LGエレクトロニクス・ジャパンは、薄型テレビの2022年モデルを5月下旬から順次発売する。4K有機ELの4シリーズ12機種、4K液晶の3シリーズ11機種を用意し、価格はすべてオープンプライス。有機EL最小の42V型「42C2PJA」は5月下旬発売予定で、店頭予想価格は24万円前後。
2022年モデルの大きなトピックとしては、有機ELテレビに“LG史上最高画質”をうたう「OLED evo Gallery Edition」パネルを搭載した最上位機を投入。有機ELで最小サイズとなる42V型モデルを追加するなど、サイズやデザインのバリエーションも増やした。また液晶テレビでは、量子ドットナノセルカラーテクノロジーを採用した「QNED」シリーズのラインナップを比較的手ごろな価格帯まで拡充している。
有機ELと液晶共に、独自のリアルタイムAIプロセッサーを採用した映像エンジンを第5世代に進化させて性能強化を図り、独自プラットフォーム「webOS 2022」に個人アカウント機能を追加したことなども注目ポイントといえる。
最上位有機ELは“LG史上最高画質”。42V型や北欧デザイン機も
有機ELテレビ最上位シリーズとなる「G2」は、“LG史上最高画質”を追求。2021年に市場投入したOLED evoパネルをグレードアップし、色の再現性と明るさを強化した「OLED evo Gallery Edition」を新たに搭載している。
OLED evo Gallery Editionでは新しい発光素材を使い、赤・緑・青の波長を改善するとともに、新しいカラーレイヤーを追加することで色の再現性を強化。さらに、明るさを際立たせる「ブライトネスブースターマックス」技術と、第5世代に進化したAIプロセッサーを採用したことで、従来の有機ELテレビより明るさが向上しており、暗部の豊富な色数を維持しつつ高輝度方向の色表現に深みを増した画作りになっているという。
42V型から83V型まで幅広いサイズをそろえた「C2」シリーズと、アート作品のような北欧デザインの「ART90」には、これまで最上位機(G1シリーズ)で採用していたパネルと同じ「OLED evo」を搭載。「B2」シリーズは従来タイプの有機ELパネルとなる。有機EL機はいずれも、Intertekの色再現忠実度100%をクリアしたとアピールしている。
いずれもテレビと壁の間のスキマをなくしてぴったり設置できる「ギャラリーデザイン」を採用(ART90は床置きのスタンドを標準装備)。別売オプションとして、壁寄せ設置ができる既存の「ギャラリースタンド」に加え、新たに4本足デザインの「フロアスタンド」(FS22GA、実売28,000円前後)を用意する。
ラインナップと店頭予想価格、発売時期は以下の通り。
■G2シリーズ(OLED evo Gallery Edition)
- 77V型「OLED77G2PJA」:83万円前後 / 5月下旬
- 65V型「OLED65G2PJA」:55万円前後 / 5月下旬
- 55V型「OLED55G2PJA」:40万円前後 / 5月下旬
■C2シリーズ(OLED evo)
- 83V型「83C2PJA」:99万円前後 / 5月下旬
- 65V型「65C2PJA」:45万円前後 / 5月下旬
- 55V型「55C2PJA」:32万円前後 / 5月下旬
- 48V型「48C2PJA」:25万円前後 / 5月下旬
- 42V型「42C2PJA」:24万円前後 / 5月下旬
■ART90シリーズ(OLED evo)
- 65V型「65ART90EJQA」:99万円前後 / 6月中旬
■B2シリーズ(有機EL)
- 77V型「77B2PJA」:60万円前後 / 6月中旬
- 65V型「65B2PJA」:39万円前後 / 6月中旬
- 55V型「55B2PJA」:27万円前後 / 6月中旬
異彩を放っているのが、ART90シリーズの「65ART90EJQA」(65V型)。デンマークのファブリックメーカー「kvadrat(クヴァドラ)」と協業し、キャンバスアートのようなデザインに仕上げているのがユニークだ。
テレビを見ていないときは、ファブリック調の電動カバーを上部にスライドさせることで、インテリア風の佇まいに早変わり。この状態で、4K/3,840×2,160ドットの有機EL画面の縦約3分の1程度を残して、時計などを表示させる「ラインビュー」機能が利用できる。
発表会場では、手持ちのスマートフォンをテレビと接続し、ステレオBluetoothスピーカーのように使う実機デモを体験できた。ただし、テレビ側から音楽ストリーミングサービスの楽曲を再生するといった使い方はできない模様だ。
