世界的な人気を誇るPCゲーム『League of Legends』(リーグ・オブ・レジェンド、以下、LoL)。「MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)」と呼ばれるジャンルのゲームで、その奥深い戦略性や競技性の高さから、王道のeスポーツタイトルとして知られています。

国内でも、公式プロリーグの「League of Legends Japan League」(以下、LJL)が行われているほか、高校生大会や社会人リーグなど多くの大会で『LoL』が採用されています。そうしたeスポーツシーンの大会や、ストリーマーによる配信など、さまざまなきっかけで『LoL』のことを知った人も多いでしょう。

『LoL』の観戦を楽しむためには、まずはどんなことを知っておいたらいいのでしょうか。今回は、LJLのキャスターを務めるJaegerさんに、『LoL』を“観て”楽しむための基礎知識を聞きました。

5対5のチームで対戦する『LoL』、勝利条件は?

――本日はよろしくお願いします! まず最初に、『LoL』の基本ルールや勝利条件について教えてください。

Jaeger:『LoL』は、プレイヤーが5対5のチームで対戦するゲームです。勝利条件は、敵陣の本拠地にある「ネクサス」と呼ばれる建造物を破壊すること。これを達成するために、両チームのプレイヤーは、個性豊かなキャラクターを操作して戦います。プレイヤーが操作するキャラクターのことを、ゲーム内では「チャンピオン」と表現します。

  • 敵陣の本拠地にある「ネクサス」。2本のタワーに守られている

――『LoL』では試合が始まる前に、チャンピオンを選択する場面がありますよね。ここでは、どんなことが行われているのでしょうか?

Jaeger:「ドラフト」や「バンピック」と呼ばれるフェーズですね。自分たちが使用するチャンピオンを決める「ピック」と、相手に使用させないチャンピオンを決める「バン」を行います。バンのあとに、自分たちが使うチャンピオンのピックを交互に行っていきます。

  • チャンピオンのピックとバンを行う「ドラフト」。画面上部に小さく表示されているのがバンされたチャンピオンで、この試合で使えなくなったことを示す

――バンしたチャンピオンは、相手チームが使えないだけでなく、自分たちのチームも使えなくなるのでしょうか?

Jaeger:はい、使えなくなります。さらに、こうしたドラフトを行うモードでは、試合内に同じチャンピオンは2体以上存在できません。

なので、相手に使わせたくないチャンピオンがいたら、バンするほかに、自分たちが先にピックする、という駆け引きもあるんですよ。お互いにチャンピオンを選択するだけのフェーズですが、実はとても奥が深く、戦略的に重要な部分です。

試合序盤は、レベルを上げながら装備を整えていく

――試合はどのような流れで進むのでしょうか。

Jaeger:試合の開始時点では、全チャンピオンがレベル1からスタートします。そこから、レベルを上げたり装備をそろえたりして、どんどんチャンピオンを強化しながら戦っていくのが、このゲームの基本的な流れです。

チャンピオンは、両チームともそれぞれの本拠地から出発します。マップには3つの道があり、上から「トップレーン」、「ミッドレーン」、「ボットレーン」と呼びます。そして、例えばミッドレーンに向かう場合、そのプレイヤーのことを「ミッドレーナー」と表現します。

それぞれのレーンでは、両チームの本拠地から一定間隔で出現する兵隊「ミニオン」を倒して、レベルアップするための経験値や、装備を購入するためのゴールドを稼ぎます。この行為を「ファーム」と言います。

このファームが行われるフェーズのことを、「レーンフェーズ」と呼びます。このレーンフェーズを「試合の序盤」と表現することが多いですね。

  • HPバーの左横に表示される数字がチャンピオンのレベル。最大レベルは18

  • 3つの道があるマップ「サモナーズリフト」(『LoL』公式サイトより引用)

  • 序盤は、ミニオンを倒す「ファーム」で、経験値やゴールドを稼ぐ

――観戦において、試合序盤の見どころを教えてください。

Jaeger:試合序盤では、「ガンク」という大きなアクションが起こるタイミングがあります。そこが1つの見どころでしょう。

最初に、マップには3つのレーンがあると説明しましたが、レーンの間には「ジャングル」と呼ばれる場所が存在します。そのジャングルにいる中立モンスターを狩って、経験値やゴールドを稼ぐプレイヤーを「ジャングラー」と呼びます。

