圧倒的なAF性能と速写性能でヒットにつながったベストセラー機「α7 III」の流れを受け継ぐ新機種「α7 IV」、落合カメラマンもAF追従性能がどれだけ磨き上げられたかが特に気になっているようです。α7 IIIユーザーとしての視線で、α7 IVの進化ぶりを濃厚にチェックしてもらいました。果たして、落合カメラマンお得意の“衝動買い”は発動したのでしょうか?

  • ソニーが2021年12月に発売したフルサイズミラーレス「α7 IV」(ILCE-7M4)

    ソニーが2021年12月に発売したフルサイズミラーレス「α7 IV」(ILCE-7M4)。ボディ単体モデルの実売価格は328,000円前後。現在は強い品薄傾向が続いていて、カメラ量販店での納期は約2カ月前後となっている。装着しているレンズは、2021年4月に発売した大口径の標準レンズ「FE 50mm F1.2 GM」。こちらの実売価格は278,000円前後

AF性能は気になるところもあるが、一級品の仕上がり

さて、α7 IVはEVFも良くなっている。あくまでもα7 IIIとの比較においての話なのだが、その進化の度合いには、α7 IIIオーナーの誰もがメラメラと嫉妬すること確実だ。ぶっちゃけ、α7 IIIのEVFが悪すぎだといえなくもないのだけど、α7 IVのEVFは、それと比較をしなくてもちゃんと普通にマトモ。これなら、安心して広い風景にも向き合うことができる。何がどんな風に写るのかがちゃーんと分かるのだ。

しかし、そんなα7 IVとて気になるところがないわけじゃない。例えば、他社モデルがこぞって被写体認識AFを採用している中にあって、α7 IVの認識AFは、特に動物に対してユルい動作に終始する印象であるところ。これは、新たに標準搭載となった「鳥」認識においても同様だ。もう少し遠くから、もう少しフレキシブルに認識してもらいたいと感じることが少なくないのだ。

αの認識AFの動作が基本「瞳認識」であることが理由のひとつになっているようにも思う。瞳や顔以前にフォルムを認識してくれたら(その事実を明確に示してくれたら)、印象はけっこう変わりそうだ。いや、でも、α1やα9 IIは、もっとタイトでドンピシャな動作を見せてくれていたような気も・・・。

しかし一方では、シンプルな測距点自動選択AFの見せる賢い振る舞いが、そのあたりの物足りなさをフォローしてくれるα7 IVでもある。均一の背景の中からポツンと存在するごく小さな被写体を見つけ出しピントを掴む眼力とか、煩雑な背景を背負っている時に主要な被写体を見極める(背景と分離してピントを合わせてくれる)能力には、某他社製フラッグシップ機をも凌ぐものがあるようにさえ感じることがある。つまり、ミラーレス機としてのAFの仕上がりは一級品。それは間違いない。

  • カスタムキーに「顔/瞳検出対象切換」を設定すると、ボタンを繰り返し押すだけで「人物」「動物」「鳥」の切り換えが循環でできるようになるので便利。認識AFそのものに関しては、特に「鳥」について、この距離感でも顔認識が行われないことが多いなど、思ったよりもユルい動作である印象に終始した。しかし、それも良くできた測距点自動選択(オール設定)で十分にカバー可能なのがソニー勢のスゴいところ。AFに関し、総合的には、いまだ他に引き離されることのない実力を有している(FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS使用、ISO12800、1/2000秒、F6.3)

  • 背景との距離がある程度、確保されていれば、測距点自動選択オンリーでも難なく主要な被写体を見分け捉え続けてくれるという意味での「主要な被写体を見極める能力」は、ソニー勢が得意とするところであり、α7 IVもその例に漏れない存在となっている。こんな場面では、他社モデルのアレとかソレだと被写体認識AF(鳥認識)の助けを借りなければ、ピントは背景に逃げたまま難儀することになっていただろう(FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS使用、ISO6400、1/2000秒、F5.6、-0.7補正)

  • 先代α7 IIIのEVFクオリティに不満を覚えるのは、対象となる被写体が小さく見えているときや画角内に細かなパターンものが存在している時。その点に許し難き不満を覚えているα7 IIIユーザーには、α7 IVへの買い替え価値は大きいといえるかもしれない(FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS使用、ISO6400、1/500秒、F6.3、+0.7補正)

