ビジネスシーンにおける名刺交換は、初対面の相手との挨拶で行う重要な作法の一つです。言葉遣い、身だしなみなどとともに、名刺交換のマナーを身につけることで第一印象はさらにアップします。

本記事では名刺交換のマナーと同時交換の手順に着目し、差し出し方と受け取り方の方法を紹介します。さまざまなマナーやルールがある名刺の同時交換を学び、正しいビジネスマナーを身につけましょう。

  • 名刺交換の重要性とは

    同時に名刺交換する際のポイントや適切なマナーをくわしく説明します

名刺交換の重要性とは

まずは名刺交換の重要性を理解しましょう。

最初の挨拶の機会になる

名刺交換は、取引先やお客様に最初の挨拶をするタイミングで行いますから、第一印象を左右する重要なシーンといえます。その先のビジネスを共に円滑に進められる人か、ビジネスマナーを正しく身につけている人かチェックされる第一関門でもあります。

名刺交換の手順に不備があれば、相手はあなたのことを「基本的なビジネスマナーを知らない人」と判断してしまいます。相手に不快感を与えないためにも、社会人として名刺交換のマナーは正しく身につけておきましょう。

お互いの基本情報を確認し合う場面になる

取引先やお客様に最初の挨拶として行う名刺交換には、3つの目的があります。1つ目は初対面の人に身分を明かし、所属や氏名などの自己紹介をすること。2つ目はメールアドレスなどの連絡先を伝えること。そして3つ目が「名刺交換」するときの言動や作法によって、その人が信頼関係を結ぶに値する人か、社会人としての資質を確認することです。

名刺には名前や企業名、所属先、連絡先の番号などが記載されており、お互いの情報を確認し合うことができます。ですから名刺交換はコミュニケーションの活性化につながります。

  • 名刺交換の重要性とは

    名刺交換はマナーの確認とコミュニケーションのきっかけになる重要な機会です

名刺を同時交換したらマナー違反?

従来の名刺交換といえば、名刺は目下の人から、あるいは訪問した側からなど、立場の低い人から差し出すのが一般的とされてきました。では同時に名刺を交換するのは不作法なのでしょうか。

名刺の同時交換は主流

近年の名刺交換の主流は「同時交換」です。その理由は、上下関係の判断に時間を割いて名刺交換に手間取ることを防ぐためといえます。スムーズな名刺交換を実現するために、同時交換のマナーを身につけておきましょう。

  • 名刺を同時に交換したらマナー違反?

    スマートに名刺を同時交換できると好印象につながります

名刺交換を準備する上での注意点

名刺交換のマナーは本番だけではありません。相手に失礼のないよう準備することも、社会人にとって大切なビジネスマナーです。

以下の項目を事前にチェックしておくと、名刺交換の本番で慌てることはなくなるでしょう。

名刺の数は余裕をもって用意する

名刺交換のマナーとして一番守らなければならないことは、自分の名刺を切らさないことです。名刺を多く使いそうな日は、名刺入れとは別に予備をバックに入れておくなど、常に多めに持つようにしましょう。

汚れや傷のある名刺を抜く

「自分の名刺は自分の顔」ですから、大切に保管すべきものです。汚れやしわのある名刺は相手に不快感を与えてしまいます。自己管理できない人と認識されかねないので、名刺は綺麗な状態のものを用意しましょう。

名刺入れの状態をチェック

人によっては名刺だけでなく、名刺入れを見てビジネスマナーをチェックすることがあります。名刺入れも、あなたの人柄が表れる大切な小物です。いろいろな素材や形の名刺入れがありますが、ラインストーンがちりばめられてキラキラした名刺入れなどをビジネスシーンで取り出したら、社会人としての品格が疑われてしまいます。ビジネスシーンに相応しい名刺入れを選びましょう。

また、ほころびや汚れが目立つ名刺入れに嫌悪感を抱く人もいるので、名刺入れの清潔感にも気を配りましょう。

名刺入れをスムーズに取り出せる場所にしまう

いざ名刺交換しようとするときに、名刺入れを取り出すのに手間取ると相手への印象が悪くなってしまいます。男性用スーツの場合、名刺入れは上着の内ポケットに名刺入れを入れます。名刺や名刺入れは常にウエストラインより上に保持するのがマナーですから、ジャケットのサイドポケットやズボンのポケットに入れるのはNGです。女性用スーツは内ポケットが無いので、鞄の取り出しやすい場所に入れるなどすぐに取り出せるようにしましょう。

  • 名刺交換の準備をする上での注意点

    ミスが生じないよう心と時間に余裕をもって準備することが大切です

名刺を同時に交換する方法

(1)差し出し方

名刺交換に至るまでの社会人としての立ち居振る舞いは、相手に与える第一印象を大きく左右します。もたついたり、ぎこちない動きになったりしないよう、まずは差し出し方の流れを確認しておきましょう。

