KDDIは5月13日、2022年3月期の決算説明会を開催しました。増収増益の決算で、21期連続の増益を達成しています。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏はメディアの質問に回答する形で、楽天モバイルが0円プランを廃止したこと、料金プランの値下げ影響、povoを1年間やってみた感想、楽天モバイルがプラチナバンドを欲しがっている件、5Gの展開についてコメントしました。
増収増益の決算
2022年3月期の連結売上高は5兆4,467億円(前年同期比2.5%増)、連結営業利益は1兆606億円(同2.2%増)でした。高橋社長は「値下げの影響はあったものの、営業利益のCAGR(年平均成長率)も+1.5%の成長となりました」と報告しています。
続いてマルチブランド戦略について。グループID数は3,184万で「期初予想の3,180万を超え、順調に推移しました」。通信ARPUについては4,200円で期初の予想通りの着地、付加価値ARPUについては1,740円となり「通信ARPUの低下をカバーする形となりました」と評価しています。5G端末の累計販売台数は800万台超と順調に推移しています。
ライフデザイン領域においては、主要サービスが大きく成長しました。営業利益については2,540億円に到達、CAGRは+20%と右肩上がりに2ケタ成長しています。au PAY会員数は3,700万、うちau PAYカード会員様は760万に。このほか、auでんきなどの契約数は338万、決済・金融取扱高は11.7兆円となり、各サービスが順調に拡大しています。
ビジネスセグメントも、DXを推進するNEXTコア事業などを中心に好調を維持。営業利益は1,860億円、CAGRは+15.1%となっています。IoT累計回線数については2,450万回線に到達、高橋社長は「トップランナーとして、確固たる成長を示しました」とアピールしました。
3Gを停波したことにも言及しました。「いままで3Gサービスをご利用いただきまして、本当にありがとうございました。約10年間に渡りまして、多くのサービスをご利用いただきました。厳しい環境下において3Gを大きなトラブルなく終了できたことは、次につながる成果でした」と高橋社長。消費電力がかさむシステムを停波したことで、環境への取り組みとしても大きな成果だった、と説明します。
また、2025年3月期に向けた新たな中期経営戦略も発表しました。これにともない、1年目となる2023年3月期は連結売上高を5兆5,600億円(同2.1%増)、連結営業利益を1兆1,000億円(同3.7%増)と見込んでいます。
楽天の0円はpovoの0円と意味が違う
メディアの質問に、高橋社長が回答しました。
楽天モバイルが0円プランの廃止を発表したことについてコメントを求められると、「午前中の発表内容について、あんまりフォローアップできてないんです。他社の料金のことなので、ちょっとコメントもしづらいんですが、まぁ『やめるんだ』っていう感じですかね。我々は0円からスタートするpovoをやってますけど、povoの0円と楽天さんの0円は意味合いが違う気がしてます。すいません、ちょっとまだ勉強不足で申し訳ないです」と回答。
このあと、別の記者からも「povoは0円プランをやめないですよね」と念を押されましたが、「いまのところ、やめる理屈がよく分からないです。povoの場合は、0円から始まるとは言ってますが、その上のトッピングと合わせてお客様に価値を提供しているサービスなので。新規ユーザーもトッピング込みで増えてきているので、いまのところ大きく変更する予定はありません」と答えました。
来期以降の料金プラン値下げの影響について聞かれると、「2023年3月期において(下がっているARPUを)底打ちにしたい、というのが我々の思いです。その翌年度、つまり24年3期からARPU、およびマルチブランド通信ARPUもプラスの方向に持っていきたい」と回答。
NTTドコモ、ソフトバンクではARPUを上げるために苦労しているが、なぜKDDIはARPUを上げる自信があるのか、と聞かれると「他社の決算も見ました。我々は4Gから5Gに移行するお客様が結構いらっしゃるので、こういう方が機種変更のタイミングでauの上位プランをお選びいただける可能性が残っています。また他社とは違い、(ネット配信の動画サービスなどを取り扱う)OTTプレイヤーと強く連携しています。これは他社にない強み。海外の例でも、米国のベライゾンさんが同じような戦略で5GでARPUを上げています。それをロールモデルにすると、まだまだ伸びていけるんじゃないか、伸ばしていかないといけないんじゃないかと思っています」としました。