そして、比較的自由に動けるジャングラーが狙ったタイミングでレーンに介入し、人数有利を生み出して戦うのがガンク。これによって敵チームのチャンピオンを倒せば、試合をより有利に運べるので、序盤はガンクが成功するかどうかが注目ポイントです。

  • ジャングラーによる「ガンク」が決まるかに注目

試合中盤でカギとなるのは、“オブジェクト”の獲得

――中盤になると、試合にはどんな変化が起きるのでしょうか?

Jaeger:明確な区切りがあるわけではありませんが、試合時間では14分を過ぎたあたりですね。ある程度チャンピオンの装備が整ってきたり、各レーンに存在する「タワー」が破壊されたりすると、試合中盤に差し掛かってきたと言えます。

また、中盤になると、だんだんプレイヤーが持ち場を離れて、1対1ではなく、複数チャンピオン同士で戦う集団戦が起きます。ここで重要なのは、いかに人数有利を生み出して、「オブジェクト」を獲得できるかどうかです。

オブジェクトとは、先ほど挙げた「タワー」のような建造物や、「リフトヘラルド」、「ドラゴン」といった大型モンスターのこと。これらの獲得が、中盤の駆け引きにおいて重要なポイントになります。

  • 各レーンに存在する「タワー」。近づいてきた敵チームのミニオンやチャンピオンを攻撃する

  • 「ドラゴン」などのオブジェクトの周囲では、集団戦が起こりやすくなる

――リフトヘラルドやドラゴンを倒すとどんなメリットがあるのでしょうか?

Jaeger:リフトヘラルドはマップ上側に出現するモンスターで、通称「ヘラルド」と呼ばれています。リフトヘラルドを倒して召喚すると、味方になってタワーの破壊を手伝ってくれます。

リフトヘラルドの獲得は、序盤や中盤で有利を得るために重要な要素の1つ。なので、両チームがお互いに獲得を狙ったり、獲得を阻止したりするために、集団戦が起こりやすくなります。

ドラゴンはマップ下側に出現するモンスターで、倒すと自分たちのステータスを上昇させる強力な「バフ」を得られます。なので、こちらも同様に、獲得をめぐって両チームによる攻防が行われます。こうしたオブジェクトをめぐる攻防は、『LoL』で白熱するシーンですね。

また、オブジェクトは取れるに越したことはないのですが、それに伴うリスクが大きい場合は、諦める選択肢もあります。相手チームにオブジェクトを明け渡すことを、「ギブ」と言います。オブジェクトを取りに行くのか、安全にファームを優先するのか。そうした選択肢があることを知っておくと、より試合への理解が深まるかもしれません。

  • マップ上側に出現する「リフトヘラルド」。倒したあとに召喚すると、敵のタワーを攻撃してくれる

  • マップ下側に出現する「ドラゴン」。倒すとステータス上昇の効果を得られる

試合終盤は、勝負を決める“集団戦”が最大の見どころ

――試合終盤を迎えたタイミングでの見どころを教えてください。

Jaeger:両チームともにチャンピオンのレベルが上がって、十分な装備がそろってきたら、いよいよ試合終盤と言っていいでしょう。

試合時間で20分以降になると、リフトヘラルドがいた場所に「バロンナッシャ―」という大型モンスターが出現します。通称「バロン」と呼ばれますが、倒すと非常に強力なバフを得られるので、両チームが獲得を狙う重要なオブジェクトです。

そして、このゲームで勝利するための目的は1つ、ネクサスの破壊でしたね。それを狙う両チームによって、終盤になるほど集団戦が頻発するようになります。

倒されたチャンピオンは、復活するまで一定時間待たなければなりません。なので、集団戦でどちらが勝利するのか。ここが試合の勝敗につながる最大の注目ポイントです。

  • 20分以降に出現する「バロンナッシャー」。倒すと非常に強力なバフを得られる

――集団戦で敵チームを全滅させられたら、一気にネクサスを破壊するチャンスが生まれるということですね。

Jaeger:その通りです。このゲームは、途中までどれだけ劣勢でも、ネクサスさえ破壊すれば勝ち。なので、負けているように見えていても、終盤の集団戦から一気に逆転勝利することも十分にあり得るんですよ。

  • 終盤になるほど、集団戦の結果が試合の勝敗に直結しやすくなる

  • 敵チームの本拠地まで攻め込み、ネクサスを破壊すれば勝利

優勢か劣勢かを見分けるポイントや、逆転要素は?

