一瞬のスキを突いた猛攻から、最後は王手竜取りで仕留める
藤井聡太叡王に出口若武六段が挑戦する、第7期叡王戦五番勝負第2局が、5月15日(日)に愛知県名古屋市の「名古屋東急ホテル」で行われました。結果は74手で千日手に。先後を入れ替えての指し直し局は75手で藤井叡王が制しました。これで五番勝負の成績は藤井叡王の2勝0敗になりました。
出口六段の先手で始まった千日手局は相掛かりに。藤井叡王が指せそうな局面もありましたが、無理をせず千日手を選びました。指し直し局は藤井叡王の先手でまたも相掛かりに進みます。24手目に△7六飛と横歩を取った手を出口六段は「危険だったかもしれない」と振り返りました。藤井叡王はこのチャンスを逃しません。▲2四歩△同歩▲同飛△2二銀▲2一角と、大駒を捨てることをいとわない猛攻をかけました。瞬間的に飛車金交換の駒損になりましたが、歩頭に打ち付けた37手目の▲4四金が奇手です。△同歩とタダで取れる形ですが、それは▲7六馬と飛車を抜けます。前述の△7六飛が危険というのはこの順があったからでした。出口六段はやむなく△8六飛とよろけますが、▲4三馬△5一玉▲5三金と後手の玉頭を押さえた藤井叡王が大きなリードを奪います。
出口六段も先手陣に飛車を打ち込んで竜を作り、反撃の手段を模索しますが、61手目の▲6五桂が絶好となりました。後手玉への圧力を掛けているだけではなく、先手玉の逃げ道も広げる一石二鳥の手です。こうなってはいかんともしがたく、最後は王手竜取りが掛かったのを見て、出口六段が投げました。
藤井叡王はこれで叡王防衛まであと1勝。叡王戦はタイトル戦に昇格した第3期から、一度もタイトル保持者の防衛がないというジンクスがありましたが、棋戦史上初めての防衛に大きく前進しました。対して挑戦者の出口六段は苦しい戦いが続きますが、まずは一矢を報いて流れを変えることに結び付けたいでしょう。第3局は5月24日(火)に千葉県柏市「三井ガーデンホテル柏の葉 柏の葉カンファレンスセンター」で行われます。
相崎修司(将棋情報局)