カシオ計算機は5月12日、2022年3月期通期の決算発表と2023年3月期の見通しについてライブ配信した。少しずつ需要の回復を見せる国内経済とは裏腹に、中国のゼロコロナ政策による大都市ロックダウンやウクライナ問題、異例の円安といった国際情勢の影響を多くの企業が受けたこの四半期。カシオも例外ではなかったが、通期で見渡せば比較的堅調に推移した印象だ。
早めの構造改革が第4四半期の衝撃を吸収
カシオの2022年3月期第4四半期実績は、売上高581億円、営業利益は20億円。利益率は3.4%となり、いずれも前年同期を割り込んだ。しかしその一方、通期累計では売上高2,523億円、営業利益は220億円、経常利益222億円、当期純利益は159億円となり。対前年比10パーセントの増益となった。
この理由を、カシオ計算機 執行役員 IR担当の田村誠治氏は以下のように説明する。
「第4四半期は、中国のゼロコロナ政策に伴う(中国の)生産拠点および出荷拠点のロックダウンをはじめ、ウクライナ情勢等の影響により、生産・物流面での制約や、需要・販売も想定以上に減退しました。が、第3四半期までは、売上回復によって社内構造改革の効果が現れ、時計・教育・楽器のコア事業を中心に想定範囲内の売上・利益水準にて堅調に推移していたことが影響しています」(田村氏)
つまり、早めに手を講じたことで、第3四半期の衝撃を吸収できたということだ。田村氏のいう「構造改革」については、これまでの「デジタルマーケティングの本格稼働」「全社EC強化」「全社DX推進」などに加え、「強い事業の成長拡大と新ジャンル立ち上げの加速」「カシオの強みを生かした選択と集中の加速」などがある。
たとえば時計事業では、G-SHOCKブランドの強化を考えるとわかりやすい。カスタムG-SHOCK販売サイト「MY G-SHOCK」や時計以外へのG-SHOCKブランド展開を図った「G-SHOCK PRODUCTS」などもこれにあたるだろう。これらの構造改革効果をカシオは「年間で約40億円」と見込んでいる。
時計事業の現状
時計事業も第4四半期、中国における生産・出荷拠点のロックダウンによる影響をモロに受けた。さらに、ウクライナ情勢に伴う欧州市場の冷え込みも大きく影響。売上高、営業利益率ともに第4四半期は第3四半期を割り込み、通期での売上高は1,523億円(カシオ全体の売り上げの約60%を占める金額)となった。
G-SHOCKは中国ゼロコロナ政策による影響を受けたものの、北米や欧州では堅調。通期は回復傾向にあるという。また、八角形ケースの「GA-2100」、同シリーズのメタルベゼルモデル「GM-2100」が欧米を中心に人気を継続。
「GAE-2100RC」(ルービックキューブコラボ)などコラボレーションモデルは若者を中心に人気で、新規ユーザー拡大に貢献した。さらに、MIDサイズの「GMA-S120MF」「GMA-S2100」が北米を中心にヒット、G-SHOCKの女性ユーザー拡大に成功した。
国内ではG-SHOCK初号機の角型デザインを採用した最上位シリーズMR-Gの新モデル「MRG-B5000」が好調。加えて、G-SHOCK以外のブランドも前年の大幅減から回復傾向にあるという。
2023年3月期業績見通し
カシオは2023年3月期の業績見通しについて、通期計画で売上高2,700億円(2022年実績比107%)、営業利益270億円(2022年実績比123%)を見込む。これについて田村氏は以下のように述べた。
「厳しい外部環境の継続が想定されるも、コロナからの市況回復と全社構造改革効果により増収増益を計画しています」(田村氏)
とはいえ、依然カシオ社内での企業努力にも限界はある。電子部品や機構部品などの原材料、あるいは物流費の高騰について田村氏は、経費の効率化、部材調達先の多様化、設計変更による代替品対応のほか売価の適正化で対応するとも述べた。