――試合途中で、チームが優勢か劣勢かといった戦況は、どこに注目すればわかりますか?

Jaeger:実はプレイヤー自身も、状況の有利不利は明確にはわからないんです。感覚的にはなりますが、チャンピオンのレベルや装備のそろい具合、破壊されたタワーの本数などを見ると、両チームの状況を比較することができます。

また、敵陣の近くで戦っていれば押している、自陣の近くで戦っていれば押されている、と見ることもできますね。それから、大きな集団戦が起きたときに勝ったほうが有利になるので、それが最もわかりやすいポイントかもしれません。

――押されている側のチームが逆転する要素は、どんなものがありますか?

Jaeger:逆転のために狙う要素の1つは、人数有利ですね。2対1や3対2など、人数有利をつくって戦うことができれば、装備が不利な状況であっても覆すことが可能です。また、相手に気づかれないように、重要なオブジェクトの獲得を狙うこともありますね。

あとは、珍しいことではありますが、相手が想像していないようなプレイで逆転することもあります。例えば、集団戦で範囲攻撃を敵全員にヒットさせて、そこから一気に形勢逆転するとか。こういったプレイを「アウトプレイ」と呼ぶこともあります。

勝利までに無限の可能性がある『LoL』の魅力

――『LoL』を観戦するうえで、「ここがおもしろい!」というポイントを1つ挙げるとしたら、どんなところでしょうか?

Jaeger:やはり集団戦だと思います。見た目も派手ですし、直接的に試合の勝敗につながる部分なので。

――観戦に慣れていないと、集団戦で何が起きているのか目が追いつかなくて……。どんなところに注目したら、わかりやすくなるでしょうか?

Jaeger:「ADC(アタック・ダメージ・キャリー)」というロールを担うチャンピオンに注目するといいかもしれません。ADCはボットレーンにサポートとともに向かうロールで、その名の通り、アタックダメージで試合をキャリーする(勝利に導く)役割を担います。

集団戦は、お互いのADCがどれだけダメージを出せるかの勝負でもあるんです。なので、味方のADCが生き延びてダメージを出せたか、そして相手のADCを倒せたかどうか。これが集団戦のキーポイントなので、そこに注目してもらうと、よりわかりやすくなると思います。

――プレイヤー目線で、『LoL』にハマるポイントはどんなところにありますか?

Jaeger:『LoL』は、ネクサスを破壊する勝利条件にたどり着くまでに、無限の可能性があるんですよ。例えばドラフトの時点で、150体以上のチャンピオンから5体を選ぶ、その組み合わせだけでも膨大にあります。なおかつ、試合が始まってからプレイヤーがとる行動にも無限の可能性があります。何度プレイしても同じ試合は絶対にないので、そこが『LoL』のおもしろさだと思いますね。

僕が『LoL』を始めたころは、試合ごとに自分の成長を実感できることが楽しくて、どんどんハマっていきました。同じ理由で『LoL』をプレイされている方は多いと思います。

――それでは最後に、最近『LoL』に興味を持った方にメッセージがあればお願いします。

Jaeger:興味を持っていただいた方には、ぜひ『LoL』を実際にプレイしていただけると、より観戦が楽しくなると思うので、少しでもゲームに触れてもらえるとうれしいです。

――実際にプレイするのは、少しハードルが高いイメージもありますが、最初はどのように始めたらいいでしょうか?

Jaeger:継続してプレイしなくとも、1度触れてみるだけで観戦の見え方は大きく変わってくると思います。対人戦ではなく、コンピューターと対戦できるAI戦もありますし、モバイル版の『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』もあります。始めやすい方法で、ぜひプレイしていただければと思います。

――Jaegerさん、本日はありがとうございました!