デスクワークに没頭し、気づけば首や肩がガチガチに凝ってしまったというビジネスパーソンは少なくないだろう。現代人の職業病とも言えるが、そのままにしておくとどんどん不調が重なり、深刻な状態を引き起こしかねない。予防およびカンタンな対処法としてオフィスでできることは何か。
最新のパーソナルトレーニングで注目される柴雅仁先生に、首・肩の痛みを自力で改善するストレッチを教わった。
■じっとして動かないのがNG! 意識して身体を動かす
仕事中に首や背中が痛くなるのは、ほとんどの場合、じっと座ったままでいることが原因です。同じ姿勢を長時間続けていると特定の場所に負担がかかり、筋肉が緊張状態に陥ってしまうからです。
画面を見ながら手や指を動かすパソコンワークの場合は、首や肩を中心とした筋肉が固定されるので、そのままの状態が続くと血流が悪くなったり痛みが発生したりします。
それを予防するには、意識して身体を動かすことが大事です。30分に1回程度の間隔で、大きく伸びをする。これだけでずいぶん違います。背中に手を回すストレッチもおすすめで、腕から肘の骨につく上腕三頭筋を伸ばすことができます。
パソコンワークを続けると上腕三頭筋の肩よりの部分がきゅっと固まってしまうので、そこをほぐしてあげるわけです。これは、座ったままで行ってもOKです。
頭を横に倒して反対側の手を下げるのも効果的です。これは肩甲骨を動かす僧帽筋を伸ばします。どちらも30秒くらい行うといいでしょう。
首の後ろと背中に効くのは、後頭部に両手をあて、そのままゆっくりと腕の重みを使って上体を倒すストレッチです。背中が丸まるくらい倒すと、首の根元から背中の辺りまでの筋肉が伸びるので凝りがほぐれます。
■ふくらはぎは第二の心臓。しっかり伸ばして血流アップ
デスクワークではどうしても下半身が固まりがち。下半身が固まると血の巡りが悪くなり、首や背中の痛みにもつながるので、ふくらはぎのケアも大事です。
自分のデスクで椅子に座りながらできるのが、片足を前に出して上体を倒すストレッチ。伸ばしたほうの足首を前後に10回動かします。このとき裏ももが伸びているかどうかを確認してください。
終わったらもう片方の足も同じように行います。足は裸足か靴下の状態が望ましいですが、靴を履いたままでも構いません。裏ももを伸ばして足首を動かすと、固まったふくらはぎがしっかりと動きます。
ふくらはぎには下半身の筋肉を戻す作用があり、ポンプになって全身の血流にも大きな影響を与えています。「第二の心臓」と言われるゆえんです。膝頭でふくらはぎを軽くマッサージするだけでも違います。
これらは座ったままでできるので、お昼の休憩などある程度時間の取れるときに試してみてください。テレワークなら作業中はもちろん、会議の最中にもこっそりとできるかもしれません。
■パソコンと目線の位置を水平に! ポジションでこれだけ変わる
デスクワーク中の作業姿勢も、首や背中の痛みを引き起こします。特にパソコン作業が多い今は、パソコン画面と目線の位置が重要です。パソコンが低い位置にあると前かがみになるので、みぞおちが圧迫されます。
そうするとお腹の腹直筋が固まり、腹直筋につながる胸や肩、首が影響を受けてしまうのです。パソコンの位置がおかしいと、どれだけ姿勢に気をつけても凝りや痛みは避けられません。
一番いいのは、顔を真っ直ぐ前に向けた時、パソコンのモニター画面の上部と目線が水平になることです。オフィスデスクの場合は、椅子の高さやモニターの位置を調整するか、ノートパソコンであれば下に物を置くなどして工夫してください。
テレワークなら思い切って机や椅子を高さの合うものに買い換えることも1つの手です。目線が水平に近くなれば、姿勢はそれほど意識する必要はありません。お尻を椅子の後ろまできちんと入れれば、自然な状態で背中が丸まります。ただ、椅子は背もたれのあるタイプがマストです。
パソコンワークではもうひとつ、小指や薬指を意識してキーボードを打つことをおすすめします。親指は胸とつながっているので肩が上がりやすく、親指に力が入ったまま一日を終えると、腕から肩がガチガチになることも珍しくありません。
一方、小指や薬指は肩を下げる脇の前鋸筋を使いやすくなるため、両方をバランスよく使うことで肩こり予防になるわけです。また、親指をほぐすには、爪の両端を圧迫しながらグリグリする、肘の腕の外側を揉む、といったマッサージが効果的です。