具体的には、抗PD-1/PD-L1抗体治療を受けた進行・再発非小細胞肺がん患者53例の治療前の血中アミノ酸と、その代謝産物(36種類)の濃度が質量分析計を用いて測定し、全生存期間との相関が検討されたところ、4種のアミノ酸・代謝物(アルギニン、セリン、グリシン、キノリン酸)濃度を組み合わせて作成された判別式を用いると、治療効果の高い患者を高精度に選別できることが判明したという。
また、腫瘍組織でのPD-L1発現の高い患者群においても治療効果が予測できたことから、バイオマーカーとしての新規性・有用性が示されたとする。
さらに末梢血単核球における遺伝子発現の解析から、免疫細胞の頻度の調査から、無効群に比べて有効群では、CD8陽性T細胞やマクロファージ(M1型)の頻度が高いことが確認されたとするほか、患者選別に有効であった4種のアミノ酸・代謝物の濃度と免疫関連遺伝子の発現との相関の調査から、アルギニン・セリン・グリシン濃度がT細胞関連遺伝子と正の相関を、マクロファージ(M2型)遺伝子と負の相関が示されたとする一方、キノリン酸の濃度だけはT細胞関連遺伝子と負の相関を、マクロファージ(M2型)遺伝子と正の相関が示されたとした。
これらの結果について研究チームでは、末梢血のアミノ酸プロファイルががん患者の免疫状態を反映するものと考えられるとしている。
このほか、末梢血単核球におけるアミノ酸代謝関連遺伝子の発現が調べられたところ、有効群と無効群において発現差を認める12種類の遺伝子を同定することにも成功したとする。
加えて、これらのアミノ酸代謝関連遺伝子の発現と、患者選別に有効であった4種のアミノ酸・代謝物濃度との相関が調べられたところ、多くの遺伝子で正あるいは負の相関が認められたという。特に、3種類のアミノ酸代謝関連遺伝子(SLC11A1、HAAO、PHGDH)の発現量と免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果とが相関することが明らかにされたとのことで、これらの結果から、アミノ酸代謝関連遺伝子の発現を介したアミノ酸プロファイルの変化ががん患者の免疫状態を制御し、免疫チェックポイント阻害薬に対する治療効果に影響している可能性が示唆されたという。
なお、今回の研究成果として研究チームでは、アミノ酸プロファイル解析が免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果を予測するバイオマーカーとして臨床応用されれば、個別化がん免疫治療が可能となり、その結果として、高い効果の期待される患者を選択することによる治療成績の向上や、不必要な治療による不利益(有害事象合併・医療費浪費)の回避につながることが期待されるとしている。