昨年に引き続き、事実上オンライン開催になった(厳密にはTaiNEX:台北南港展示ホールを使っての展示も同時に行われている)COMPUTEX TAIPEIであるが、5月24日の開催に先駆けて5月23日に各社の基調講演が行われる。ただ今年Intelは(先にIntel Vision 2022を行ったためもあってか)不参加で、AMDとNVIDIA、NXPの3社が前日の5月23日に基調講演を行った。という訳でAMDの基調講演レポートをお届けしたい。
さてその今年のテーマであるが、Ryzen 6000 MobileとMendocino、AMD Advantage、それにRyzen 7000シリーズとAM5プラットフォームである。順にご紹介したい。
Mendocino
Ryzen 6000 Mobileシリーズは1月のCESの折に発表済であり、Business向けのAMD Pro 6000 Mobileも4月に発表済であるが、これに続く製品として今回Mendocinoが発表された(Photo01)。Mendocinoは$399~$699という価格セグメントの、いわゆるMainstream PCに向けたAPUであり、Zen 2コア+RDNA GPUをTSMC N6で製造する、いわば低価格版になる。ただCPU性能はともかくGPU性能はRDNA 2だし、TSMC N6だから省電力性もそれなりに期待できる。もっともZen 3+ほどの省電力機構を投入しているかどうかは微妙なところで、それもあってバッテリー寿命は10時間以上、とRembrandtことRyzen 6000 Mobileよりはやや控えめになっているが、低価格ノート向けとしては悪い選択肢ではなさそうだ。こちらは今年第4四半期に出荷ということで、搭載製品はクリスマス商戦辺りに市場投入される事になりそうだ。
AMD Advantage
次はGaming Notebook向けの新しいブランド(正確に言えばFramework)であるAMD AdvantageのUpdate。AMD Advantageというブランドそのものは昨年から提唱しているもので、主要なゲームで100fps以上のフレームレート、144Hz以上のディスプレイリフレッシュレート、100以上の設計の自由度などを備えたプラットフォームであり(Photo03)、これを構成するため技術要素として4つのSmart Technology(Photo04)が挙げられていたが、今回5番目の要素としてMicrosoftのDirectStorageに対応する、AMD SmartAccess Storageが追加 された。従来だとNVMe Storage→CPU→Memory→CPU→GPU、というルートでのデータアクセスになる。MemoryとCPUの間で例えば圧縮データの伸張などが行われるが、これがボトルネックになりがちである。SmartAccess Storageの場合、NVMe Storage→CPUに内蔵されているPCIe Root Complex→GPU、という形で直接NVMe StorageからGPUにデータが転送され、GPU内部でデータの伸張が行われる。これにより高速化が実現できるというものだ。勿論これを利用するためにはゲームの側もDirectStorageに対応している必要があるので、何でも高速化できるという訳では無いが。
このSmartAccess Storageは別にMobile向けという訳ではなく、勿論Desktopでも利用可能な技術であるが、SmartAccessシリーズに含まれたことで今後はAMD Advantageの技術要素としても提供されることになる。
それはともかくとして、今年このAMD Advantage Gaming Noteは50製品以上が市場投入される予定との事である(Photo06)。
Ryzen 7000+AM5 Platform
さてお待ちかねのDesktopである(Photo07)。Zen 4コアを使い、TSMC N5で製造されるRyzen 7000シリーズであるが、1 Thread性能がRyzen 9 5950X比で15%アップしており(Lisa Su CEOによれば動作周波数とIPCの両方を向上させることでこれを実現した、としている)、L2が1MBに増量。Max Boostは5GHzを超えるほか、AI Acceleration命令が追加されているという。AI Acceleration命令が独自のものなのか、それともAVX512をベースとしたVNNI(Vector Neural Network Instructions:第2世代Xeon Scalableで実装されている)なのかは不明であるが、もしVNNIを実装しているとすればBF16のサポートもAVX512命令に追加されていそうだが、このあたりは現状未公開である。
パッケージの構造は従来と同じで、CPU Chiplet×2とI/O Chipletが収まる構造である(Photo09)。ダイの詳細がこちらで、CPU ChipletはCPUコア×8、一方I/O ChipletはTSMC N6で製造され、PCIe 5.0/DDR5の対応に加え、予想通りRDNA2ベースのGPUが統合された(Photo10)。プラットフォームの方もこれに合わせ、AM5に切り替わった。DDR4のサポートは期待できないが、クーラーそのものはAM4世代と互換性があるとされる(Photo11)。このAM5プラットフォーム、PCIe Gen5レーンを24本、20GbpsのUSBを最大14本、HDMI 2.1/DisplayPort 2を最大4本出せる、としている(Photo12)。勿論これはハイエンド向けの話で、メインストリームとかバリュー向けではここまでフルに出るかどうかは不明だが。ちなみにPCIe 5.0がx24というのが、チップセット接続用のものも含んでの数字なのかどうかは不明だが、もし含んでいないとすればCPUからNVMe M.2 SSDを2本接続できる事になる。
そのAM5対応のチップセットだがX670 ExtremeとX670、B650の3種類が今回発表になった(Photo13)。またコンシューマ向けPCIe Gen5 SSD用のコントローラそのものはPHISONが昨年9月に発表しているが、これを利用したSSDが12社から提供予定だそうで(Photo14)、性能は60%以上向上するとしている(Photo15)。既に5社からフラグシップマザーボードが用意されているとの事であった(Photo16)。
ところでそのRyzen 7000シリーズであるが、実際にデモが2つほど実施された。まずはGhostwire TokyoのDemo Play(Photo17)であるが、デモ中に最大5520.3MHzに到達(Photo18)、TSMC N5の素性の良さをアピールした。もう一つが、Blenderを使ってのレンダリング速度比較(Photo19)。16コアのRyzen 7000シリーズはCore i9-12900Kと比較して31%高速であるとした。
このRyzen 7000シリーズ(とAM5プラットフォーム)は、今年秋に出荷を予定しているとの事だ(Photo20)。
ところで最後にこぼれ話を一つ。先のPhoto15における60%以上というテストの構成であるが、脚注を見るとテスト構成としてAMD Reference X670マザーボードに量産前試作の16コアRyzen 7000プロセッササンプルというのはいいとして、組み合わせているメモリがDDR5-6000 CL30 16GB×2となっている。現在はDDR5-4800がOC無しのメモリとしては標準的だが、Ryzen 7000シリーズが出るころには早くもDDR5-5600とかDDR5-6000が求められるようになるのかもしれない(メモリベンダーがこれに間に合う様に出せるのか? は疑問だが)。