起立

名刺交換は座ったままではなく、立った状態で行うのがマナーです。会議室などに通され、先に座って待っているような場合でも、名刺交換を行うときには必ず立ち上がりましょう。 名刺交換しようとする人と同じ部屋に入った時点で、名刺入れは手に持つようにします。

お互いに名乗る、自己紹介する

正面に立ち、名刺入れを胸の高さに保持しながら、少し前傾姿勢になって、企業名や部署名、氏名を名乗りましょう。「(企業名)(部署名)の(氏名)と申します」と自己紹介します。

取り出した名刺を名刺入れにのせる

名刺を準備するタイミングは自己紹介と同時が基本です。あらかじめ名刺入れに挟んでおいた名刺を1枚取り出し、名刺入れの上にのせます。名刺をのせる際は名刺の底辺を相手に向けるようにし、両手の親指を添えます。名刺入れは交換前も交換後も常にウエストラインより上に保持します。

縦書きの名刺を使用するケースでも、名刺入れに名刺をのせる方法は同じです。まずは名刺入れを縦にして持ち、底辺を相手に向けた状態で名刺を縦向きにのせましょう。名刺入れの輪が右側にくるように持つのが適切です。

右手で名刺を持ち、相手の名刺入れにのせる

自己紹介の言葉を述べたら、名刺入れの上にのせてある名刺を右手で持ち、左手は相手がその上に名刺を載せやすいように、名刺入れを水平に保持します。名刺交換をスムーズにする覚え方は、右手に名刺、左手に名刺入れを持った「右側通行」です。右手の名刺を相手の名刺入れの上に載せるように差し出します。

  • 名刺を同時に交換する方法(1)差し出し方

    まずは立って名乗ってから名刺を差し出すのが正しい手順です

名刺を同時に交換する方法

(2)受け取り方

相手の名刺は自分の名刺を差し出すタイミングと同時に受け取りましょう。

左手で持った名刺入れで相手の名刺を受け取る

相手から差し出された名刺は、左手で保持している自分の名刺入れの上に載せて受け取ります。名刺入れは名刺の「座布団」だと思って、その上でやり取りしましょう。相手の名刺を左手の親指で名刺入れと挟むように持ちます。自分の名刺を差し出すことに集中しすぎると、左手がおろそかになるので注意してください。

相手の名刺を両手で持ち、ひと言「頂戴いたします」

相手が自分の名刺を受け取ったことを確認したら右手を戻して、名刺入れの上の相手の名刺に親指を添えて、両手で持ちます。相手から名刺を受け取る際は「頂戴いたします」とひと言添えます。

相手の氏名を確認

名刺を受け取ったら必ず相手の氏名を見て、読み方を復唱して確認します。その後のビジネスシーンにおいて、名前を呼び間違えることほど失礼なことはありません。必ず名刺交換したその時点で「(相手の氏名)様でいらっしゃいますね」と確認しましょう。「ヤマザキ様」なのか「ヤマサキ様」なのかなど、はっきり言って確認することが大切です。もし読み方が不明だったら「失礼ですが、何とお読みすればよろしいでしょうか」と尋ねて、その場でクリアにしましょう。

  • 名刺を同時に交換する方法(2)受け取り方

    事前に受け取り方を練習しておくと動作がスムーズになります

名刺を同時に交換する方法

(3)受け取り後

名刺の同時交換が終了したら、後は受け取った名刺の扱い方に気をつけるだけです。「相手の名刺は相手の顔」ですから、大切に取り扱いましょう。

相手の名刺はそのままテーブルへ

受け取った名刺はすぐに名刺入れの中に入れず、テーブルの上に置きます。

名刺入れは「座布団」です。名刺はテーブルに直に置くのではなく、名刺入れに載せた状態で、自分の左側手前に置きましょう。複数の相手と交換した場合は、最も目上の方の名刺を名刺入れの上に載せます。他の方の名刺は、座席順に並べてテーブルの上に置きます。

  • 基本的な名刺交換の方法(3)受け取り後

    名刺は名刺入れの上にのせた状態でテーブルに置きましょう

名刺の同時交換で迷ったときにとるべき行動

名刺の同時交換では、ときにハプニングが発生することもあります。予想外の事態に陥ったときに慌てないよう、名刺交換で起こりやすい事例と行動を確認しておきましょう。

名刺が手元にない

いざ名刺交換しようとしたときに、切らしていることに気付いたら、交換できる名刺が手元にないことを正直に話し、丁寧にお詫びすることが大切です。「申し訳ございません。ただいま名刺を切らしておりまして」と伝え、口頭で自己紹介します。

