東京商工リサーチは5月23日、全国の旅客船事業者95社の約7割が2021年の当期純利益(利益)が赤字だったと発表した。

売上高、コロナ前から約2割減

  • 旅客船事業者95社の業績(出典:東京商工リサーチWebサイト)

同調査は、TSR企業データベース(390万社)から、2021年(2021年1月期~12月期決算)、2020年(同)、2019年(同)の3期連続で業績が比較可能な95社の「旅客船事業者」(沿海旅客海運業、港湾旅客海運業)を抽出したもの。

95社の2021年の売上高合計は1,237億7,800万円で、コロナ前の2019年(1,541億9,200万円)から19.7%減少した。また当期純利益合計は、2019年は26億900万円の黒字だったが、コロナ禍が全国に広がった2020年は29億5,800万円の赤字に転落し、さらに2021年は101億5,600万円と赤字が拡大した。

赤字事業者の割合をみると、2019年は24社(構成比25.2%)にとどまっていたが、2020年は48社(同50.5%)と半数に増え、2021年は65社(同68.4%)と約7割が赤字に。同調査によると、「船舶は稼働しなくても船舶や設備の維持管理は必要で、さらに従業員の給料も負担は大きい。新型コロナの影響は深刻で、業績が悪化する旅客船事業者が増えている」という。

また、旅客事業者95社の詳細をみると、売上高5億円未満が約7割(構成比69.4%)、資本金1億円未満が約8割(同80.0%)、従業員50人未満が約7割(同70.5%)を占めるなど、小・零細規模の事業者が多いことがわかった。

同調査では、「コロナ禍で外出自粛や旅行の手控え、インバウンド需要の消失などで売上不振は深刻さを増している。一方で、船舶などの設備維持や更新、安全対策の強化などへの投資が負担になり、経営体力が落ち込む事業者が少なくない」と指摘。その上で「観光客などの消費は地域振興への効果も大きい。旅客船事業者は中小・零細規模が大半を占めるだけに安全対策を事業者任せにせず、国や自治体など行政からの支援も必要だろう」とコメントしている。