日産自動車は新型軽電気自動車(軽EV)「サクラ」(SAKURA)を発表した。同社の星野朝子執行役副社長は発表会に登壇し、「(軽EVの発売は)日産にとっても初めてですし、日本にとってもカーボンニュートラルのエポックメイキングな日になるのでは」とコメント。補助金を使うと200万円を切るチャレンジングな価格設定にも自信を示した。
星野副社長はサクラの特徴について、「見た目はシックで先進的なデザイン。特徴はなんといっても電気自動車の胸のすくような走行性能と静粛性。EVならではの上質で広い室内空間も担保できている」とした。自身もEV「リーフ」のオーナーであり、EVの走りの良さについては身をもって知っているとしながらも、「サクラに乗った瞬間、取り回しの良さや走り、静かさに『ワオ!』と声が出るくらい感動した」とのこと。弊紙ではサクラに一足早く試乗できたのだが、その際の印象については別稿でご紹介している。
発表会ではサクラの気になる点についていくつかの質問が出た。質疑応答の模様は以下の通り。
――(ベースとなっている軽自動車の)「デイズ」と同じようなデザインで登場するかと思っていたが、サクラは専用デザインを採用している。コストもかかったと思うが、その意図は?
デザイン担当の田勢信崇さん:軽なのでデイズとパッケージングは酷似しており、いかに違いを出すかが課題だった。同じテーマだと電気自動車としての訴求がいまひとつになってしまうので、EV「アリア」のモチーフも取り入れつつ一新した。専用デザインは軽EVに対する意気込みだと理解してほしい。
――バッテリー性能の劣化や下取り価格への不安があることから、EVをサブスクのみで販売しているメーカーもある。日産の対応は。
星野さん:日産はすでに12年、累計82万台以上のEVを世界で販売してきた経験がある。16万km、8年間のバッテリー保証をつけているが、これまで、リーフのバッテリーをその保証で交換したことはほとんどない。
残価への不安はあると思うが、日産では残価設定型クレジットも提供している。EVの残価は向上しており、今ではガソリン車と同等か、これを上回るレベルになった。
サブスクについては「NISSAN ClickMobi」を展開しているが、利用者は若い方が多い。サクラは若い方にも乗ってもらえるクルマだと考えているので、ClickMobiにラインアップする予定だ。
――EVは徐々に普及しているが、全国の充電スタンドは数が十分ではない。日産の対応は。
星野さん:充電スタンドの数はガソリンスタンドと同じくらいになった。日産のほぼ全ての販売店に急速充電器があるし、高速道路や道の駅にもある。社会にとっても重要なインフラなので、まだまだ増えていくと思う。
軽EVに関しては、ガソリンスタンドへ行くのに往復10km、20kmといった地域にお住まいの方は、自宅で充電していただくと、ライフスタイル、生活様式を変えるきっかけになると考えている。
――バッテリーの劣化を心配する人もいると思うが、対策は。
車両開発責任者の坂幸真さん:日産は2010年からEVを販売してきた実績があり、たくさんのデータを蓄積している。どうしたらバッテリーが劣化するかについてはさまざまな経験があるし、バッテリーを最もよく知る会社だという自負もある。バッテリー劣化の要因のひとつは熱なので、サクラにはエアコン冷媒を使用したバッテリー冷却システムを搭載している。
サクラのグレードは3種類。価格は「S」が233.31万円、「X」が239.91万円、「G」が294.03万円だ。国の補助金55万円を使えば中間グレードのXなら実質約184万円からとなるし、自治体の補助金(例えば東京都なら45万円)を活用すればさらに安くなる。
カタログを見ると、XとGの装備は書いてあるのだが、Sについては記載がない。そのあたりについて日産に聞いてみると、Sは法人(フリート)用に設定したグレードであるとのこと。Xとの違いとしては、リアシートが分割式になっていなかったり、リクライニングができなかったりする。ただ、Sは個人でも買えるとのこと。軽EVを買い物と通勤くらいにしか使わない、という人であれば、Sを買うのも悪くなさそうだ。
家で充電できればとても便利なサクラ。充電設備の取り付けにはお金がかかる(充電器が約10万円、それに工事費)が、そのあたりをサポートしてくれる販売店もあるそうなので、購入の際は要チェックだ。