横浜市営地下鉄ブルーラインの新型車両4000形が、5月2日から営業運転を開始した。1992(平成4)年に導入された3000形以来、30年ぶりの新形式となる4000形に対する地元の期待も高い。新型車両に乗車し、乗り心地や特徴を実際に体感した。
ブルーラインでは、3000A形(3000形1次車)の導入後、仕様変更を行いつつ、同形式の製造と導入を継続してきた。最初に投入された3000A形の老朽化が顕著になり、当初は3000V形(3000形5次車)を増備して置き換える予定だったが、予定を変更し新形式の製造を決定したという。
新形式となる4000形は川崎車両で製造され、試運転など経て5月2日から運行開始した。現在、横浜市交通局の公式サイトにて、4000形の運行予定日・時刻が公開されている。これから新型車両への乗車を考えている人は参考にしてほしい。
新型車両4000形のデビューから1週間ほど経った平日、筆者は新横浜駅からブルーラインを利用した。新横浜駅では2023年3月開業予定の相鉄・東急直通線に関連する工事が進められており、ブルーラインのホームも改札口新設工事の関係で、少し狭くなっている箇所がある様子。新横浜駅は日産スタジアムや横浜アリーナへの最寄り駅でもあるため、イベント開催時はかなり混雑する。
横浜市在住の筆者にとって、ブルーラインは利用する機会の多い身近な路線。鉄道ファンから見ると決して華やかな路線ではないかもしれないが、横浜市の北部から南部・西部まで1本で結び、地元の人々を堅実に運ぶ姿は見ていて興味をそそられる。
新型車両4000形で運転される湘南台行の快速がやって来た。横浜市営地下鉄の車両といえば、近未来感やシャープさを感じさせる「く」の字型の先頭形状がデザインにおける伝統のひとつだが、4000形ではその特徴が少し控えめになったように思える。先頭端部のエッジがかなり際立ち、従来とは違う方法でシャープさと洗練された印象を与えているように見受けられた。
先頭部や側面には、新型車両であることをアピールする「4000 DEBUT」の文字が踊り、3000S形(3000形4次車)まで先頭部に配していた横浜市交通局のキャラクター「はまりん」のイラストはなくなっている。ホームドアを考慮してか、窓下の帯だけでなく、ドア横にもラインカラーにちなんだ装飾が施されていた。
車内に入ると、新車特有の香りが漂う。ドアチャイムは2音チャイムで開閉時に2回鳴るほか、開扉中は東武鉄道50000系列などと同様に音を発する。側扉の鴨居部分は黒で、大型のLCDを2画面設置。ブルーラインの従来車両では設置されていなかった防犯カメラが、側扉の鴨居部に千鳥配置で取り付けられた。床部は青色で、貫通扉のガラス部分に横浜の観光名所があしらわれている。
座席に座ってみると、従来車両と比べて1人あたりのスペースが広くなっていることを実感できる。平日の昼間に乗車したこともあり、乗客はまばらで、先頭車両付近が最も混雑している様子だった。横浜駅や桜木町駅へ向かうのだろうか、おしゃれをした女性の利用者が多いように感じられた。
新横浜駅を発車した4000形の快速は、途中駅をすべて通過し、横浜駅へ向かう。走行音は従来車両と比べて非常に静かである。この区間はカーブが多いが、揺れはほとんど気にならない。途中で座席を立って移動してみたが、一度もよろめくことはなかった。
車両間の貫通扉を開けてみると、マグネット状の簡易ロック装置が付いている。力を入れなくても容易に開き、手を離すと自動で閉まるのでありがたい。車いす・ベビーカー利用者向けのフリースペースは各号車に設置されている。
車内を観察しているうちに、あっという間に横浜駅に到着した。横浜市を代表する駅ゆえに、多くの乗客が降りて行く。筆者も一旦下車し、改札口を出た後、センター北駅まで戻ることにした。その途中、置換え対象である3000A形にも乗車したが、当然ながら設備や性能面で4000形と大きな差がある。車両は30年経つとここまで進化するのかと、驚きを隠せなかった。
沿線の各所で4000形を見ることに夢中になってしまい、気づけば夕方に。最後にセンター北駅付近のショッピングモールからブルーラインとグリーンラインの線路を眺め、家路についた。
グリーンラインも含め、市営地下鉄の各駅で新型車両4000形のポスターが掲示されていた。あざみ野駅では4000形のプラレールまで展示されており、横浜市交通局としてもアピールを強めたいねらいがある様子。4000形の車内でも、こども連れの乗客が楽しんでいる様子が見られ、地元の人々にとっても期待の高い車両であることがうかがえた。
ブルーラインの新型車両4000形は現在、1編成のみの運行だが、2023年度にかけて全8編成を製造し、3000A形を順次置き換える予定となっている。港町横浜を駆けるニューフェイスへの期待は大きくなる一方だろう。