メルカリと東京大学エコノミックコンサルティング(UTEcon)は5月16日、フリマアプリの取引データを基にした二次流通版の物価指数「メルカリ物価・数量指数」を発表した。
月間利用者数2,000万人を超えるフリマアプリ「メルカリ」の膨大な取引データから、商品カテゴリごとの取引価格と流通量の変動を指数にした。両社によれば、個人間取引における消費者の需要を可視化する試みは世界初だという。
一次流通市場であれば家計調査や消費者物価指数などの公的な調査や民間企業によるものも含めて、消費行動に関する豊富なデータが提供されている。しかし二次流通市場では、中古住宅や中古車などの限定的な分野のデータはあるものの消費行動全体を捉えたものはなく、メルカリの持つデータを研究の活性化に役立てたいというところからスタートした。
開発に携わった東京大学の渡辺安虎教授は「サスティナブルやESGといった大きな流れの中で、これからリユースのマーケットはさらに広がっていく。これまでの消費者の理解というのは基本的に一次市場だけだったが、二次市場の動きもきちんと見えることが重要になっていく」とコメント。メルカリの吉川徳明氏も、今後の消費活動において二次流通の存在感が増していくのは不可逆のトレンドだとして、消費行動のあり方が変わる時代のなかでも動向を把握できる新しい指標の重要性を語った。
メルカリ物価・数量指数は、一次流通のデータを基にした既存のものよりも敏感に需給や物価の動向に反応することが特徴であり、流行の変化や社会情勢の影響をいち早く見られるという。
以下の画像は「レディース - スーツ/フォーマル/ドレス」カテゴリの4年分のメルカリ物価・数量指数の推移を表にしたものだ。数量指数に注目すると、大きな流れとしては1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月を境に、コロナ禍による出社機会の減少などで取引数が激減。その後徐々に需要が戻り、2022年に入ってからは2018年頃と同水準の売れ方をしていることが分かる。
なお、基になっているデータはあくまで取引が成立した出品物に限られているため、たとえば「コロナ禍の巣ごもり中に大掃除をして不要なスーツを出品したが、需要も少なく売れなかった」というようなケースは数値に影響しない。
また、スーツのような商品は元々季節によって売れ方に波があるものだが、季節性のある商品カテゴリについては調整済・調整前のデータがそれぞれ提供されており、用途によって使い分けられる。上のグラフは調整済データを用いたものだ。
メルカリにとっては、循環型社会についての社内研究組織「メルカリ総合研究所」の取り組みの一環であり、自社データの販売・商品化を目的とするものではない。まずは消費トレンドを発信する報道関係者や経済・マーケティング分野の研究者向けにデータを提供するが、用途を限定するものではなく幅広い可能性を探る。