アップルが、プライバシー保護の新しいテレビCMを公開しました。「iPhoneのプライバシー|個人情報オークション」と名付けられたこのCM、スマートフォン内にある自分のメールや購入履歴、行動履歴などの個人情報が知らない間に盗み取られ、オークションで大金を付けて売られている…というゾッとする事実をコミカルに説明しています。最後の部分では、iPhoneならばそれらの不安を回避できる設定の存在も合わせて解説。短いCMの中に詰まったiPhoneのプライバシー保護の仕組みを、解きほぐしながら改めて見ていきましょう。
自分の個人情報が知らない誰かにオークションで売り渡されている
「個人情報の“ダダ漏れ”は許さない」「ユーザーの個人情報でお金儲けをするのは許されない」と、プライバシー重視の取り組みを続けていることで知られるアップル。2021年の「iPhoneのプライバシー|追跡」という内容のCMに続き、今年は個人情報オークションの存在に着目した内容のテレビCMを公開しました。
「エリーの個人情報オークション」と掲げられた部屋に多くの人が集まり、エリーのもとに届いたメールの内容やドラッグストアで買った商品の購入履歴、行動履歴、さまざまな取引の明細がオークションにかけられて売られている…という内容です。
「これはCMだから現実離れした極端な内容にまとめているんじゃないか」と思う人がいるかもしれません。しかし、トラッキングの技術を通じて盗み取られた個人情報は、自動的にオークションにかけられ、誰かの手に渡って広告などに利用されているのです。
iPhoneのプライバシー保護は設定アプリでいつでも強化できる
このような個人情報のやり取りを防ぎ、ユーザーのプライバシーを保護するためにアップルはさまざまな機能をiPhoneに用意しています。それらの成果が確認できるのが「Appプライバシーレポート」と「Safariプライバシーレポート」です。
Appプライバシーレポートは、過去7日間にさまざまなアプリがどのような個人情報にアクセスしたのかをまとめて参照できる機能。連絡先や位置情報、カメラ、マイクにアクセスしたか、どのようなWebサイトにアクセスしたかがひと目で分かります。Appプライバシーレポートは「設定」→「プライバシー」→「Appプライバシーレポート」で参照できますが、あらかじめ機能をオンにしておく必要があります。
天気アプリが位置情報を参照するのは、現在地の情報を表示するために必要なので問題ありません。しかし、ゲームアプリが連絡先やメディアライブラリを参照するなど、アプリの内容とは関係ない不必要な情報を参照しているようであれば、それぞれの情報へのアクセスを禁止しておくのがよいでしょう。
情報へのアクセスは、「設定」→「プライバシー」をたどると一覧で表示される「連絡先」「カレンダー」などの項目をタップし、アプリの右側にあるスイッチをオフにすることで設定できます。
Safariプライバシーレポートは、Safariに搭載されたトラッキング防止機能により、どのような効果が得られたかをまとめて参照できる機能。どのようなWebサイトを閲覧したかを追跡して広告表示に利用するトラッカーの追跡をどれだけ抑制できたかが確認できます。
トラッキングはさまざまなアプリ間でも行われていますが、iPhoneは設定アプリによりこれを禁止できます。新たにアプリを導入した際は、最初に起動した時に現れる「アクティビティをトラッキングすることを許可しますか?」というダイアログで設定できます。急いでいてうっかり許可をタップしてしまっても、あとで「設定」→「プライバシー」→「トラッキング」の項目でオンオフできます。
アップルは、メール経由での個人情報の盗み取りを防止する機能「Mail Privacy Protection」も用意しています。ダイレクトメールのなかには、1ピクセルの見えない画像を密かに埋め込み、メールを見ると同時にIPアドレスや位置情報、メール開封の日時を盗み取る仕掛けが用意されているものもあります。そのようなたくらみを防ぐのがMail Privacy Protectionで、「設定」→「メール」→「プライバシー保護」にある「“メール”でのアクティビティを保護」を有効にしておくだけで、個人情報の盗み取りを防げます。
スマートフォンとプライバシーにまつわる話を解説した「あなたのデータの一日」
かつて、アップルをiMacやiPod、iPhoneで再興に導いたスティーブ・ジョブズ氏は、早くからアップル製品のユーザーのプライバシーを守ることに注力していました。ジョブズ氏が「アップルは『もうやめてくれ』と言われるまで、その個人データを何に利用しようとしているのか、しつこく尋ねます」と語った2010年のD8カンファレンスの講演は有名です。
そのフレーズが冒頭に掲載された「あなたのデータの一日」と題したストーリーが、アップルのプライバシーのWebサイトで公開されています。とある父娘がスマートフォンを手にして何気ない一日を過ごしている裏側で、さまざまなプライバシー情報が知らない間に業者に渡り、広告の表示に利用されていることを分かりやすく解説しています。春の新生活時期に自分のiPhoneを手にした家族と一緒に、改めて一読してみるとよいでしょう。