開発されたセンサシートは、フレキシブルな広帯域電磁波吸収材料であるカーボンナノチューブ(CNT)薄膜と、高分子成分を含む薄膜支持基板および読み出し電極で構成。センサシートは、光熱起電力効果を含むCNT薄膜の特徴的な材料特性により、室温でミリ波・テラヘルツ波・赤外線まで広帯域に渡る光を高感度に検出することが可能なほか、ゴムのように伸縮可能な印刷回路基板の作製や、その基板へCNT薄膜を実装する無歪領域デザインにより、元来の多機能な光センシングを70~280%の伸長状態でも安定して発揮することに成功したとのことで、成長を伴う植物や液体の流動性により変形するチューブへ、動きに追従しながら密着して装着することが可能だと研究チームでは説明している。
また、センサシートを多様な配管に貼り付けることで、内部の液体が自ら発する赤外線放射(黒体輻射)の高感度な検出もできるとしている。今回の研究では、溶媒からの黒体輻射が局所的に溶質に吸収されることが明らかにされ、センサシートの検出信号の減衰強度から溶質の量、つまり水溶液濃度を計測することに成功したとする。
今回達成された水溶液濃度計測レンジは、例えばグルコースでは50~2万mg/dLであり、血中や農作物の濃度レンジに対応するとするほか、液流の温度や粘度の非破壊モニタリングやセンサシートの無線式遠隔操作も可能であるため、さまざまなシーンでの将来的な活用が見込まれるとしている。
なお、今回開発されたサンプル非採取・ラベルフリー・外部光源不要なシート貼り付け式のコンパクトな非破壊液質計測手法は、ユーザーの技量や検体構造に制約されることなく、基盤要素技術として将来的なオンサイト環境計測の実現に貢献するとのことで、研究チームでは活用例として、砂糖水などの飲料品製造現場、漂白液などの化学合成プラント、生理食塩水を用いる医療現場といった環境での品質管理などを挙げている。
一方、濃度計測対象となる化合物への選択性は極めて重要となることから、今後は素子性能や測定手法の観点からのさらなる取り組みにより選択性を実証し、生活・産業排水や動植物などの体内栄養素といった複数化合物含有の液流を対象とするオンサイトモニタリングへと展開するとしている。