高いCO2変換選択率を与えるα-FeOOHでは、ほかの触媒試料と比べてCO2吸着量が有意に多いほか、アルミナの微粒子上に担持したα-FeOOHはCO2吸着能力の増強が認められ、分子光増感剤の共存下でCO2をギ酸へと高選択的に変換できることが発見された。同触媒は可視光エネルギーのアシストにより、常温常圧下で繰り返し使用することが可能で、最適化した条件において80~90%の高い選択率でギ酸を得ることに成功したという。

  • 開発された触媒による還元反応のイメージ

    α-FeOOH/Al2O3触媒によるCO2還元反応のイメージ (出所:東工大Webサイト)

一方、CO2吸着能力が低いα-Fe2O3(酸化鉄)では、CO2還元選択率も低かったことから、固体触媒へのCO2吸着能力を高めることが触媒のCO2還元性能向上に寄与すること、また適切な担体を用いることでCO2吸着能力と触媒性能を増強できる可能性があることが示されたとする。

  • 開発された触媒による還元反応

    α-FeOOH/Al2O3触媒によるCO2還元反応(繰り返し反応試験) (出所:東工大プレスリリースPDF)

これまで鉄は、CO2変換触媒の中核元素として注目されてきたが、ギ酸を高選択的に得る鉄系の固体触媒は皆無であったことから、今回の研究成果について研究チームでは、地殻中の埋蔵量が豊富な鉄を適切に活用することで、有用な資源物質を得る化学反応系の構築が可能になることが示されており、元素戦略の観点からも重要だとしている。

  • さまざまな触媒資料の二酸化炭素吸着能力

    (左)さまざまな触媒資料のCO2吸着能力。(右)同じくCO2還元活性比較 (出所:東工大プレスリリースPDF)

そのため今後は、異なる結晶構造を持つ鉄化合物の適用や異元素との複合化、さらには触媒担体の最適化を行うことで、触媒性能の向上が期待されるとしているほか、反応生成物を「作り分ける」技術の確立から、より付加価値の高いアルコールなどを得る新触媒の創出、ひいては脱炭素社会や水素社会の実現に向けた基盤技術の構築につながることも期待されるとしている。