三菱自動車工業が軽自動車の電気自動車(EV)「eKクロス EV」を発表した。発売は2022年夏の予定。価格は239.8万円からだが、補助金の対象となるので実質的な購入額は184.8万円からとなる見通しだ。どんなクルマなのか、少しだけ運転して商品企画担当に話を聞いてきたのでお伝えしたい。

  • 三菱自動車「eKクロス EV」

    三菱自動車の新型軽EV「eKクロス EV」

補助金で200万円以下に?

eKクロス EVには「G」と「P」の2グレードがあり、価格はGが239.8万円、Pが293.29万円となる見通し。令和3年度補正予算「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」・令和4年度「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(最大55万円)の補助金を受けたとするとGの価格は200万円を切り、地域によってはさらなる補助金も期待できる。ちなみに、eKクロスの価格は約146万円~168万円だ。

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    撮影したのは「P」グレード。ボディカラーは「ミストブルーパール」と「カッパーメタリック」の2トーン

気になる航続可能距離はフル充電で180km(WLTCモード)。三菱自動車の調べによると、軽自動車およびコンパクトカーの利用者は約8割が1日当たり50kmも走らないそうだから、そういったユーザーがeKクロス EVを使う場合、数日は充電なしで過ごせることになる。充電は「普通充電」(AC200V/14.5A)と「急速充電」に対応。普通充電なら約8時間で満充電となり、急速充電なら約40分で80%まで充電できるそうだ。

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    2種類の充電口は車体右側後方の1カ所に集約されている

駆動用バッテリーの総電力量は20kWh。モーターの最高出力は47kW、最大トルクはeKクロス ガソリンターボモデルの約2倍となる195Nmに達する。限られた敷地の中を少しだけ乗ってみた印象では、eKクロス EVの走りは軽とは思えないほどなめらかでスムーズだった。軽だと上り坂や高速道路などでエンジンが大きな音を発するので、なにかクルマに無理をさせているような感覚を覚えがちだったのだが、EVはあくまで静かに力強く走るので、運転する際のストレスは大幅に減るのではないかと思う。

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  • 撮影車はメーカーオプションの「プレミアムインテリアパッケージ」を装着。内装色はライトグレー、シート生地は合成皮革&ファブリックだ

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  • デジタルルームミラーはメーカーオプション「先進安全快適パッケージ」に含まれる

EV独自の機能として、駆動用バッテリーの電力を取り出して電化製品を動かしたり(V2L)、住宅に給電したり(V2H)といった使い方も可能。クルマとしての先進性も高く、グレードによっては高速道路同一車線運転支援機能「マイパイロット」(ACCのこと)のほか、三菱自動車では初採用となる「マイパイロット パーキング」(使ってみると、ほぼ自動駐車だった)まで搭載している。

充電環境などの使用条件がクリアできて、価格との折り合いがつく人には魅力的な軽EVだが、どういった狙いで開発を進めたのだろうか。三菱自動車 商品戦略本部 CPSチームの今本裕一さんに話を聞いた。

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    「eKクロス EV」は全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,655mm、ホイールベース2,495mm、室内長2,065mm、室内幅1,340mm、室内高1,270mm。車両重量は「P」が1,080kg、「G」が1,060kg。駆動方式は2WD(前輪駆動)のみ

EV化で軽の商品価値が大幅に向上?

マイナビニュース編集部:eKクロス EVは文字通り、eKクロスのEV版と考えてよろしいですか?

今本さん:まさにそうです。まるっきりの新作というよりも、eKクロスのEV版を提供することにしました。

編集部:軽EVを発売するという発表は拝見していたんですが、クルマをゼロから作るのか、既存の車種をEV化するのかはわかりませんでした。

今本さん:クルマづくりはプラットフォームをどうするか、そこに何を乗せるかということで、軽自動車の場合は、どのメーカーにも守るべき規格(例えばボディサイズ)があります。私たちはプラットフォームをもっているので、活用しました。軽EVの開発主導は日産自動車ですが、車両の構想としては三菱自動車が「アイミーブ」(i-MiEV、三菱のEV)というアセットを持っていましたので、そこに日産のFFの技術も取り込むことで、完全なる協業で開発しました。

日産のスタンスとしては、EVはイノベーションの象徴、新しいクルマとして提供する。三菱も生活を変えるクルマとして提供しますが、これまでと全く違うクルマというよりも、軽EVを身近に感じてもらいたいと考えました。これまで、EVには使い勝手が悪い、値段が高いといったイメージがあって敷居が高かったのですが、それを解決する手段になると思います。EVだからといって気をはらず、値段としてはガソリンエンジンモデルよりも少し高いですが、そこまで変わらない水準で提供したかったんです。夜間充電を有効に使っていけば、EVは車検も安いので、ランニングコストを抑えられます。

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    左が「eKクロス」、右が「eKクロス EV」

編集部:軽のターボよりも少し高いくらいだとすれば、EVの走りや静粛性などを考慮すると、価格のプラス分よりも得られるものの方が多そうだと思いました。

今本さん:私もそう思います。「え?」というくらい静かですし、出足のトルクはパワフルなので、クルマとしては2クラス上といった感じの仕上がりです。軽自動車が苦手とするバイパスでの合流とか、首都高速道路に乗るような場面でも、ガソリンエンジンと比べてダイレクトな加速が得られるので、ストレスがありません。そこは売りになると思います。

編集部:軽を高い速度域で走らせたり、上り坂に差し掛かったりすると、エンジンに無理をさせてしまっているようで、クルマに悪いなという気持ちになります。それがないとすると、確かに気持ち的に楽ですね。

今本さん:エンジン音が「助けてー!」という感じに聞こえることは、どうしてもありますよね。ターボならまだいいのですが、ノーマルだと、80km/hを超えるとどうしても音がしますし、軽自動車ユーザーの中には高速道路が怖いと思う方もいらっしゃるようです。

その点、eKクロス EVの安定感は抜群です。車高は少し上がっていますが、床下に搭載するバッテリーの重さがありますし、多少の横風でもふらつきません。重量の前後バランスは、理想形に近づきました。軽自動車で考えると、重量配分は秀逸だと思います。

編集部:軽自動車といえば使い勝手も重要な評価基準になると思うのですが、EV化で何か犠牲になった部分はありますか? 車内のスペースが狭くなるなど、変化はありますでしょうか。

今本さん:基本的には問題ないと思います。使い勝手をできるだけ阻害しないようにと考えて開発しました。バッテリーを積むので少し床が上がっていて、シートの段差が少し浅くなったり、ラゲッジのアンダーも積載量が減っていますが、基本的に影響はクルマのアンダーの部分で抑えています。

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  • 三菱自動車の軽EV「eKクロス EV」

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