パシフィコ横浜で開催中の「人とくるまのテクノロジー展2022」(5月27日まで、オンラインでも開催中)で謎のクルマを発見した。日立Astemo(アステモ)のブースに鎮座していたのは、白くて箱型でなぜかハンドルが2つある不思議な車両。どんな技術を搭載しているのか聞いてきた。

  • 日立アステモの試作車両

    日立アステモが展示していた謎のクルマ

タイヤそのものにモーターを取り付ける?

このクルマは日立アステモが研究・開発を目的に作った試作車両であるとのこと。目玉となる搭載技術は、タイヤのホイールの部分に積む「インホイールモーター」だ。

  • 日立アステモの試作車両
  • 日立アステモの試作車両
  • インホイールモーターの試作サンプル

インホイールモーターはモーター、インバーター、ブレーキが一体となっている。高さは420mmで、ホイールサイズは19インチとのこと。1個あたりの最高出力は60kW、最大トルクは960Nm。試作車両は後輪左右に各1個のインホイールモーターを積んでいるそうだから、後輪駆動のクルマということになる。この車両は走行可能で、茨城のテストコースを走っている姿は動画でも見られる。

試作車両は研究・開発目的で作ったそうだが、反応を見て今後の参考にしたいとの思いもあるそうだ。インホイールモーターが量産車に採用された例は今のところないらしいが、タイヤで駆動システムが完結すればボンネット下などにエンジンやモーターなどを積む必要がないので、車内が広く使える。ヒトやモノを運ぶクルマが採用すれば、スペース効率が向上しそうだ。

  • 日立アステモの試作車両

    日立アステモ社員に聞いたところによると、インホイールモーターの実用化で課題となっているのは「小型化」「高出力化」「熱のマネージメント」の難しさだという

  • 日立アステモの試作車両

    試作車両にはなぜかハンドルが2つついていた。理由を聞くと、片方は「ステアバイワイヤ」(ハンドルとタイヤが機械的につながっていない先進的な技術)のハンドルで、もう片方は「ステアバイワイヤ」に万が一、何かが起こった時のための予備(?)ハンドルなのだという

この試作車両、名前はまだないとのこと。「つけたほうが覚えてもらいやすいのでは?」と水を向けてみると日立アステモの社員さんは、「私もそう思うんですけどね。日立だから『白くまくん』とかでもいいかも……冗談ですけど(笑)」と話していた。

  • 日立アステモの試作車両

    確かに、白くて大きいから白くまっぽくもある。車内は4シーターにしてあるが、アレンジ次第でもっと人が乗れそう。ミニバス的な使い方でもいけそうだ