第一三共ヘルスケアはこのほど、「熱中症対策に関する意識調査」を実施した。
同調査は2022年3月4日~6日、全国20~60代の男女400人(性年代別均等割付)を対象に、インターネット調査にて実施したもの。調査の結果、「発汗を伴うような運動や行動をしていない人、また、コロナ禍前と比べて体力の衰えや体がなまったと感じている人が多くいる」ことが明らかになった。
同社ではこの結果を受け、暑くなることが予想されるゴールデンウィークを前に、熱中症について詳しい済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部部長・谷口英喜(たにぐちひでき)氏の監修のもと、今夏の熱中症対策のポイントについての解説を紹介している。
気象庁が本年4月に発表した1カ月予報によると、4月中旬から5月中旬にかけては全国的に高温で、例年より「暑いゴールデンウィーク」になることが推測される。また、この先1カ月全体の降水量は、東日本の太平洋側と西日本では「平年並みか多い」予想で、今年は「例年よりも早い時期から、蒸し暑くなる」ことが特徴となる。
さらに1週間ごとでみると、4月23〜29日の平均気温は、全国的に「平年より高い」予想。特に、西・東日本では、気圧の谷や湿った空気の影響を受けやすいため、平年に比べて「晴れの日が少ない」見込みとなる。湿った空気が入ることで、ゴールデンウィークの前から蒸し暑くなる所が多くなりそうだ。
また、「平年より気温の高い状態」は、ゴールデンウィークだけでなく、5月中旬にかけて続く所が多い見込みで、4月30日〜5月13日の平均気温は、北日本と沖縄・奄美では「平年並みか高い」、東・西日本は「平年より高い」予想となっている。
今回行った「熱中症対策に関する意識調査」において、熱中症に対する予防意識がどの程度あるか調査したところ、約6割(56.0%)の人が「外出するときは、こまめな水分補給や帽子着用など、熱中症予防を意識している」と回答した。
この回答を受けて谷口氏は、「昨年は、気温がそこまで上がらなかったことや、コロナ禍かつ、世界的なスポーツの祭典の開催で外出しない方が多く、熱中症患者数は少ない年でした。一方、今年は、昨年と真逆の状況で、例年より気温上昇が予想されるほか、外出機会が増加しやすい環境から熱中症患者数が増加する」と予想している。
また、夏本番前の時期は、まだ体が暑さに慣れていないことや、気温の寒暖差が激しいため熱中症になりやすく、「特にゴールデンウィークや梅雨時期は注意が必要」と警戒を促している。
普段の生活における発汗を伴うような運動や行動(通学・通勤など)の有無については、6割以上(60.8%)が、「していない」(全くしていない+あまりしていない)と回答。
この結果を受けて、谷口氏は「コロナ禍で室内にいることが多くなり、暑い季節に冷たい空間にいる時間が長くなる。そうすると、暑さに鈍感になり、外に出かけても汗が出にくい状態になりやすく、熱を溜め込んで体温をコントロールできなくなる」と「汗不足」のリスクを指摘している。
コロナ禍前(2019年12月以前)と現在の、自身の体重変化については、約3人に1人(37.5%)が体重が「増加した」(非常に増加した+やや増加した)と回答した。
また、コロナ禍前と現在で、体力の衰えや体がなまったと感じたことがあるか聞いたところ、約6割(57.3%)の人が「感じる」(感じる+やや感じる)と答えた。
この結果から、外出機会の減少や運動不足などを背景に、コロナ禍前と比べて体重増加や体力の衰えを実感する人が増えていることがうかがえる。皮下脂肪が多いほど体内の熱を外に逃しにくくなるため、筋肉増加以外の体重増加には注意が必要だ。
体重増加した人が汗をかかなくなった自覚があるかどうかを聞いたところ、約7割(67.3%)が「あてはまる」(あてはまる+ややあてはまる)と回答した。
この結果を受けて、谷口氏は「『汗不足』の要因は2つあり、体内の水分量が減少していること、また、自律神経が乱れて汗腺からの分泌量をコントロールできなくなっていることが考えられる」と語る。
その2つの症状が起こる理由として、谷口氏は「体の水分量と筋肉量が少なく脂肪量が多い」ことを挙げている。コロナ禍で体の衰えを感じている人は、筋肉ではなく脂肪が増えているため、「体脂肪量が増えれば増えるほど体の水分量が少なくなるため、汗をかきたくてもかけない状況になる。また、体脂肪の増加によって、汗をかきにくい体質になり、熱中症リスクを引き上げる」と指摘している。
最後に谷口医師は、「汗不足」の原因を取り除くための対策として、水分を多めにとること、汗腺をつかさどる自律神経を発達させ、汗をかきやすい体にすることが大切と指摘。
また、定期的に水分摂取量を増やしたり、体の筋肉量を増やしたりするだけではなく、汗腺の自律神経を鍛える訓練では暑い・寒い環境に慣れるほか、暴飲暴食・アルコール・喫煙を避け、十分な睡眠をとるなどの規則正しい生活を心がけることも重要だと語る。
これら「汗不足」を解消する取り組みを「汗活」と称し、正しく暑熱順化ができる状態を目指すことを推奨。家の中での「汗活」では、水分を溜める力がある骨盤周りの筋肉量を増やすこと。静脈と動脈の血管が多く、外部環境の温度変化を受けやすい手のひらを冷やすることで体温をコントロールできる「手のひら冷却」の実践などを提唱している。