ソニーグループは、2022年度経営方針説明会を5月18日に開催。同社会長 兼 社長CEOの吉田憲一郎氏は、新たなエンタメ体験の創出の一環としてメタバースとモビリティの取り組みについて説明した。また、次世代VRシステムとして開発中の「PlayStation VR2」や、まもなく刷新する「PlayStation Plus」などゲーム事業に関するトピックにも触れた。

  • ソニーグループ会長 兼 社長CEOの吉田憲一郎氏

ゲーム&ネットワークサービス事業、音楽事業、映画事業は「人の心を動かす」事業と位置づけている。この3事業は2012年度以降、継続的に成長しており、2021年度には売上高の合計が初めて連結売上高の50%を超え、営業利益も連結全体の約3分の2に達したとする。

同社では過去4年でコンテンツIP、DTC(Direct to Consumer)サービスの強化を目的として1兆円を超える戦略投資を実施。DTCサービスにおいては、パートナーとの関係を重視するとともに、エンタテインメントを動機として「ソニーグループと直接つながる人を10億人に広げる」という長期ビジョンを掲げる。

  • 「人の心を動かす」ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画の3事業が継続的に成長

既報の通り、PlayStation 5(PS5)の2022年度の販売台数は、前年度比約57%増の1,800万台を目標としている(現時点で部品調達のメドが立った分の数値)。同社はPS5を中心に、コンソール機をさらに拡げていく計画だ。

  • PS5/PS4の累計販売台数をアピール

また、PlayStation Network(PSN)のネットワーク経由の売上高が累計1兆8,000億円を超えており、現在1億以上のアカウントがサービスを利用中だという。PSN強化のため、現行の定額制ゲームサービス「PlayStation Plus」(PS Plus)の大幅リニューアルを行い、6月1日から国内で提供開始予定であることも改めて紹介。なお、同サービスで遊べるタイトルの一部については既に公開されている

  • PlayStation Plusを大幅リニューアル。国内では6月1日から提供開始予定

ゲーム事業ではこのほか、サードパーティスタジオとの関係を重視しつつ、自社スタジオ「PlayStation Studios」の強化に向けて直近1年間で多くの買収・出資を実行。さらにライブサービス強化とマルチプラットフォーム展開に向けた一歩として、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が米国のゲームソフトウェア開発会社、Bungieの買収に関する確定契約を締結したことにも触れた。

  • 自社スタジオ「PlayStation Studios」強化に向けた買収・出資を実行

  • Bungieの買収に関する確定契約を締結

音楽事業では、ストリーミングサービスの伸長で2014年から拡大を続けている音楽市場において、「業界のリーダーとして継続的にヒットを生み出している」と説明。今後も各国で音楽レーベルを買収したり新レーベルを立ち上げるほか、ストリーミングサービスを提供する配信パートナーに加え、多様なサービスパートナーとも連携して、アーティストの活躍の場を拡大する方針だ。

映画事業の中心となる映画製作においては、劇場公開を重視する方針を維持。映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が全米累計興行収入で歴代3位を記録し、ヒット作となったことも紹介した。また、Marvelのキャラクターである『Morbius』の映画を2022年4月に公開しており、“Sony Pictures Universe of Marvel Characters”の世界を今後も拡げていく。

  • ヒット作となった映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』をはじめ、“Sony Pictures Universe of Marvel Characters”の世界を今後も拡げる

さらに、グループの多様性を活かしたIP展開の一例として、SIEのゲームタイトルであるアンチャーテッドシリーズを実写映画化し、2022年2月に公開した『Uncharted』を例に挙げ、『Twisted Metal』や『Ghost of Tsushima』といったゲームタイトルの映像化を進めていることにも触れた。

映像配信については、アニメファン向けのCrunchyroll(クランチロール)や、インドの地域文化に根差したSony LIVなど、DTCサービスを世界各国で展開していることを紹介。急成長するインド市場において、デジタルサービスのさらなる加速を目指すとした。

  • アンチャーテッドシリーズを実写映画化。『Twisted Metal』や『Ghost of Tsushima』などのゲームタイトルの映像化も

ソニーでは「感動空間での新たなエンタテインメント体験の創出」を目指し、2つの成長領域であるメタバースとモビリティに関する取り組みを進めていく。

  • 2つの成長領域、メタバースとモビリティに関する取り組みにも注力

吉田氏は、ネットワーク空間がテクノロジーを通じて「ライブ」的に進化しているという認識を示した上で、「“ライブネットワーク空間”で人と人をつなぐ技術が、リアルタイムのCGレンダリングを中心とするゲーム技術だ。ゲームや映画、音楽といったジャンルが交わるようになり、それぞれの楽しみ方が生まれている。Epic Gamesの『Fortnite』がその一例で、ゲームがアーティストにとって新しい表現の場になり、ゲームIPの価値の向上にもつながっている」と話した。

今後成長が期待されるメタバース領域においては、ソニーグループの多様な事業と、その核になるゲーム技術を有する独自の強みを活かしていくという。

そうしたエンタメの進化を支えるテクノロジーがセンシングとAI技術だ。吉田氏はそのひとつの事例として、現在開発中のPS5向け次世代VRシステム「PlayStation VR2」(PS VR2)が、プレイヤーの目の動きをセンシングすることで、(プレーヤーの)視野の中心を高解像度の映像で描写できるようになっていることをアピール。「VRは現実空間にいる人が仮想空間に入り込む、ライブネットワーク空間におけるキーデバイスだ」とコメントした。なお、PS VR2の外観の最終デザインイメージは2022年2月に公開済みだが、発売時期などの具体的な情報はまだない。

吉田氏はほかにも、ゲームの世界での体験価値向上につながるAIエージェントや、人に寄り添いながら成長する自律型エンタテインメントロボット「aibo」の技術を保有していることをアピールした。

  • 開発中のPS5向け次世代VRシステム「PlayStation VR2」

モビリティ分野では、「セーフティ」、「エンタテインメント」、「アダプタビリティ」の3つの領域でモビリティの進化に貢献するとしており、その一環として、本田技研工業との戦略的提携の協議を進め、2025年のEV(電気自動車)の販売開始を目指していることに改めて触れた。

  • ソニーが手がけるEV(電気自動車)のプロトタイプ「VISION-S」

  • ソニーとホンダは、EV製造・販売を軸にした業務提携を行い、2025年のEVの販売開始を目指している

  • スマートフォンなどのカメラに採用されるイメージセンサー向けに、過去4年で約1兆円を投資し、トップシェアを維持。その上で、成長領域として車載やIoT向けのセンシングに取り組む

  • クリエイターが感動コンテンツを創り、ユーザーがそれを体験するためのテクノロジー、製品・サービスを引き続き提供

  • メディカル事業では、ソニーの光ディスク技術を応用した機器が、がんやウイルスなどの研究、細胞薬製造に貢献しているという