量子ドット液晶「QNED」バリエーションを拡充
液晶テレビの2022年モデルでは、量子ドット液晶パネルを搭載した「QNED85」シリーズと「QNED80」の2シリーズを新たに投入。通常の4K液晶パネルのエントリーモデル「UQ9100」を加えた3シリーズ11機種で展開する。
最上位のQNED85JQAシリーズは、ミニLEDバックライトと量子ドットナノセルカラーテクノロジーを組み合わせ、明るさと深い黒、鮮やかな色の表現力を追求した「QNED MiniLED」パネルを搭載。QNED80JQAシリーズはエッジ型部分駆動のLEDバックライトを採用している。
これまで展開してきた「NanoCell」シリーズの名前は2022年のラインナップから消え、それを置き換えるようなかたちで、量子ドットとナノセルを組み合わせたQNEDシリーズを手に取りやすい価格帯まで充実させた。
ラインナップと店頭予想価格、発売時期は以下の通り。
■QNED85シリーズ(量子ドット液晶「QNED MiniLED」)
- 86V型「86QNED85JQA」:66万円前後 / 6月中旬
- 75V型「75QNED85JQA」:44万円前後 / 6月中旬
- 65V型「65QNED85JQA」:35万円前後 / 6月中旬
- 55V型「55QNED85JQA」:28万円前後 / 6月中旬
■QNED80シリーズ(量子ドット液晶「QNED」)
- 55V型「55QNED80JQA」:17万円前後 / 6月中旬
- 50V型「50QNED80JQA」:15万円前後 / 6月中旬
■UQ9100シリーズ(液晶)
- 75V型「75UQ9100PJD」:22万円前後 / 5月下旬
- 65V型「65UQ9100PJD」:17万円前後 / 5月下旬
- 55V型「55UQ9100PJD」:13万円前後 / 5月下旬
- 50V型「50UQ9100PJD」:12万円前後 / 5月下旬
- 43V型「43UQ9100PJD」:10万円前後 / 5月下旬
LG薄型テレビ 2022年モデルの主な特徴
数百万の映像ソースを学習した、独自の第5世代リアルタイムAIプロセッサーを全機種で搭載。地上波やネット動画など、あらゆるコンテンツに合わせて映像の画質を自動で調整して映し出し、さらに音声を臨場感あるバーチャルサラウンドに変換するといった機能も備える。
機種によって搭載している映像エンジンの名称や機能が異なり、有機ELのG2、C2、ART90の各シリーズには「α9 Gen5 AI Processor 4K」、有機ELのB2と、液晶のQNED85、QNED80の各シリーズは「α7 Gen5 AI Processor 4K」、UQ9100シリーズは「α5 Gen5 AI Processor 4K」を搭載している。
なかでも、有機ELの上位機種で採用している「α9 Gen5 AI Processor 4K」の強化ポイントとなるのが、第5世代から新たに追加した「オブジェクト型リアルタイム映像処理」だ。これは、入力されたオリジナル映像からAIがさまざまな物体を認識し、映像の色・明るさを分析し、立体的で自然な色彩を実現するというもの。それぞれの被写体ごとにコントラストを増し、よりリアルな映像として映し出すという。
高画質技術ではほかにも、人の肌の色をナチュラルに保ちながら、細部までの鮮やかな映像再現を行い、暗部を引き締めつつ階調豊かな映像が楽しめるという「ダイナミックビビット処理」などを投入し、高画質化を図った。HDR方式は、HDR10 Pro、HLG、Dolby Vision IQに対応する(QNED80/UQ9100シリーズはHDR10 Pro、HLGに対応)。
パネル解像度は有機EL、液晶ともに4K/3,840×2,160ドット。チューナー数は、有機ELのG2、C2、ART90シリーズがBS4K/110度CS 4Kチューナー×2と地上/BS/110度CSチューナー×3。有機ELのB2と、液晶のQNED85、QNED80、UQ9100シリーズはBS4K/110度CS 4Kチューナー×1と地上/BS/110度CSチューナー×2。いずれも外付けUSBハードディスクへの番組録画に対応している。サウンド面では、立体音響のDolby Atmosをサポート(QNED80/UQ9100シリーズはのぞく)。
