ギターシンセはここ最近とても種類が増えてきて、まさに群雄割拠の時代となっている。そんな中、個性を求めるとしたらそのエフェクターにしかない付加価値を探していくのが手っ取り早い。今回紹介するElectro-Harmonix 「Superego+」は、シンセサウンド専用のエフェクターだった「Superego」と互換性がある、上位機種モデルになる。どんな“+”があるのか興味津々で見ていきたいと思う。
付加価値の高いギターシンセユニット
Electro-Harmonix 「Superego+」は冒頭でも述べた通り、大人気となったヒット製品「Superego」の上位互換製品としてリリースされたエフェクターになる。独自のSuperego Synth Engineはそのままに、空間系のエフェクターを追加することで、11種類のシンセサウンドバリエーションが簡単に作れるという優れモノだ。
エフェクター単体としても使えるため、ある意味マルチエフェクター的に使用したり、永遠のサスティンが得られたりするフリーズ機能で弾いた和音をそのまま残し、そのうえでリードプレイをするといった使い方も可能。音作りや得られる効果が大幅にアップグレードしている。
また、エフェクト音だけを外部エフェクターに出力し、戻ってきた音に原音をミックスするというエフェクトループに対応するSEND、RETURNのほか、エクスプレッション・ペダルでパラメーター操作が可能になるなど、アイデア次第でさまざまな演出ができる点も特長となる。それではさっそく、使い方を解説していこう。
サウンドメイクは意外と簡単
本体を見るとコントローラーノブが多いことに気づく。一見、複雑なようにみえるが、コツさえつかめばとても簡単で、“黒がシンセ、白がマルチエフェクター”と大別すればすぐにパラメーターの意味が理解できるようになる。各ノブの機能は以下のようになる。
黒ノブ名称 | 機能 |
DRY | 原音をどれぐらい含めるか設定 |
EFFECT | エフェクト音をどれぐらい含めるか設定 |
ATTACK | フリーズエフェクトのフェードインスピードを設定 |
DECAY | フリーズエフェクトのフェードアウトスピードを設定 |
THRESHOLD | インプットシグナルに対する感度を設定 |
LAYER | 新しいエフェクト音をどれぐらいの割合で出力するかを設定 |
GLISS | グリッサンドとポルタメントのスピードを設定 |
白ノブ名称 | 機能 |
RATE | エフェクトのレート/スピードをコントロール |
DEPTH | エフェクトのデプス/エフェクト量をコントロール |
EFFECT | エフェクトの種類を切り替える |
どのコントローラーノブも少しいじるだけでニュアンスが変わるので、少しずつ好みのポイントを探っていくのがベストだ。エフェクターはネーミングだけでも分かるものもあると思うが、一応、11種類すべてを説明すると下記となる。
エフェクト名称 | 効果 |
DETUNE | ピッチデチューンエフェクト。エクスプレッションペダル(以下、EXP)でピッチのコントロールが可能 |
ECHO | フィードバックがプリセットされたクリアなデジタルディレイ。EXPで最大2000msecまでの間でディレイタイムをコントロール |
DELAY | フィードバックがプリセットされた温かみのあるアナログディレイ。EXPで最大2000msecまでのディレイタイムをコントロール |
FLANGE | フィルター マトリックスモードとレート、フィードバックを備えた Electric Mistress スタイルのフランジャー。EXPはレートをコントロール |
PHASE | レートとデプスを備えたSmall Stoneスタイルのフェイザー。EXPはレートをコントロール |
MOD | ピッチコントロールタイプの ビブラート/コーラス。EXPはレートをコントロール |
ROTARY | ロータリースピーカースタイルのエフェクト。Depthはツィーター/ホーンのバランスをコントロールする。EXPはレートをコントロール |
TREM 1 | 正弦波タイプのトレモロ。EXPはレートをコントロール |
TREM 2 | 矩形波タイプのトレモロ。EXはレートをコントロール |
PITCH | ±1オクターブのピッチシフトエフェクト。EXPでワーミーのような効果が得られる |
FILTER | レゾナントローパスフィルター。EXPはフリーケンシーをコントロール |
エフェクターの種類は多いが、コントロールするのはRATEとDEPTHのみなので、音作りの手間という意味ではとてもシンプルだ。トータルとしてのサウンドメイクは、シンセサウンドを自分の好みに仕上げたあとに、これらのエフェクターで味付けすることでサウンドの幅を広げるといった順序で音作りをしていけば、ほぼ迷うことなく求める音に近づけることが可能だ。
使いこなしに必須のMODEコントロール
実はこのエフェクター最大の魅力はそれぞれ個性のあるMODE設定にあると筆者は感じている。本体の左下のフットスイッチで切り替えられるMODEは5種類あり、3つのLEDの組み合わせでどのMODEにあるか確認することができる。5つのMODEは以下の通り。本体のMODEフットスイッチを1回押す度に切り替わっていくので内容を覚えておこう。
モード名称 | 効果 |
MOMENT | BYPASSスイッチを押している間の入力信号がエフェクト音で残り続ける。BYPASSスイッチを離すと、少ししてからエフェクト音が消える |
SUSTAIN | MOMENTと似ているが、エフェクト音が消えるタイミングがMOMENTより早い。ピアノのサステイン・ペダルと同じ |
AUTO | エフェクトがかかりっぱなしになる。フレーズごとにBYPASSスイッチを押す必要がないので操作が楽。ゆっくりしたフレーズ向き |
LATCH | これもMOMENTと似ているが、BYPASSスイッチを離してもエフェクト音が消えない |
LIVE EFFECTS | シンセエンジンが無効になる。マルチエフェクターとして使用する場合用 |
このMODEの機能を理解することで、自分が作ったサウンドをどのように使うか決めることができるというわけだ。特にMOMENT、LATCHはこの製品の特長となるシンセサウンドの無限サスティンを思う存分楽しめるMODEなので、ぜひ上手く使いこなして欲しい。
サウンドメイク時や原音と一緒に出力しながらの演奏にはAUTOが便利だし、エフェクターのパラメーターをいじるときや空間系のエフェクターとして使いたい場合はLIVE EFFECTSが最適だ。DRYを絞ってシンセ音だけでバッキングするようなときにはSUSTAINでコードチェンジを滑らかにすると、より効果的な使い方もできる。
シンセサウンド、エフェクト、モード選択がすべて揃い完成したSuperego+サウンドはごキゲンの一言。高級感のあるSuperego Synth Engineの音色にさまざまな空間系エフェクターの奥深さが加わると、非常に存在感のある独特の表現が可能となる。
サスティンを操りながらコードワークを繰り返しているとインスピレーションが沸き起こってくる。夢中になって弾いているとついつい時間が経つのも忘れてしまうほどだ。もちろん、エフェクト音を鳴らし続けている間はリードプレイを乗せることもできるので、実に楽しい時間になる。ルーパーとはまた違った感覚でのソロプレイもSuperego+ならではだろう。
Electro-Harmonix 「Superego+」の実勢価格は35,000円~40,000円前後。輸入品のため、現在の情勢(2022年5月)だと売値にバラつきがあるのは仕方のないところだろう。筆者の感覚では、サウンドクオリティではかなりのハイレベルにあり、プロユースでも十分耐えられる品質を持っていると感じた。そう考えると、コストパフォーマンス的にはかなり魅力的で、自分のあるいは自分たちが作るサウンドをもうワンランクアップさせたいというギタリストには特におすすめできるアイテムだ。まだ試していない方はぜひ楽器店で手に取ってみて欲しい。