動画重視の改良に多少モヤる

撮影時のメカ的な感触にも、事前の予想とは異なるところがあった。α7R IVやα7S IIIでは、ともに前モデルとの比較でシャッターフィーリング(メカの動作感触)に静音化を含む上質感の向上が明らかだったところ、α7 IVのメカニカルな感触は、ほぼα7 IIIのままなのだ。ボディ骨格やサイズの違いから、わずかに包まれ感が増してはいるものの、根本は変わらずな雰囲気なのである。この点に関しては、α7 IIIオーナーとしては正直ホッとしていたりするのだが、客観的にはちょっぴり残念にも思える部分ではある。

進化が明らかなEVFに関しては、初期設定で「オート」になっているファインダーの明るさ設定(自動設定)が今ひとつしっくりこなかった。明るいところで何かの拍子にブワッと明るくなったり、暗いところでいきなりズドンと暗くなったりと、EVFで露出イメージを掴みつつ撮ることを拒否するような動作が目に付くのだ。というワケで、私はソッコーでマニュアル設定に変えちゃいました。

個人的な好みから、バリアングルモニターの採用には大賛成。でも、ボディ上面、シャッターボタン手前のカスタムボタン(α7 IIIの「C1」に相当するボタン)を「REC」にするのはやめてほしかったかな(ボタンに割り当ての機能を変更すれば実害はないに等しいが)。注力されているのは動画関連の機能向上で、写真撮影に関わる部分の進化は控えめ・・・。ちょっぴり増えた画素数を含め、正直そんな印象のα7 IVではある。「写真機としての“無印”は、こんなもんでいいんじゃね?」ってな、作り手の線引きが見えるような気がするのもちょっとね・・・(それはα7 IIIも一緒だけど)。

  • EVFを覗きながら露出補正をしようとした際に誤って左ダイヤルを回してしまうことが頻発したのは、私がα7 IIIとα7R IIIのユーザーだからだと思う。一世代前の両機は、ボディ上面右サイドに位置する後ろダイヤルと露出補正ダイヤルの設置高さが各々違うところ、α1、α9 II、α7R IV、α7S III、α7 IVの現世代モデルは、両ダイヤルの設置高さが一緒なのだ。指先での使い分けには、新たな慣れを要するのである(FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS使用、ISO10000、1/1600秒、F6.3、-0.7補正)

  • α7 IVでは、ボディ上面シャッターボタン手前のカスタムキー位置に「REC」が侵攻。この点に納得できなかった私は、所有するα7 IIIと同じ使い勝手を得るべく、α7 IIIでいうところの「C1」位置を占拠していたMOVIEボタンをフォーカスモードに設定変更した。もちろん同時に、背面に追いやられていたC1キーを「動画撮影」に“戻す”措置も執り行っている(FE 50mm F1.2 GM使用、ISO100、1/4000秒、F1.2)

  • 暗所AFはEV-4まで対応。これは、α7 III(EV-3)を超えα1と同等の実力だ。手ブレ補正の効きは、従来よりも少し良くなっているような気がしたのだけど、こちらは気のせいかも? ガッチガチに補正が効くタイプではない(FE 24-105mm F4 G OSS使用、ISO12800、1/25秒、F4.5、-0.3補正)

豊富すぎるラインナップを擁するαならではの悩ましい機種選び

いちα7 IIIオーナーとしては、ここでα7 IVに買い替えるより、まずはFE 50mm F1.2 GMを手に入れた方が写真生活がより充実するのではないかと感じたことはナイショにしておきたい。そこには、現状α7 IIIよりも使用頻度が高いα7Cに満足しているという当方に特有の背景も微妙に影響を与えているはずだし、α7R IIIを所有するという“逃げ”があってこその暴論であることも自覚しているからだ。でも、新品の実売価格比較では、そのα7R IIIとの価格差が案外、小さいところにムムッ!?となるαユーザーもいるはず。α7R IIIが持つAFの動体追従動作の絞り上限がF8であるという弱点も、考えようによっては限定的なものであるし・・・。

最終的には、何を捨てどこに「価値」を見いだすか、だろう。ラインアップが豊富であるぶん悩みもとことん大きくなる。そんなところも、フルサイズα軍団の魅力なのだ。αに関わる限り、もう諦めるしかない(笑)。

  • α7 IIIからの明確な進化を感じつつも、α7 IVの衝動買いには至らなかった落合カメラマン。α7Rシリーズ、α7Sシリーズ、α7Cなど、ほかにはない魅力的な特徴を持つシリーズが存在し、それらが登場から時間が経って価格がそれなりに下がっていることも、機種選びを大いに迷わせる要因だとした