毎月20万円の年金受給は、平均的な会社員よりもやや多い水準です。年金20万円あればゆとりのある暮らしになりそうと思う人も多いのではないでしょうか。
今回は高齢の単身世帯に焦点を当て、家計支出などのデータを参考に毎月の家計を試算し、年金20万円で足りるのかどうかを解説します。
■月20万円の年金がもらえる人の現役時代の年収は?
まず、そもそも年金を月20万円受給できるのは、現役時代にどの程度の収入があった人なのかを考えてみましょう。
会社員は原則として65歳から、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類を受給できます。老齢基礎年金は、月額6万5,075円(令和3年度時点・未納や免除がゼロの場合)です。老齢厚生年金は、現役時代の収入金額と勤続年数を使って計算可能です。
結論として、月額で60万円近く、年収で700万円ほど(賞与を含めて)の方が、厚生年金を毎月20万円受給できる計算になります。
■月20万円の年金の手取りはいくら?
遺族年金や障害年金には税金がかかりませんが、老齢年金には税金がかかります。60歳以上の場合は108万円、65歳以上だと158万円以上の場合に課税されます。
月20万円・年間240万円の場合の手取り率は86.7%が目安で、手取り額は年間208万800円、毎月にすると約17万3,400円となります。
■1人暮らしの場合の家計支出はどうなる?
月20万円の年金は、手取りで約17万3,400円であることが分かりました。ここからは、その金額で生活が成り立つのかについて、家計支出から考えていきます。
ここでは1人暮らしの方を対象に、マイホーム保有(住宅ローンは完済)と賃貸の場合に分けてみていきましょう。
<マイホーム保有(住宅ローン完済)の場合>
家計調査(2021年)の結果を参考とし 、65歳以上・単身世帯の家計支出の目安をまとめると、住居費(マンション) 50,000円、食費 36,972円、水道・光熱費 12,741円、家具・家事用品費 5,264円、被覆・履物費 3,341円、交通・通信費 13,905円、保険・医療費 8,765円、教養娯楽費 13,004円、その他の消費支出(交際費・小遣いなど) 29,900円、合計 173,892円となりました。
※家計調査(2021年)のデータを元に筆者作成
※住居には管理費・修繕積立金・固定資産税・駐車場代・火災保険料を含む
住居費に関して、住宅ローンを返済すれば毎月の返済は0円になりますが、固定資産税や駐車場代などの維持費は引き続き発生することに注意が必要です。マンションの場合、管理費や修繕積立金も発生します。
これらの費用は当然物件によって異なりますが、平均的な目安は年間60万円ほど、毎月に直すと5万円です。
住居関連の支出も含めた合計は17万3,829円であり、月20万円の年金の手取り額は約17万3,400円なので、年金だけでほぼ支出をまかなえる計算となります。
<賃貸の場合>
賃貸の場合は、住居費 44,460円、食費 36,972円、水道・光熱費 12,741円、家具・家事用品費 5,264円、被覆・履物費 3,341円、交通・通信費 13,905円、保険・医療費 8,765円、教養娯楽費 13,004円、その他の消費支出(交際費・小遣いなど) 29,900円、合計 168,352円となりました。
※家計調査(2021年)、住宅・土地統計調査(平成30年)のデータを元に筆者作成
住宅・土地統計調査(平成30年)によると、65歳以上・単身世帯の1ヵ月当たりの家賃は44,460円です。 合計は168,352円であり、賃貸の場合も年金20万円だけで支出をカバーできる結果となりました。
■まとめ
年金20万円を受給できるのは、現役時代の年収が平均で約700万円であった人です。年金20万円の手取り額は約17万3,400円となります。
単身の高齢世帯の家計支出をシミュレーションしたところ、マイホーム・賃貸のいずれの場合でも、年金の範囲で支出をカバーできそうです。ただし大幅に余裕があるわけではありません。
また家電の故障など急な出費が必要になることもあるため、一定程度の資産を保有しておくと安心です。
また支出を年金でまかなえるとしても、浪費が増えれば家計は苦しくなってしまいます。老後生活でも家計管理は必要で、無駄づかいを避ける必要があります。