東京商工リサーチは5月24日、2021年「全国新設法人動向」調査の結果を発表した。東京商工リサーチの企業データベース(対象400万社)から、2021年(1-12月)に新しく設立された法人データを抽出し、分析したもの。
2021年(1-12月)に新しく設立された法人(以下、新設法人)は、14万4,622社(前年比10.1%増、前年13万1,238社)と過去最多を記録。2019年以来、2年ぶりに前年を上回った。
一方、2021年の休廃業・解散は4万4,377社(同10.7%減)、倒産は6,030社(同22.4%減)と、ともに2ケタの減少率に。コロナ禍の手厚い資金繰り支援で倒産が抑制され、休廃業・解散も判断が先送りされるなか、新設法人の突出した増加が目立った。
2021年の新設法人で最も多かった商号は、「結びつき」「連結」「絆」などを意味する「LINK」が最多の54社(前年51社)。また、相手が出来ないことを助ける意味の「アシスト」が51社(同49社)で続き、3位には「RISE」(45社、前年26社)が前年17位から急上昇。上位には前向きで未来志向、親和性、独自性を重んじる商号が並んだ。
産業別では、10産業すべて増加した。増加率トップは、農・林・漁・鉱業の17.4%。コロナ禍の三密回避や地方回帰の動きが新設法人の動向にも影響を与えたとみられる。また、小売業と金融・保険業の増加率はともに14.7%と、大幅増となった。
一方、増加率が最も低かったのは不動産業の2.6%。コロナ禍初期に引っ越しや転勤が減少したことに加え、金融緩和や海外の投資マネー流入で都市部を中心に不動産価格が高騰し、新規参入しにくい市場環境を反映したとみられる。また、2番目に低かった製造業(増加率5.8%)では、特に、家具やパルプ・紙、印刷、ゴム製品などが前年を下回る結果に。2022年は円安や原油・原材料価格の高騰、電気料金の引き上げなどが相次いでいることから、製造業の新設法人数はさらに低迷する可能性が出ている。
業種別では、各種商品小売業の26.5%増が最多。以下、飲食料品製造業22.7%増、生活関連サービス業,娯楽業の22.4%増と続き、減少率では、印刷・同関連業(14.7%減)がトップに。コロナ禍で非対面・リモートが浸透、デジタル媒体でのやりとりが加速して新規参入が鈍化。以下、家具・装備品製造業(11.6%減)、汎・生産・業務用機械器具製造業(9.2%減)と続いた。