です。この記事もぜひ参考にして、どんなケースでも慌てず対応できるように備えておきましょう。