近畿日本鉄道は16日、王寺駅にて生駒線・旧東信貴鋼索線開業100周年記念イベントを実施。当日は王寺駅から生駒線を経由し、大阪上本町駅へ向かう臨時急行も運行された。

  • 近鉄生駒線・旧東信貴鋼索線開業100周年記念イベントの一環で、王寺発大阪上本町行の臨時急行が運行された

生駒線は王寺駅(奈良県王寺町)と生駒駅(奈良県生駒市)を結ぶ全長12.4kmの路線。1922(大正11)年5月16日、近鉄の前身である信貴生駒電気鉄道により、王寺~信貴山下間の鉄道線と信貴山下~信貴山間の鋼索線が開通した。1927(昭和2)年に王寺~生駒間が全通し、後に近鉄が事業を継承した。1983(昭和58)年、東信貴鋼索線(信貴山下~信貴山間)が廃止され、現在に至る。

■臨時急行が王寺駅から大阪上本町駅まで往復

記念イベントでは、最初に近畿日本鉄道執行役員鉄道本部大阪統括部長の大内敬弘氏が挨拶。多くの沿線利用者や鉄道ファンらが集まったこともあり、「生駒線が皆さんに愛されているということ」と感想を述べた。続いて沿線自治体である王寺町長の平井康之氏が挨拶し、王寺駅にJR大和路線(関西本線)・和歌山線と近鉄生駒線、新王寺駅に近鉄田原本線が集うことから、「交通インフラを活用し、地域の活性化につなげることが王寺町のミッション」と決意を新たにした。

テープカットが行われた後、開業100周年に際して日本郵便が販売したオリジナルフレーム切手が近鉄へ、王寺町・三郷町と地元沿線高校がデザイン制作した記念ヘッドマークのレプリカが自治体2町・高校2校へ贈呈された。なお、オリジナルフレーム切手は簡易郵便局を除く奈良県 香芝市、平群町、王寺町、河合町、三郷町、上牧町、広陵町、斑鳩町の全郵便局(計27局)にて、1シート(84円切手×10枚)1,470円で販売される。ネットショップでは5月25日の午前0時15分から販売される。

  • 記念イベントの出席者によるテープカット

  • 日本郵便からオリジナルフレーム切手が贈呈された

  • 王寺工業高校がデザイン制作した記念ヘッドマーク

  • 西和清陵高校がデザイン制作した記念ヘッドマーク

  • 記念ヘッドマークと行先表示板を模した張り紙を掲出

  • 生駒方に王寺方とは異なる記念ヘッドマークを掲出

10時40分、大阪上本町行の臨時急行が王寺駅を発車した。使用車両は1021系4両編成。復路も大阪上本町発王寺行で運行され、途中の生駒駅でスイッチバックが行われた様子だった。生駒線では6月30日まで、線内の列車に記念ヘッドマークも掲出。平日は王寺駅7時35分発から同駅17時47分着までの計28本、土休日は王寺駅7時54分発から同駅17時44分着までの計28本を対象に掲出するとのことだった。

■信貴山下駅に旧東信貴鋼索線のケーブルカーも

記念イベントの後、筆者は生駒線の列車に乗車した。生駒線のダイヤは王寺~生駒間の線内を走る普通を基本とし、日中時間帯は1時間あたり3本を運転。朝のラッシュ時に東山~生駒間の区間列車(普通)も運転される。列車は4両編成で、2004(平成16)年からワンマン運転を実施している。

王寺駅から大阪市中心部へ向かう場合、難波まで30~35分程度でアクセス可能なJR大和路線の利用が一般的と考えられる。生駒線経由の場合、王寺駅から生駒駅だけでも約25分を要する。

  • 普段の生駒線は普通のみ。王寺~生駒間でワンマン運転を行う

  • 王寺駅構内では、旧東信貴鋼索線のカラー写真が展示されていた

  • 信貴山下駅付近に旧東信貴鋼索線で活躍したケーブルカーが保存されている

王寺駅で生駒行の列車に乗り、次の信貴山下駅で下車。旧東信貴鋼索線の始発駅だった同駅の駅舎の横に、東信貴鋼索線で活躍したケーブルカー「コ9形9車両」が美しい姿で保存されていた。現在は駅前からバスで信貴山へ行くことができる。

信貴山下駅から再び生駒行の列車に乗車。日中時間帯の車内は、各車両に10~20人程度が乗車しており、学生の姿が目立った。生駒線の中間地点に近い元山上口駅を発車すると、車窓に見える木々が増え、スピードを落としながら列車はトンネルを通過する。

次の東山駅は近大奈良病院の最寄駅。ここで初めて乗車客が降車客を大きく上回った。沿線に一戸建てやアパートが増え、生駒駅へ近づくにつれて乗客も増え、車内も6割ほど埋まった。終点の生駒駅は近鉄奈良線・けいはんな線との接続駅で、生駒線の乗客の多くが難波方面に向かう奈良線へ乗り換えた様子だった。

普段、生駒線では急行などの優等列車は運行されないが、沿線住民にとって欠かせない足となっていることがうかがえた。信貴山朝護孫子寺のある信貴山と組み合わせて生駒線を訪れることで、有意義な小旅行になるかもしれないと思った。