ただし、そのままにしておくのはNGです。後日会ったときに渡せばよい、などと考えてはいけません。帰社後にお詫びの手紙を添えて郵送で送るのがマナーです。

相手の名刺をもらえない

到着が遅れるなどの事情で名刺を交換する機会を逃したときなどは、会議や商談の終了後にタイミングを見計らって「恐れ入りますが、名刺を交換させていただいてもよろしいでしょうか」と伝えて名刺を求めてもマナー違反ではありません。

先に目上の人から名刺を差し出された

自分が訪問者あるいは目下側であるにも関わらず、相手から先に名刺を差し出されたら、まずは「頂戴いたします」のひと言とともに名刺を受け取りましょう。相手が準備を済ませているにもかかわらず、自分の準備のために相手を待たせるのは失礼な行為です。名刺を差し出す用意ができ次第「申し遅れましたが」とひと言添えて、名刺を差し出してください。

名刺交換の相手が外国人の場合

日本においては仰々しく両手で名刺を差し出し、相手側も両手で丁寧に受け取りますが、西洋における初対面の挨拶はハグや握手が最も大切なコミュニケーションスキルであり、名刺交換は二の次。人差し指と中指の間に名刺を挟んで、片手で気軽に渡すような仕草もよく見る光景です。名刺交換のマナーは国ごとに違うので、相手の動きに合わせて臨機応変に対応しましょう。

  • 名刺の同時交換で迷ったときにとるべき行動

    不測の事態にも落ち着いて冷静な対応を心がけることが重要です

名刺の同時交換で避けるべきNG行動

名刺交換で誤った対応をすると、相手に失礼な印象を与えてしまいます。丁寧に、誠実に対応することが名刺交換の基本です。マナーのあるビジネスパーソンと認識してもらうためにも、NG行動には注意しましょう。

着席したまま名刺交換

名刺交換は座って行うものではありません。会議室などで着席した状態であっても、名刺交換を行う際は必ず立つようにしましょう。

テーブル越しに名刺交換

名刺交換は、相手と対面したときに相手と自分の間に障害物がない位置で行います。テーブルを挟んだ状態で名刺を交換するのはNGですから、必ず1歩、テーブルの横に移動して、相手の正面で名刺交換を行いましょう。

会議室が狭いなど、移動スペースがない場合は「テーブル越しに失礼いたします」とひと言添えて名刺を差し出すとたいへんスマートです。

顔を下げたまま名刺交換

自分の会社名や名前は名刺を見なくても言えるはずです。名刺に視線を向けたままではなく、顔を上げ、相手の目に視線を合わせて笑顔で交換しましょう。

名刺入れ以外の収納場所から名刺を取り出す

名刺は基本的に、名刺入れで管理するのがビジネスマナーです。スーツのポケットや財布、手帳などから名刺を取り出すのはNGです。傷や汚れが生じる可能性も考えられるので、きちんと名刺入れで管理してください。

企業のロゴや氏名の上に指を置く

相手の会社のロゴや社名、氏名を隠すように指を重ねるのはたいへん失礼です。企業名やロゴ、相手の氏名に指がかかると、相手が「軽視されている」と感じて不快に思うことがあります。相手の名刺を持つときは指を余白部分に置くよう気を配りましょう。

相手の名刺をすぐ片付ける

受け取った名刺をすぐに名刺入れにしまうのはNGです。立っている間は名刺入れの上に持ち、テーブルがある応接室・会議室などの場合は、椅子に座ったタイミングでテーブルの上に置きます。商談中は「座布団」である名刺入れに載せた状態でテーブルに置くようにしましょう。名刺をしまうタイミングは、相手や周りの人に合わせれば間違いありません。

しかし受け取った名刺を片付けず、その場に忘れるなどということがあってはなりません。信用を失墜させることになりますので、受け取った名刺は忘れずに持ち帰りましょう。

相手の名刺をむやみに触る

名刺交換直後や会議中に、相手の名刺を曲げたりはじくなど、必要以上に名刺に触れることはNGです。無駄に触るのは相手に対して失礼にあたります。

  • 名刺の同時交換で避けるべきNG行動

    名刺の同時交換を成功させるにはマナーのある立ち居振る舞いが求められます

名刺の同時交換は正しいマナーで好印象につなげよう

近年では同時交換が主流となっています。同時交換の方法をしっかりと押さえておきましょう。立って交換する、名刺を受け取るときに「頂戴いたします」と言うなどの基本的なマナーは、従来の名刺交換と同じです。同時交換の際は、自分の名刺を差し出しつつ、相手の名刺を受け取るので、名刺にばかりに気を取られて顔が下がったままにならないように注意しましょう。

第一印象が、その後の関係性に影響することは充分にあり得ます。名刺の受け渡しだけでなく、名刺を受け取る前、受け取った後のマナーもしっかりと確認して、初対面の相手に好印象を与え、ビジネスの大きなチャンスにつなげてください。