値下げの影響について、当初の予定より膨らんだのではないか、と指摘されると「おっしゃる通り、当初は600億程度かなぁと想定してたんですが、お客さんの移動もあり、結果的に872億になりました。ブランド間の移行についてお答えすると、料金プランの値下げが始まる前のシェアではauが全体の90%で、UQ+povoが10%でした。これが終わった期の最後にはauが80%、UQ+povoが20%になったイメージです」と説明しました。
povoを始めて1年、総括としては「やってて面白い、というのがpovo 2.0の印象ですね。いま、データドリブンにもトライしているところ。例えば、インフルエンサーの方をトリガーにして新規ユーザーを増やしたり、いろんな工夫をやっていますが、それに対してやっぱり手応えがある。従来のサービスでは、契約いただいたら、次にお客様と向き合う時期って2年後だったりしてました。povoの場合には、契約いただいてからも我々からどんどんアプローチして、トッピングを使ってもらえる。我々からすると、お客様の動向をずっと見ながら、いろんな取り組みができる。これができるのが、ものすごく面白い」。なお、povoの契約数は現時点で120万ほど。数については「伸ばしていきたい。アクティブなお客様をいかに増やしていけるかだと思っています」とコメントしました。
1年の総括として、高橋社長は「本当にいろんな環境変化がありました。年度のはじめにはモメンタム(勢い)が落ちて大変だなと思っていたんですが、UQ mobileを中心に昨年(2021年)6月ごろから持ち直してきて、夏には純増に展開、最終的にはモメンタムも非常に上がりました。第4四半期は予定よりかなり上振れています。一方で、やっぱり値下げの影響がここまであった。ただ、今年度で言えば、楽天ローミングの話もあったので、その影響もうまく打ち返せたかなと思っています」。なお、楽天モバイルでは順次、自社回線に切り替えている最中。今期、楽天からのローミング収入は(終わった期と比べて)500億円ほど減る見込みです。
昨年度で最も評価している点については、「他社に比べて3Gの巻き取りが早くきれいに終わったこと。大きなトラブルもなく終わりました。これからは他社の3Gユーザーに、ぜひ我々のところに来てほしい。そんなフェーズに入れます。そこのコストが終わったので、これが多分、イチバン良かったと思います」。3Gの停波コストは(終わった期で)800億円ほど使ったものの、その負担が今期はなくなる、と笑顔を見せました。
楽天モバイルがドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社からプラチナバンドを5MHzずつ融通してほしいと主張している件については、「正確に言うと、利用していない周波数を有効利用するための再割当てという制度です。その一環として楽天さんの話が出ているんですが、制度としては我々も賛同しています。ただ現在、有効利用している周波数を再割当てすることには、慎重な議論が必要かと思います。ここについて、我々はいろいろと意見を申し上げています」。ユーザーの通信品質に影響しないようフィルターを入れる必要があり、そのための工事が必要ということで、「昔800MHzで再編をやってますけど、結構大変なんですよ。我々からすると、いま政府から言われているように5Gに集中したい。そこだけでアップアップなのに、周波数を再編する工事をやろうと思ったら、とんでもないコストと期間がかかってしまう。5Gの展開にも遅れが出かねないと思います。5Gの投資に集中させてください、というのが我々の本音です」と回答。
5Gのエリア拡大が予定よりも遅いのでは、という指摘には「おっしゃる通りです。すみません。本日、人口カバー率90%を達成しましたと言いたかったんですが、ちょっと工事で苦しんでおりまして、今期早いうちに90%を超えたいとしかコメントできません。ただ、生活導線にこだわってエリア構築を進めておりまして、私鉄を含む関東の21路線、関西の5路線の5Gエリア化はできており、好評をいただいております」。
先日、5Gの2.3GHz帯の申請がKDDIのみだった件についてコメントを求められると「ウチしか手を挙げなかったので、正直に言ってウチもびっくりしたんです。周波数が欲しいと思ってらっしゃる方が、きっと手を挙げられると思っていたので。2.3GHz帯はグローバルでも広く利用されている、貴重なエコバンドなんです。これについては、すでに対応済みの機種も多い。この周波数、ぜひとも使いたいと思って手を挙げました。放送事業者のFPU(無線中継伝送装置)でお使いになっているところがあるので、こことの『ダイナミック周波数共用』に対応しないといけないんですが、ウチの技術陣に確認すると何とか対応ができそうだという話でした。我々としては、せっかくのエコバンド。「必ず使えるようにしろ」と、いま技術陣にプレッシャーをかけているところです。必ず有効に使わせていただきます」と話しました。