システムには独自のプラットフォーム「webOS 2022」を採用。2022年モデルでは個人アカウントを切り替える機能が追加され、ユーザーの好みに合わせてアカウントごとにホーム画面のコンテンツ表示や番組表のカスタマイズが可能になった。利用できるネット動画サービスは、YouTubeやNetflix、Hulu、Amazon Prime Video、U-NEXT、Apple TV、Disney+など。
ゲーム機能を強化しているのも特徴で、上位機種は120Hz対応Dolby VisionとDolby Atmosでのゲームプレイに対応。PCとテレビのリフレッシュレートを同期させることで、ゲーム映像で発生するズレやカクつきを抑制する「NVIDIA G-SYNC Compatible」や、120Hzや低レイテンシーに対応しティアリングのないスムーズなゲーム体験を実現する「AMD FreeSync Premiumテクノロジー」などをサポートする。
ゲームプレイ中も現在の設定が一目でわかる画面UI「ゲームダッシュボード」や、自分のプレイ環境やゲームジャンルに合わせて画質モードを自由に選べる「ゲームオプティマイザ」も装備。HDRゲームの普及団体HGiGに準拠し、ゲームシーンによって発生する白飛びや黒つぶれを防ぎ、HDRのゲーム世界を美しく再現する。
ほかにも、クラウドゲーム「GeForce NOW」に全機種で対応。ゲーム機器をつながずテレビだけで、40以上の無料ゲームタイトルを含む1,000以上のゲームを楽しめるという。
HDMI入力はいずれも4系統備え、有機ELのG2シリーズはすべてHDMI 2.1対応で、48Gbps/4K120Hz入力をサポート(G2シリーズ以外は2系統のみHDMI 2.1対応)。映像のカクつきなどを抑える「VRR」や、コンテンツに応じて画質優先/低遅延優先を自動で切り替える「ALLM」、Dolby Atmos/DTS:Xなどのサラウンド音声の伝送も可能な「eARC」といった機能が利用できる。なお、エントリーモデルのUQ9100シリーズはHDMI×3で、すべてHDMI 2.0対応となる。
操作性については、全機種で音声操作に対応しており、テレビに向かって「Hi, LG!」と話しかけると、LG独自のAI「ThinQ AI」が起動。電源のオン/オフや音量調整などの操作が行える。Amazon AlexaとGoogleアシスタントもサポート。また、LGテレビでおなじみの、テレビに向けてリモコンを振るだけで使える「マジックリモコン」に引き続き対応する。
なお、2021年発売の8Kテレビ「OLED 88Z1PJA」(有機EL)、「QNED99」(液晶)と、4Kテレビ「OLED 77Z1PJA」(有機EL)、「QNED90」(液晶)は2022年も継続販売予定だ。
新時代のテレビ目指すLG。「有機ELをもっと手軽に」
5月19日に開催された報道陣向けの発表会場では、LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティング統括責任者の宇佐美夕佳氏が、同社テレビ製品の2022年モデルについて説明した。
宇佐美氏は、「LGは有機ELテレビのリーディングブランドとして常に世界初、そして日本初の製品を展開し続けてきた」とコメント。自社の有機ELテレビ出荷状況については、「2021年には世界で約400万台と過去最高の出荷数を記録、販売試合も62%に達している。有機ELテレビの購入者のうち、6人に1人がスタンダード『C1』シリーズ(2021年モデル)を購入しており、LGの有機ELテレビが身近になっていることがわかる」と話す。
また、2019年から2021年までの、国内における4Kテレビの出荷台数の構成費をインチ別で分析したデータを紹介した。それによると、65V型以上の構成比が18%(2019年)から29%(2021年)に増えており、4Kテレビに占める有機ELの割合は48%から51%まで増加。50V型以下の有機ELの構成比も上がり、「パーソナルテレビのプレミアム化」と「倍速液晶から倍速有機ELへ」の流れがあると見ているそうだ。
この結果を踏まえ、宇佐美氏は「大画面が求められる広いリビングだけではなく、書斎や寝室などプライベートルームにおいても、プレミアムなパーソナルテレビを求める家庭が増えたということではないか」と分析。
そして「我々は今年、新時代のテレビを作るため、有機ELテレビをもっと手軽にという声に応え、史上最小モデルとなる42V型を新たに投入する。過去最大の計7サイズからなる豊富なラインナップを用意。有機EL史上最高画質のテレビも発表する」と語り、最新機種を力強くアピールした。